5曲目 バーベキュー
私達はゆっくりと森の中を道沿いに歩いていく。
森に入ってから約2時間、少し薄暗くなり、獣の鳴き声も聞こえてきた。
「アカネちゃ~ん、アオイちゃ~ん、ちょっと気味が悪いんですけど…まだ森は抜けないのぉ~」
「モモカ~、ちょっぉと待っててね」
モモカに声をかけたアオイは1人で走って確認しにいった。
私達はゆっくりと歩きながらひたすら前に進み、途中でペットボトルの水を飲みながら他愛のない会話をする。
15分位すると前からアオイが走って戻ってきた。
「アカネさ~ん」
「アオイ、どうだった?」
「大体10キロ程行くと森を抜けますよ」
「そう、まだ10キロもあるんだぁ~………えっ!10キロの往復を15分で戻ってきたの!!」
計算上は時速80キロでアオイは走った事になる。
私達の身体能力って………恐ろしいわ。
って事は私達も走れば10分かからずに森を抜けるって事?
私はみんなの顔を見た。
辺りはどんどん暗くなっていく。
「みんなぁ~!走れば10分位で抜けるみたいよ。どう?走って早めに野宿の準備をしましょう!」
「ほいほーい」
「えーーーっ」
「………」
ジョギング程度の走りで30分位かけて森を抜けた。
時速でいうと20キロ、とても信じられない身体能力で、軽く流す程度の走りが自転車に乗っているかの様なスピードで駆け抜けた。
森を抜けると辺りはまた草原が広がっていて見渡したもいい。
私達はここでテントを張る事にした。
いつ町に着くかも分からない状況でお金をケチって寝床を用意しないわけにはいかない。
私はキノとモモカに頼んでテントと寝袋を探してもらった。
「どうモモカ?安くて良さそうなのあった?」
「うーん、これはどうかしら?」
ワンタッチテント3~4人用で銀貨8枚、とりあえずはそれを2つ買う事にした。
私は買ったテント2つをモモカにアイテムボックスから取り出してもらい、手の空いているアオイとワカバにテントを張ってもらった。
あとは寝袋よね。
そういえば夕飯も考えなくっちゃ!お昼はパンだからご飯食べたいなぁ~、みんなの意見も聞かなくっちゃね。
「アカネちゃん、これどぅお?」
「どれどれ」
安い物で銀貨2枚、しかし風邪をひいても困るので少し高めの銀貨4枚、しかもカラーも豊富で赤、青、黄、緑、ピンクとみんなのカラーを買った。
値段は5つで小金貨2枚、とりあえず寝る用意は出来た。
「キノー!テントと寝袋買ったからもう探さなくていいよ~」
するとやけに大人しいと思っていたシオンと一緒に何やら色々とカートに入れていた。
私とモモカはそっと後ろから覗き込んだらカートの中には、バーベキューセット、米、肉、野菜、水、お菓子と沢山入っていた。
「キノ!シオン!」
「「あっ!」」
この二人を一緒にすると危ないと学んだ私はお説教をしようと思ったが、初めての異世界でみんな不安になっているので初日ぐらいはと考えて賛同する事にした。
そうよね。
これぐらい良いわよね。
これでみんなが笑顔になれるなら、今日は楽しみましょう。
そうだ!テーブルとイス、それにお箸とお皿とコップも買わないとね。
追加して購入すると、小金貨1枚と銀貨7枚かかった。
金額を見る小金貨6枚と銀貨4枚と銅貨5枚だった。
カートの中身を全て購入して、残金は金貨8枚、小金貨9枚、銀貨8枚で、初日に既に2枚目の金貨を使ってしまった。
私はアオイに怒られるかもしれないけど、ご飯が食べられるのが嬉しかった。
隣ではキノ、モモカ、シオンがはしゃいでいる。
「アオイ~!ワカバ~!そっちはどう?」
「こっちは終わりました」
「…完成」
「お疲れ様、じゃあ夕飯にしましょう。キノ、出して」
「ほいほーい」
キノはさっき買ったバーベキューセットや食材を取り出すと、アオイとワカバもテンションを上げた。
昔から何かある時は必ず私達はバーベキューをするのが日課だった。
だからバーベキューをするというのはみんなが嬉しくて楽しいイベントの1つだった。
シオンだけは初めてのバーベキューで、何をするのかが楽しみみたいだった。
指示も何もいらない。
肉や野菜はいつもモモカが切り、下味を付ける。
キノは買ったテーブルとイスを出すとテーブルの上にお箸とお皿を用意して、飲み物とコップも並べる。
私とワカバはお米を研いで飯盒でご飯を炊き、火を起こし炭火を用意する。
全ての準備が整い、後はご飯が炊けるのを待ち、お肉や野菜を焼くだけ!そして私達は先に乾杯をした。
「お疲れ様~!初めての異世界、不安は沢山あるけど、みんなで楽しく、そしてこの世界に私達の歌を届けましょう!」
「「「「おーーーーーっ!!」」」」
「お、お~~ぅ」
「かんぱ~い!」
「「「「かんぱ~い!」」」」
「か、か、んぱぃ」
シオンもみんなの真似をして一緒にかけ声と乾杯をした。
そしてご飯も炊け、お肉や野菜を焼き始め、異世界での初めてのバーベキューが始まった。
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