34曲目 モーリッツからの頼み事
私達が外で子供達とアップルパイを食べている姿を見ると、急いで駆け寄ってきた。
「アカネくん、アオイくん、キノくん、ワカバくん、モモカくん、君達に頼みがある」
「どうしたんですか?」
すると秘書のハンナさんが前に出て、経緯を説明してくれた。
「昨日の件は、先程国王様にある程度報告させて頂きました。ブラックドラゴンの件に関しては一部の者しか知らない為、報告はしませんでした。ただ年に一度行われる武術大会と魔術大会がこの国で行われる事が決定しました」
「面白そうですね」
「事は単純ではありません。今までこの小国で行われる事がありませんでした。ですので国王様としてはこの国の知名度をあげるチャンスが来たと考えておられます」
「なるほど…何となくわかってきたわ。私達に出場して勝てと…」
「はい、簡単に申し上げますとそう言うことです」
「お前達しか頼めねぇんだよ」
「キリンの皆さんがいるじゃないですか」
「実はな…」
年に一度ある武術と魔術の大会、この国が選ばれなかった理由の1つが最弱、他国の近衛騎士や宮廷魔術師は冒険者のランクで言うとほとんどがAランク以上、もちろん冒険者ギルドにはSランク冒険者が多数存在する。
それに比べてシュテルンツェルト王国ではお抱えの宮廷魔術師もaランク以上の実力を持つ近衛騎士もいない。
頼みの綱は冒険者ギルドのAランク冒険者のキリンぐらいだ。
しかし去年の大会ではキリンのメンバーは全員初戦敗けで終わった。
さすがに開催国の選手が全員初戦敗けをしてしまったら格好がつかない。
そこで昨日の報告をした時、そこまでの力があれば優勝も狙えるなと国王に言われ、褒賞金は試合への期待を込めて白金貨100枚を貰ってしまった。
もう後戻りが出来なくなり、ここに来たという事である。
「もちろんここに来る前にキリンや他の奴等とも話した。どうだ、出でくれないか。受けてくれれば白金貨100枚のうち、90枚をアルテミスに渡す話もつけてある。どうだ!」
「受けなかったら私達には褒賞金無しですか?」
「いや、半分は渡すつもりでいた」
「どうする?」
私達は少し考えていると、モーリッツさんとハンナさんが不安そうにこちらを眺めているのを見て、可哀想になり受ける事にした。
「はぁ、今回だけですよ」
「受けてくれるか!」
「皆さんありがとうございます」
「ハンナさんも大変ですね」
私達は片付けて子供達を家に帰してから、モーリッツさんとハンナさんに連れられギルドに向かった。
ギルドに到着するとそのままギルド長室へと案内されると、そこにはキリンのメンバーが待っていた。
今までは各国と都市で1名ずつで2名参加資格があり、キリンのメンバーが2名ずつが各大会に出場していたが、今回は開催国なので3名ずつ出場出来る。
「じゃあ誰が出ればいいんですか」
するとルークが代わりに話し始めた。
「俺は昨日の戦いを見てから、はっきりいって自信を無くした。今まで他国のSランク冒険者と依頼を受けて共闘した事がある。いずれは俺達もSランクになれると思っていたのだがな…」
「ルーク!話がズレているわよ!」
「ああ、すまん。今回は俺とノアは出ない。君達の強さは桁外れだ。恥ずかしいが君達に託すしかないと思っている。だから武術大会ではアカネさん、アオイさん、ワカバさんで出てほしい」
「わかりました。魔術大会の方は誰が出るんですか?」
「キノさんに頼みたい」
「ボクは別にいいけどモモっちは?」
「ああ、その件だけど…モモカさんにも出てほしいんだけど、彼女の戦い方は特殊でどっちの大会に出せばいいか正直わからん。だからモモカさんに話を聞きたかったんだ」
するとレーアがモモカに訊ねる。
「モモカちゃん、あなたの技は魔力を出しているのよね」
「そうよ」
「あの技は炎とかを纏わせる事が出来るかしら」
「うーん、わかんないわ。やった事ないから」
「後で下で試してみてくれる?もし出来れば魔術大会で出れると思うの。そうすれば私とキノちゃんとモモカちゃんで決まりよ」
「そ、そうだな」
「さ!モモカちゃんとキノちゃんちゃんは私と一緒に下の試験場に来て」
「なぜボクもいかなきゃいけないの?」
「キノちゃんは私に魔法を教えてね」
「まあいいけど」
「お姉ちゃん、私も行くわ」
「お前達、勝手に話を進められては困るんだが…」
レーアがどんどん話を進めていくのでルークの存在が無くなっていく。
後ろからギルド長のモーリッツが優しく肩を叩くと2人は悲しそうにしている。
「では私が地下の試験場まで案内しますね」
ついに秘書のハンナまでも彼女達の話に加わり、女性達のみで話が進めてられていくのであった。
◆ ◆ ◆
「僕もいますけど………」
天才と呼ばれた最年少Aランク冒険者ノアは今日も存在を忘れられていた。
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