1曲目 女神降臨
私は小さなアイドル事務所を立ち上げ、遂にこの日がやってきた。
そう!遂に念願のドーム公演が決まったのだ。
最初は社長兼プロデューサー兼作詞作曲家兼ガールズユニット【アルテミス】のリーダーとして、私がガールズユニットをプロデュースをした。
3年が経ち、やっと人気ガールズユニットとして名を上げる事に成功した。
今でも5人しかいない事務所だが、これからは多数の社員を雇用して、多数の後輩新人アイドルを育成して、この事務所を大きくする。
目標の目処も立った。
最初の頃は周りの人に、作曲家として才能があり美人だからって調子に乗ってんだよと相手にもされなかったが、今では敏腕プロデューサーそしてガールズユニットとして認められた。
そしてその夜、私達は事務所のベランダでバーベキューをしながらドーム公演に向けて祝杯を挙げた。
「みんな、遂にここまで来ました。このガールズユニット【アルテミス】のドーム公演が決まりました」
彼女達4人から拍手を貰う。
私達にメインボーカルはいない。
あえて言うなら全員がメインボーカルで曲によりセンターが替わる。
そして少しでもみんなにアルテミスを知って貰う為、私達の衣装には各々決まったカラーがあり、それに合わせた芸名をつけた。
リーダーの私赤色担当で名前は月野アカネ。
一番右から青色担当の七海アオイ、隣の黄色担当の大地キノ、更に隣の緑色担当の笹森ワカバ、一番左の桃色担当の胡桃モモカ、この5人がアルテミスのメンバーである。
「しかも!五大ドームで15公演です」
テンションが爆上がり。
「ようやく私達の苦労が報われる時が来ました。これからドーム公演に向けて大変になるけど、みんなぁ〜、頑張っていくぞぉ~~~!」
「「「「おーーーーーっ!」」」」
いつも一番冷静で落ち着いているアオイも今日は弾けている。
そしていつも明るくドジなキノははしゃぎまくっている。
無表情で口数が少なく、淡々と話すワカバはよく喋る。
いつも色っぽい巨乳のモモカはお酒も入り、いつもよりも色気を漂わせている。
だがしかし、こんなに楽しい日にまさかこんな事が起こるなんて誰も想像していなかった。
★ ★ ★
あ、あれ?ここは何処だ?
そこは何も無い真っ白な空間で、周り見渡すとメンバー全員倒れていた。
「みんな!」
一番近くにいたアオイの所に走りより声をかける。
「アオイ!」
アオイの体を大きく揺すると、アオイはゆっくりと目を覚ました。
「う、うーん。アカネさんどうしたの?」
「ふぅー、安心したわ。生きてるわね」
「当たり前ですよ!」
そしてアオイも気付いた。
何も無い空間で倒れていた事を!
「み、みんなは?」
すると、キノ、ワカバ、モモカも起き上がってきた。
「キノ!ワカバ!モモカ!大丈夫!!」
「あれぇ~、ここはぁ~?」
「…問題ない」
「ふぁ~、よく寝たわぁ」
一安心した私は早速アオイと事態を把握する。
「さっきまで私達バーベキューしていたわよね」
「ええ、確かに事務所のベランダで前祝いをしていたわ。その後は何かピカーッと光って目が覚めるとここにいた、かしらね」
「そうよね。夢…では無いわよね」
アオイと話していると上から声が聞こえる。
私も含めてみんなが上を見上げた。
何!眩しい!女性…かしら?
女神様が降りて来たのであった。
女神様は申し訳なさそうな顔をして5人に話をする。
夢?夢しか考えてられない!
「私は女神、ムーサの三柱の1人アオイデーです」
私はみんなのリーダーでもあり、震えながらと一歩前に出て女神と名乗る女性に質問した。
「失礼ですが夢…では無いですよね?本当に女神様なんですか?はっきりいって私達は混乱してます。」
女神アオイデーは事のいきさつを話した。
「実は…私達神も…天上界で…」
少し歯切れが悪かった。
いつも冷静なアオイがイラつき声をかけた。
「あのぉ!もっとスムーズにハッキリと言って下さい」
するとアオイデーがいきなり頭を下げた。
「ごめんなさい!私達も宴会をしていたら、つい雷を落としてしまい、あなた達を殺してしまったの」
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
あのアオイがキレた。
「あなた達の過去を見させてもらったわ。だからあなた達がこれから夢の第一歩を踏み出した所というのも分かっています。だから歌の女神である私が代表で謝りにきました」
「謝って済む問題じゃないでしょっ!!」
ああ、もうダメだ。
私の出る幕では無い。
他のメンバーも引いている。
だってこんなにアオイが怒る所をみんな初めて見たんだから…もうアオイに任せるしかない。
「も、もちろんあなた達を生き返らすわ。でも…」
「でもぉぉお」
「あなた達の世界では生き返らす事が出来ないんです。肉体が死んでもう宿す肉体がないの」
「はぁぁぁぁぁぁぁあ」
「だ、だから別の世界で生き返らせますので…」
「別の世界?」
「はい!簡単に言うとあなた達で言う異世界です。」
「異世界?」
「そう!異世界です。何て言ったらいいでしょうか?あなた達の世界のゲームやアニメにある世界で…ファンタジー世界って言うんでしょうか?魔法があって、魔獣がいて、多数の種族がいます」
その言葉に普段無口で言葉数が少ないワカバが大声を上げ、興奮しながら跳び跳ね、そして喜んだ。
ワカバは一言で言うとアニメオタクである。
だから過去にアニメの主題歌が決まった時は人一倍テンションを上げていた。
「ただ、その世界には歌が存在しません。それでも良いのならすぐに生き返らす事が出来ます。」
その言葉に私も話に割り込んだ。
「それって私達が最初の歌姫になれるって事でしょ」
「まあ、その世界で歌が広まれば可能性はありますわ」
「やるわ!やるわよ!!」
私も一気にやる気が出た。
しかしアオイ、キノ、モモカは反応がイマイチだった。
するとキノ、モモカと続けて質問をした。
「ボクはどっちでもいいけど、それってやっぱり争い事が多いの?あまりめんどいのはちょっとねぇ~」
「あたしは今まで通りの生活が出来ればいいわ」
モモカの不安はそんな世界に今までと同じ様な生活が出来ないと思っているからだ。
お風呂はあるのか?トイレはウォシュレットか?シャンプーやトリートメント、化粧水などはあるのか?可愛い化粧品や洋服は売っているのか?そんな事を気にしている。
しかしアオイだけは冷静に無一文で知らない世界を生きていけるのか?とみんなの命に関わる心配などをしていた。
みんなの心を読んだアオイデーは心配を無くす様に特別に与える祝福の事を話した。
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