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101曲目 森の見張り

 門入口では既に商隊に指示を出しているヒュドラのメンバーがいる。

 出発に今まで待たされたせいか、もしくはヒュドラのメンバーの口が悪いせいか、みんな機嫌が悪く険しい顔をしている。


「君達!私達は仮にも雇い主で、君達の部下でもなんでもない!あまりあれこれ指図しないでくれないか」


「けっ!俺達がいるからアイスベルクに行けるんだぜぇ。あまり文句言ってんじゃねぇよ」


 我慢の限界だったのかアオイが前に出る。


「あなた達、いい加減にしなさい」


「…んん、何だよCランクの小娘が」


 ドカッ、ガシッ


「痛ててて、てめぇ〜話しやがれ」


「二人共、やめろ。出発の時間だ。そろそろ行くぞ」


 セイレーンのグレータが間に入り、渋々ヒュドラのメンバーも先頭に立ち、出発することになった。


「グレータさん、ありがとうございます」


「気にするな」


「あの、グレータさんは彼らを知っているんですか?」


「まぁ、リーダーのドミニクとはよく競い合った仲でな。よく魔獣狩りをしたもんだよ。今はこんなだが、…まあいろいろあってな。昔はあんなんじゃなかったんだ。悪気はない。許してやってくれ」


「はあ、わかりました」


 私達はそこから話を聞くことはやめて持ち場に戻った。

 前方はヒュドラ、後方はセイレーン、私達アルテミスは中央の両サイドを見張る事となった。


 森に入る前に休憩を取り、何事もなく森に入る。

 この森はかなり大きな森で抜けるには1日かかる。

 途中で休まないと、夜にはBランク以上の魔獣が彷徨く危険な森である。

 だから昼の間に休息場に着かなくてはならない。


 先頭を歩くヒュドラのメンバーは皆が疲れる手前で休憩の指示をして休ませる。

 口は悪いが確かに的確な判断だった。


 日が暮れる頃には森の中央、おそらく人口的に作られた場所、森の中とは思えない拓けた場所に着いた。


 中央には小屋が3軒あり、馬を繋ぐ大きな馬小屋も用意されていて、大きな屋根の下には椅子とテーブル、それらを囲む様に火が焚ける様になっている。

 だから外でもゆっくりと食事を取ることも出来るし、焚き火が獣除けにもなっている。

 そして雨の日でも十分に体を休ませる様になっているので護衛をするにも最適である。


 長年行路として通って場所だけに、1日では抜けられない森の中を、先人が長年考えて作ってきたのだろう。


「お前等、早めの夕食にする。18時には全員小屋に入ってもらう。18時から21時まではアルテミスが見張り、21時から24時はセイレーン、そこから6時までは俺達ヒュドラが見張りをする。文句のある奴はいるか」


 すると一人の商人が手を挙げた。


「この付近には希少な植物が取れると聞いたので少し散策をしたいのだが…」


「駄目だ!」


「少しぐらいいいじゃないか!」


「駄目だ!」


「駄目だ!じゃなく理由を言え!」


「駄目だ!」


 また、不満を持っていた商人達が苛立ち始めると、セイレーンのグレータが間に入った。


「この付近にはBランククラスの魔獣がいる。命が欲しくば彼の言う事を聞きなさい。口は悪いがここまで何事もなく来れたのは彼等の指示あってのもの、素直に言う通りにしないと私達でも守りきれなくなる。わかったならご了承いただきたい」


 グレータの言葉と迫力に皆が大人しくなり、食事の用意を済ませ、そして夕食となった。

 商人達が用意した食事を済ませた後、アルテミス以外が休息を取る。

 小屋には商人達が入り休み、冒険者達は用意したテントを張り、一時の仮眠を取る。


「君達、何かあったらすぐに呼びなさい。自分達で解決しようとしては駄目よ」


「はい、グレータさん達は先にゆっくり休んで下さい」


 私達は火の番をしながらみんなに聞こえないように小声で話をした。

 もちろんお茶と茶菓子を用意してね。


「は〜い。今日は洗い物が出ないように紙コップにドリップコーヒーよぉ。そ〜れ〜と〜ぉ、ネットで買ったシュークリームよぉ」


「モモカ、ありがとう」


「ありがとうございます」


 もぐもぐ、


「モモっち、もっとシュークリーム」


「キノ、自分で買えるでしょ」


「食費からよろしく」


「…あったまる」


 基本、お金の管理は私だけど…、食費はモモカ、消耗品や備品はその都度ワカバに渡して、帳簿管理は私とアオイ、キノは…そういえば役割なかったわ。

 給料というかお小遣い?は、月の収入に応じて基本給と歩合になっている。


 結構稼いでいるせいか、かなり消費が激しい。

 普通は破滅的なお金の使い方だけど、何故かマイナスになることはない。


 あっという間に3時間が経過する。


「お疲れ様」


「あっ!グレータさんお疲れ様です」


「その様子だと何も無かった様だな」


「なあ、何かいい匂いしないか」


「確かに」


「良かったら飲みますぅ」


「これもあげるよ」


 キノが欲張って買いすぎたスイーツの余り物、全部市販の物で個包装になっているので問題無い。


「はいどうぞ」


 淹れたてのコーヒー、初めて飲むリアクションが新鮮だった。


「苦い、なぁに〜これ〜」


「そうか、結構美味いぞ」


「これ入れてみて下さい」


 砂糖もミルク、これも個包装の物を渡してみる。


「うん、美味しいわ」


「俺は何も入れない方が好きだな」


「私もだ」


「ちょっとちょっとぉ〜、これ凄く美味しいわよ」


「これは!ウマい!!甘いものは苦手だが、これはウマい!!」


「ありがとう。君達のお陰で見張りも楽しく出来そうだよ」


「このコーヒーっ飲み物とこの食べ物、後でどこで売っているか教えてねぇ〜」


 楽しく見張りの引き継ぎも終え、私達も休む事にするのだが、ワカバとアオイの収納から出した木材の量にびっくりされて、更にワカバの錬金で造られたコテージはセイレーンのみんなからのツッコミが凄かった。


 そのせいで休んでいた人達から叱られてしまった。


「君達は何者なんだ」


「そんな魔法初めて見たわよ」


「しっかし、すげぇ〜な〜」


「あまり人には見せないほうがいい。君達を悪用しようとする輩も出てくる。だが、…確かに羨ましい能力だな。神様の恩恵っていうものか。初めて見たな」


 私達のことを心配してくれるグレータさんもコテージの中を見て関心していた。

 普通の冒険者は薄い寝袋みたいな物を用意する位で、よくてアイテムボックス持ちがいてテントを用意するのが当たり前、基本荷物は持たない。


「後はお願いします」


「「「「「おやすみなさ〜い」」」」」


 やがて夜も更け、何事もなくセイレーンのメンバーもヒュドラのメンバーと交代する。


 しばらくすると、獣の遠吠えが響き渡る静かな中、小屋のそばで人影が見える。

 ヒュドラのメンバーが誰も気付いていない。

 人影はゆっくりと動き出した。

 次話も来週の月曜日に更新予定です。

 是非、楽しみにして下さい。


 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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