38曲目 試食
ディステル家では試食会が始まっていた。
アベルさえも見たことない料理が並んでいく。
「アベルよ」
「何ですか父上」
「フォークとナイフが無いのだか」
「お箸を使うんです」
「お箸?」
「目の前にある二つの棒です」
私は息子からお箸の使い方を教えてもらった。
まさかこの歳で教わる物があるとは、しかも息子から教わるとは思いもしなかった。
「おー、なるほど…難しいな」
「父上、母上、まずはこのティー、こちらは緑茶と言います。飲んで見て下さい」
「変わった色だな。砂糖などは入れんのか?」
「はい」
「あなた、これ美味しいわ」
「どれどれ」
「ほう、なるほど」
初めて飲む味だが、とても爽やかで美味い、これは確かに期待出来るな。
「お通しとビール持ってきましたぁ」
「ほう、これが噂のビールとやらか」
そして目の前には小さな器に入った食べ物がある。
「モモカさん…でいいかな」
「はぁ~い」
「これは何かな?」
「お通しで里芋の煮物ですぅ」
「お通し………美味い!」
「さ!どうぞ」
私はビールと言うものを注がれて飲んでみた。
なんだ!これは…
喉で弾ける!!
止まらん!止まらんぞぉーーー!
こんなに冷えていて、こんなに美味い酒は初めてだ。
そしてこのお通しと言うもの…初めての食感で美味い!
そしてビールによく合う。
「想像以上だ」
隣では妻のフリーダも旨そうに食べている。
そして2杯目のビールを注いでもらった。
「美味い!」
「はい、次はお刺身をどうぞ」
「お刺身?」
「新鮮な生魚をこの山葵醤油で食べて下さいね」
「おいアベルよ。魚を生で食べて平気なのか?」
「父上、実は私も初めてでして…」
私はモモカさんの顔をチラリと見ると笑顔を向けられた。
断るのは彼女に失礼だ。
恐る恐る、私はお刺身と言うものを口に運ぶと、つーんとした辛味と一緒に魚が口の中で溶けていく。
「なんなんだこれは!」
美味い!
本当に魚なのか?
「はい、次は天ぷらですよぉ」
私はすぐに天ぷらと言うものを口に運ぶ。
もう疑う余地は無い!
彼女の作るもの全てが今まで食べたどの料理よりも遥かに美味い。
サクッ
何という食感だ。
この天つゆもいいが、塩で食べるのもイケる。
ビールも止まらない。
この後、多数の料理が出てきた。
こんなに食で幸せを感じた事は今まで無い!
「どうですか?来週はどの料理を出しましょうか?」
「全部だ!」
「えっ?」
「全部出していい!」
「でも全部食べられます?結構な量ですよ」
「こんなに美味いものを残す物でなどいない!」
「お金も結構かかりますよ」
「構わん。是非モモカさんに作って頂きたい」
「わかりました。最後にキノちゃんが何種類かデザートを持ってくるので選んで下さいね」
私は正直甘いものが苦手だが、食べて確認せねばならんし、フリーダとアベルに任せてもよいが…」
「お待たせ~。アイスからはボクがおすすめのシャンパンのシャーベット、それとケーキからは少しほろ苦いティラミス、後はお決まりのプリンだけど…お酒飲む男の人には単純にチョコとかもありかもね」
隣では感激して食べるフリーダと慣れた感じで食べるアベルがいる。
どれ、一口食べて見るか…
食べれる!甘いものは苦手だが、これは!
「美味い!」
私はケーキを口に運ぶと止まらなくなる。
隣ではとてもいい香りのする真っ黒な飲み物を飲むアベルと薄い茶色の飲み物を飲むフリーダがいる。
アベルに聞くと甘いデザートにブラックコーヒーが美味しいというので飲んでみた。
「美味い!」
この香り、そして少し苦味のあるコーヒーと言うものがデザートを引き立てる。
デザートをこんなに美味しいと思ったことは今まで無い。
「幸せだ。これは来週が楽しみだ」
そして私は全てを彼女達に任せた。
もちろん、妻のフリーダも反対する事は無く、自信を持って紹介したアベルの気持ちがわかった。
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