29曲目 最悪の事態
アルテミスがビックボアに向かっていった。
ったく、女ってヤツは自分勝手なヤツばかりで困るんだよ。
そんな事を思っていた俺は愕然とした。
勿論ノアもその一人だった。
隣ではノアが腰を抜かしてしりもちをついているが、レーアとリーナは驚きながらも俺の方をチラッと見てどや顔をしている。
「ルークさん!空、空飛んでますよ」
「あ、ありえない!飛行魔法はSランクの極一部の魔法使いしか使えん!飛行魔法を使えたら、それだけで敬意を払い賢者と呼ばれるんだ。それを使えるなんて…」
「ルーク、あなたが見た目で判断したからよ」
「姉さんの言う通りよ。見た目で判断すると痛い目にあうわよ」
そして見上げると、よくは聞こえないが何かが聞こえる。
「な、なんだあれは!おい、いくらなんでもおかしいだろ!」
モモカの衣装と装備が変わったと同時に、ありえない火力の攻撃がビックボアを襲った。
「レーア、リーナ、あれもわかっていたのかよ!」
「「………ま、まぁね」」
絶対嘘だぁ~~~
今までSランク冒険者と共に戦ってきた事があるが、あんなの見た事も聞いた事も無いぞ。
今の攻撃で何頭のビックボアをやっつけたんだ。
チラッとノアを見た。
ダメだ。
ノアはもう放心状態だ。
続いてキノの魔法が炸裂した。
「おい、レーア!あれ3つの魔法を同時に出せるのか?」
「ありえないわ。まず無詠唱で魔法を出すだけで超一流よ。私だって初級魔法の詠唱破棄を練習中なのよ。詠唱破棄出来るだけでSランクよ!」
「私も聞いた事があるわ。英雄と呼ばれた賢者は2つの魔法を同時に使ったと…」
「それ以上の3つだぞ!しかもファイアランスはわかるが他の2つは見た事ないぞ」
「あれは氷と雷ね。氷を使える人はSランク冒険者にいるけど、雷を使える人を見たのは初めてよ」
「おいおい、2人でもう半分のビックボアを倒したぞ」
これは夢だ!
そう思わないと今まで培ってきた経験が無になる。
目の前に伝説と呼ばれた英雄が2人もいる。
てっきりおとぎ話かと思っていた英雄が…
俺はすぐに他の3人を見た。
もう倒した終わっていた。
えぇぇぇぇぇ!
嘘だろぉ~~~~~!
何が起きた?何が起きたんだぁ!
誰か教えてくれぇ~~~!
「おいレーア」
「な、なによ」
「他の3人は何をしたんだ?」
「私も見逃したわ」
「ね、姉さん!私、見ました。凄かったです」
妹のリーナが震えながら答えた。
そう、手から光線みたいなものを出してビックボアを吹き飛ばしたと思ったら、理解出来ない程のスピードで切り刻んでいく姿を説明した。
「あの3人もSランクどころではないわ!あの5人は一人一人が伝説の英雄クラスだわ」
「と、とりあえずはビックボアを全て倒した…でいいのかな」
「そ、そうね。とりあえずあの娘館の所に行きましょう」
「あ、あ、あ、あれ」
腰を抜かしてずっと無口だったノアが、ようやく口を開いたと思ったら指を指して怯えていたのでみんなで見てみると空から何かが飛んできた。
遠くてよくはわからないがワイバーンか?
1匹のワイバーンなら俺達で十分だろうが、ノアは何を怯えているんだ?
俺はよく目を凝らして見てみると近づくにつれてどんどん大きく見えてきた。
あんなにでかいワイバーンは見た事がない!
「あ、あれ!伝説のドラゴンじゃないかしら」
「確かに大きいがドラゴンなんて空想上の生き物だろうが」
「姉さん、私読んだ事があるわ。たぶんブラックドラゴンよ」
「なにぃ~~~~~!」
俺は思わず叫んでしまった。
なぜなら、ブラックドラゴンと言えば、おとぎ話で出てきたドラゴンで、一晩で王都を焼き払ったと言う話だ。
話だと一人の英雄が自分の命と引き換えに追い払ったというドラゴンだ。
決して倒す事は出来ない。
英雄すら追い返すのがやっとで、倒した話を聞いた事も無いし、ここ何十年でドラゴンが出たっていう話も聞いた事がない。
だから空想上の生き物と思っていたのだが…この目で見る事になるとは思わなかった。
「逃げるぞ!みんな」
「でもあの娘達は」
「呼びに行く時間は無い。彼女達ならば容易く逃げるだろう。それより早くしないと王都はおとぎ話みたいに滅ぶぞ!」
「あの娘達なら倒せるんじゃないかしら」
「英雄すら命をかけて追い返すのがやっとだったんだぞ!無理に決まっている」
「彼女達は5人いるわ」
「ちょっとルークも姉さんも言い争っている場合じゃないわ。もうあの娘達、ブラックドラゴンに向かっているわよ」
終わりだ!
俺はもう祈る事しか出来なかった。
ビックボアは確かに何かに追われていた。
あの時にしっかりと確認しておけばよかった。
わかった所で何か俺に出来ただろうか?
そして俺が色々と考えている内に、ブラックドラゴンはアルテミスの前に空から降りてきた。
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