6曲目 人命救助
楽しいバーベキューは進み、シオンもとても喜んでいる。
どんどん夜も更けてきたが月明かりで辺りは明るくなる。
「ねぇ、こっちの世界にも月があるわよ!」
アオイの一言でみんなが空を見上げる。
「ホントだぁ~」
「こっちの月も綺麗ね」
「私達アルテミスを歓迎してくれているみたいね」
「…いい感じ」
「どうシオン、お肉美味しい?」
「さ、サイコーよ!ちょっとぉ~それ、私のお肉だからね!」
「…食いしん坊」
「キノちゃんみたい」
「どういう意味よぉ、モモっち」
「そのままよ」
みんなの笑い声が辺りに響き、楽しいバーベキューもそろそろ終わりそうになる時、森の奥の方から声が聞こえた。
「ねぇ、何か聞こえなかった?」
「聞こえた様な、聞こえなかった様な…」
みんなで耳を澄ますと今度はハッキリと聞こえた。
常人では聞き取れない声だったが、きっと女神様の恩恵だろう、私達には助けを呼ぶ声がしっかりと聞こえる。
「行くわよ!アオイ、キノ、ついてきて!」
「はい!」
「ほいほーい」
「アカネちゃん、私達はぁ?」
「ここを見張っていて」
「オッケー」
「…了解」
そして私達3人は声の方へ走っていった。
★ ★ ★
「キャーーーッ!」
ここは俺達が食い止めます。
積み荷は諦めて早く走って逃げて下さい。
「し、しかし」
「いいから早く!」
「わ、分かりました」
俺達は運が悪かった。
簡単な護衛依頼を受け報酬も良かった。
普段は大した獣も出ない森で、比較的安全な道の筈だったのに、まさか魔獣が出るとは…しかもAランクの魔獣ジャイアントベアだ。
普通のジャイアントベアでも3メートル弱の大きさだが、このジャイアントベアは5メートルはあった。
俺達も名のあるBランクの冒険者だ。
俺達はユニコーンと言う4人のチームでリーダーの俺ベンは前衛で剣士、もう一人の前衛のフィンは槍使いだ。
他には女性で弓使いのクララと魔法使いのミアだ。
この男2人と女2人の4人で今までどんな困難も乗り切ってきたが、遂に終わりを迎えそうだ。
フィンの槍は折れ、クララは負傷して戦える状態では無い。
オマケにミアの魔力も尽きた。
まさに絶対絶命!
俺は剣を構え、ジャイアントベアと目を合わせると撤退の命令をした。
「フィン!お前はクララ連れて行け!」
「し、しかし…」
「いいから行け!」
フィンは歯を食い縛り、そしてクララを連れてその場を離れた。
「ミア!依頼人を最後まで無事に王都まで送り届けてくれ」
「………わかったわ」
「後は頼んだ」
俺は最後の力を振り絞った。
少しでも時間を稼ぐ!仲間を、そして依頼人を無事に逃がす。
どれくらい時間を稼いだか分からないが、遂に年貢の納め時になった。
俺の剣も折れて、防御する事も出来ない。
走って逃げても逃げ切れない。
それでも俺は逃げる選択肢を捨てて、ジャイアントベアと向き合った。
★ ★ ★
遠くの方で男の人が巨大熊と戦っている。
「見えた!アオイ、お願い!」
「任せて!」
アオイは更に加速する。
「そこの人!退いて下さい」
アオイはジャイアントベアに飛び蹴りをした。
するとあの5メートルぐらいの大きさがあるジャイアントベアは10メートル先の木まで吹き飛んだ。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう」
「アオイ、この人をお願い」
「はい!」
「あとは任せて」
私は一歩前に出ると構えた。
すると起き上がってきたジャイアントベアは怒り狂い、私に向かって突進してきた。
私は自然と抜刀して胴を凪ぎ払った。
「キノ!後はよろしく」
「ほいほーい」
今度はキノは両手を広げると大きな炎の球体が現れる。そして真っ二つになったジャイアントベアに向かい飛ばすと、ジャイアントベアをいともあっさり燃やし尽くした。
「はい、終わりぃ」
ふう、何か自然と刀が振ることが出来たわね。
ちょっ〜と怖かったけど、これも女神様の力かしら?
とりあえずあの人に声をかけなきゃ!
「もう平気ですよ」
ベンは口を開けたまま呆然としている。
彼からしてみたらあり得ないからだ。
ジャイアントベアを吹き飛ばす飛び蹴り、全く見えなかった剣技、無詠唱の魔法と威力、ベンにとっては未知の出来事であった。
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