9曲目 歌
やっと一通り自己紹介と質問攻めも終わり、最後に私達の旅の目的を聞かれた。
「私達は歌を届けに来ました」
「「「「「歌?」」」」」
「そうよ、あたし達の歌」
「みんなに聞いてほしいの」
「…サイコーの歌」
「僕達の歌聴きたい?」
「あのぉ、歌って何ですか?」
「歌はみんなを幸せにする魔法です」
私達はお互い顔を見て頷き、そして1曲歌う事にした。
シオン起きて!出番よ。
「それでは私達アルテミスの歌、聴いて下さい。行くよぉ~みんなぁ~」
「「「「おーーーーーっ!」」」」
いつものポジションでいつものポーズ、いつものセリフでみんなを煽る。
するとシオンが音と光で私達を輝かせる。
音楽と同時に私達の衣装が変わる。
月灯りしかない暗闇がカラフルに光輝くと私達に光が当たる。
まるでスポットライトに照らされている様に私達を演出してくれる。
気持ちいい。
みんなが今日一番の笑顔になる。
やっぱり私達は歌う事が好きなんだ。
これが私達の原点だ。
私達はサイコーの歌とパフォーマンスをみんなに届けた。
★ ★ ★
私は驚いた。
商人として、色々と町を見てきた。
そして私は一代で店を大きくして他の町にも数店舗建てた。
自信があった。
どんな物に対しても目利きに自信があったが、それも今日までだ。
彼女達は歌が仕事と言っていた。
そう、商売と言う事ならば私にも理解出来ると思っていた。
何も考えられなくなった。
それは私だけでなく、周りの人達も一緒だった。
聴いた事もない音、その音に合わせて発する言葉、見た事もない踊り、そしてそれらを彩る光。
私は、いや私達は見とれていた。
まさに幻想的だった。
気付くと彼女達は礼をしていた。
終わった?私だけでなく、みんなが呆然としている。
何が起こったのだ?未だに分からない。
★ ★ ★
歌い終わると衣装も元の服装に戻った。
「どうでした?」
あれ?無反応だ。
いきなりこの世界で歌の理解は難しいのかな?
「おーい!ベンさん、フィンさん、歌はどうですか?」
「お、おお。す、凄い凄い!驚いたよ。初めて経験した」
「すげぇー!本当にすげぇーよ」
「私、ちょっと感動しちゃったわ」
「私も」
「お姉ちゃん達、とっても綺麗だったよ。ねっ、お母さん」
「とても良かったわ」
「ア、アカネさん!質問しても宜しいのでしょうか!」
いきなりマッテオさんが走って私の所にきた。
「な、何でしょうか?」
「あなた達は歌が仕事とも言いました。それはどういう意味ですか?」
「そうですねぇ~。まずは沢山の人に私達を知ってもらう所から始めました。そして歌を聴いて貰い、少しずつファンが出来ました」
「ファンって何ですか?」
「ファンとは…そう!私達を応援してくれる人です。そしてライブを開いて利益を得て活動資金にします」
「ライブとは?」
「大きな場所を借りて、沢山の人を集めて歌を聴いてもらう、ですかね。だから費用がかかるので公演を見るのに幾らかお金を頂き、次の資金にします。その時にグッズ等も売ったりしますね」
「グッズとは何ですか?」
「キノ、モモカ、ちょっと私達のグッズ売っているか調べてくれる」
「はぁ~い」
「ほいほーい」
そして何点か購入して見せた。
「例えばこのタオルは私達のロゴ…グループ名が入ってます。ここでしか買えない物等を用意して見に来てくれた人達に買って貰ってマッテオで言う商売をします。そんな感じですかね」
「なるほど、勉強になります。私の知らない事をあなた達は沢山知っている様ですね。是非、色々と教えて下さい」
「マッテオさんはどうでした?私達の歌」
「素晴らしかったです。それにあの音は何ですか?」
「あれは私達の所では、音を楽しむと書いて音楽といいます。私達はその音楽に合わせて歌詞、言葉を乗せ、踊ります」
「本当に素晴らしい、歌、音楽、初めて聴きましたが感動しました」
「俺達もファンになったぜ」
「何早速覚えたての言葉を使っているのフィン」
「そうよ。私もあなた達アルテミスのファンになったわ」
「お姉ちゃん、私もファンだよ」
また賑やかになった。
初めての異世界初日、初めてあった人達みんながファンになってくれた。
夜も更け、ベンさんとフィンさんが交互に見張りをしてくれて、私達はようやく就寝した。
本当はキノが結界を張ってくれたから平気なんですけどね!あまり余計な事を言うと、また質問されそうなので私達は黙っておいた。
ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。