36曲目 アベルの頼み事
私達はキノを残して帰宅した後、やる事もなく部屋で夕食まで時間を潰していた。
今日はホントに何もやる事が無い!
どうしよう…
キノが戻ってきたら今後の事を話し合うのもいいかも…
こんな短期間でこれだけお金が入るとどうしていいか誰でも迷う。
夕食前になりキノが帰ってきたと思ったらアベルさんが訪ねてきた。
「アカネさん、今皆さん家にいますか?」
「キノ以外はいますが…どうしたんですか?」
「実は…」
どうやら昨日の肉フェスの話が貴族の所にも話が広まったらしく、アベルさんは親に呼ばれ、家に一度戻ったらしい。
すると前々から話があった社交パーティーが来週に決まったので用意を進めてほしいという事と、昨日のビールの評判を聞き、是非出したいから何とかならないかという話だった。
私達4人は食堂の和室でアベルさんの話を聞いているとようやくキノが帰ってきた。
「あ、キノさん!帰ってくるのを待っていましたよ」
キノが帰ってきてようやく本格的な打ち合わせが始まった。
本来の貴族の社交パーティーはどのような形でやるのかを聞きながら他ではない事をチャレンジしたいというアベル、どうやら貴族の次男で今まで自由に生き迷惑をかけてきたので少しでも親孝行したい、だからこのパーティーを成功させたいらしい。
「やっぱしぃ、立食パーティーかしら~」
「ボクが思うに食べ放題みたいだね」
「ここはアカネさんとモモカさんもキノさんに任せるよ。私達はこういうの考えるのが苦手だからね」
「…同感」
「私もよ。やっぱりまずは料理をどうするかモモカとキノに決めてもらわないとね」
「わかったわ。アベルさんはどんな料理がいいの?」
実はアベルさんは和食に興味があるみたいだが、いきなりお箸を使えないのでレクチャーをしてほしいと言われた。
和食を流行らすのか、お箸を使う事を流行らすのか、その辺はよく分からないが他にも前々から気になっていた化粧、もしかしたら貴婦人達も興味を持つのではないかとアベルは考えている。
「…温泉旅館の宴会場」
ボソッて言ったワカバの言葉にアベル以外のみんなが反応した。
「和ですね」
「和のパーティーだね」
「絶対この世界に無いわね」
「温泉宿作っちゃう?」
「…任された!」
という事でアベルに細かく説明した。
もちろんビックリしていた。
パーティーに来た人にいきなりお風呂とはありえないからだ。
まあ、普通はそうよねぇ。
どうなるかわからないけど…
ちょっと面白そう!
「ところでパーティーの場所は決まってますか?」
「一応実家の別邸になりますけど」
「何人位来るのかしら」
「今回は小規模で20人程です」
「実家を少し改装してもいいかしら」
「ちょっと聞いてみないとわからないですね」
「だったら明日朝イチで行きましょう!」
いきなり決まったアベルは動揺しながらもアカネ達の指示に従った。
「わかりました。明日朝にマッテオさんと家に迎えに行きます」
そしてアベルはお礼を言って帰っていった。
「温泉宿作れるかしら?」
「でも浴衣はうけると思うよ」
「そうですね。テレビで外国人観光客も気に入ってますしね」
「やっぱ刺身と天ぷらかなぁ」
「この世界の人に生魚って平気かしら?」
「…茶碗蒸しは外せない」
私達は楽しくなってきて会話が止まらない。
かれこれ小一時間喋ると小腹も空いてきて、一旦夕食を取ることにした。
夕食も話につられて和食になり、ご飯とお味噌汁とかお新香はとか、食事中もパーティーの話になっていた。
食事も終わり、片付けを済ませると今度は浴衣はどういうのがいいかとか、気がつくともう夜11時を回り、さすがに寝る事になった。
朝になり、私達は軽い朝食を取っているとアベルさんがマッテオさんを連れてやってきた。
「「おはようございます」」
「「「おはようございます」」」
「……おはよう」
「(モグモグ)おはっ」
「お二人は朝食は済ませてきたんですか?」
「実はまだでして…」
最近は私達のご飯を目当てに食べてこない事が多い。
余程気に入っているのだろう。
「パンでよかったら食べていって下さい」
「「ありがとうございます」」
そして昨日話した事を伝えるとアベルさんは緊張と心配、マッテオは興味津々で楽しんでいた。
まあ、マッテオさんにとっては他人事だから成功するか失敗するかの見極めも出来るからだろう。
そういう私達も成功する事よりも楽しんでいた。
ごめんねアベルさん
そして私達はアベルさんの実家に向かった。
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