8曲目 お礼
森の中を進み、目の前には馬車が見えてきた。
幸いな事に馬も無傷で問題なさそうだ。
「マッテオさん、荷台の確認をお願いします」
「分かりました」
私達は壊れている所を確認して、折れた剣と槍も回収した。
荷台を確認したマッテオさんが荷台から降りてきた。
「どうでした?」
「はい、全て無事でした。しかし持っていけるのは私達の荷物と仕入れた塩ぐらいですかね」
しょんぼりした顔で下を向き、ため息を吐いている。
「大丈夫です!ワカバ、お願い」
「…任された」
すると壊れた荷台や車輪、車軸全てが直っていく。
「な、なんですかぁ~これはぁ~~~!!」
見た事も聞いた事もない魔法を見て、マッテオは思わず腰を抜かした。
「だ、大丈夫ですか!」
「す、すいません。いきなり壊れた荷台が直ったのでビックリしてしまいました。しかし、お陰様で荷物も全部運べます。なんとお礼をすれば良いやら」
「気にしないで下さい。とりあえずテントの所に戻りましょう」
「はい」
マッテオさんは馬を引き、ワカバは荷台に座る。
私はちょっとマッテオさんが心配なので隣を一緒に歩きながらみんなの所に戻った。
ようやく遠目でみんなの姿が見えると手を振って呼ぶアオイが目に映る。
「ただいまぁ~~~」
風に乗っていい臭いがする。
ああ~、バーベキュー再開してるよ。
そういえば何か少しお腹が空いた様な気がするわね。
「マッテオさん、良かったら一緒に食べませんか?」
「宜しいのでしょうか」
「もちろんです。ねっ、ワカバ」
「…私も腹が減った」
「さっ、早く戻って食べましょう」
私達はみんなと合流するとモモカに頼んでお肉追加して更に締めの焼そばを作ってもらった。
残りの銀貨全部使ってしまったがこれはこれで良かったと思う。
ついでにリリちゃんにオレンジジュースを買って渡したが、それがみんなに大好評ですぐに無くなった。
ペットボトルの容器にも驚いていたが変な事を言うと大変なので、何とか誤魔化した。
「皆さぁ~ん、モモカ特製焼そばが出来ましたぁ~!みんな冷めないうちに食べてね」
「モモっち、待ってました!」
この焼そばも大好評!どうやら元の世界のご飯はこっちの世界でもいけるみたい。
「アカネちゃん、そういえばシオンちゃんは?」
「何かねぇ~、私達以外にはシオンが見えないみたいなの。だから閉じ隠っちゃった!」
「えっ、どうやって?」
「私のアイコンにシオンの部屋が出来て、そこで寛いでるみたいなの。だから何かあったら呼んでだって」
「そうなんだぁ」
「所でモモカ、あんなにあったゴミはどうしたの?」
「アイテムボックスの横にゴミ箱の印があったから、タッチしたら捨てられたわよぉ」
「なるほどね。便利ね」
「女神様も気が利くね」
「そうね」
食事も終え、片付け終わると改めてみんなにお礼をされるが、その後に質問攻めにあった。
もちろん、名前を聞かれた後は、何処の有名な冒険者か?もちろん冒険者じゃないと言ったら、驚かれてたし、キノは魔法についても聞かれていた。
どうやら無詠唱魔法は極一部の人しか使えない高等技術らしい。
そしてマッテオさんからは食事、材料もそうだけどバーベキューセットや炭、もちろんテントや寝袋も色々と聞かれた。
特に大人気の焼肉のタレはどこで手に入れたのかとか、それはもう大変だった。
「所でアカネさん達はどこに行くのですか?方角からいったら私達と同じ王都でしょうか?」
「特に決まってません。実は旅をしてまして、この辺の地理も何もわからずに困っていた所だったのです。そろそろ金銭も残り僅かになったので仕事も探さないといけないですし」
「ちょっと待って下さい」
マッテオは馬車の方へ向かった。
「だったらよぉ~、俺達と王都に向かおうぜ」
「そうよ!そうしましょ。あなた達、冒険者になりなさいよ」
「そうだぜ!そんだけ強かったらすぐにSランク冒険者になれるぜ」
「急がないのなら、しばらく王都に住みなさいよ」
ユニコーンのみんなが私達を誘ってくれる。
行く宛の無い私達は嬉しかった。
するとマッテオさんが戻ってきた。
「それはいい案ですね。私も名の知れた商人です。分からない事は色々と聞いて下さい。少しは手助けが出来ると思いますよ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
するとマッテオは私に小さな布袋をくれた。
中を覗いてみると金貨が入っている。
「お、お金何て貰えませんよ!しかもこんなに」
「これは気持ちです。本当はもっと渡したいのですが、仕入れで使ってしまったのでこれしかありませんが使って下さい」
聞いたら金貨10枚入っていた。
私達は何度か断ったが、結局断りきれずに受け取った。
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