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とある地下アイドルオタクの恋愛事情  作者: ぽぽらまーま
1/1

初めての現場っ!


友達のみゆに連れられて足を踏み込んだライブハウスでは、可愛らしい女の子たちの談笑でざわざわと賑わっていた。


「へー、ライブっていうからパンク系とかゴスロリ系の人ばかりかと思ったけど結構普通なんだね」


と言うと、みゆはバンドじゃなくアイドルだからねーと話しながら人混みの隙間をスーッと通りながらステージの最前列へと向かっていく。

それって横入りじゃないの!?と周りの目が気になる私はオロオロしながらその場に立ち尽くしていた。これからどうすれば…と心配していたのもつかの間、最前列へ行ったみゆはそこにいた気の強そうな女の子数人に話しかけてすぐにこちらに戻ってきた。


「前で見るんじゃないの?」


「前で見るよ!今最前列取ってるオタクにHoney Princeの時だけ入れてもらえるよう私とまいの二人分で交渉したから」


Honey Prince通称はにぷりはみゆが今ハマっている地下アイドルグループだ。お世辞にもファンは多いと言えないらしいが頑張ってる姿を見て応援したくなったと話していた。今回のイベントははにぷりだけではなくいろんなアイドルグループが出てくる対バンというものらしい。


「あ、もうすぐ始まるよ!」


みゆがそう言ったのでステージの方を見ると、先程最前列にいた女の子たちが後ろに下がり別の子が最前列に立っている。なるほど、お目当てのグループの時にだけ交換してもらうことも出来るんだ。


聞いた話だとこの対バンは時間が長いため、ずっと立っていると疲れるからお目当て以外見ない人も多いらしい。結構シビアな世界のようだ。


そして周りからカチカチとボタンを押す音が聞こえたため見回すと棒状の物をいろんな色に光らせていた。


赤、黄色、ピンク、緑、青、水色、紫…


友達同士で同じ色にしていたりバラバラにしていたりと様々だ。よく見るとそれは今ステージで踊ってる男の子たちの服の色と同じだった。


「まい!あの黄色の人かっこよくない?」


よそ見をしていた私の肩を叩いてみゆがそう言って黄色い服を着た男の子を指さした。そして指をさされたことに気付いたのか黄色い服の男の子が踊りながらこちらを見つめてニコニコしている。


(あ、すごいこっち見てる…)


今、私達はステージから見て3列目くらいにいる。それでも距離が近いため私とみゆを交互に見ていることがちゃんと分かった。するとみゆが鞄から周りの子と同じように棒状の物を取り出して黄色に光らせる。それを見た男の子が笑ってみゆのことを指さした。


「きゃー!レスくれた!」


みゆはよくライブでの話をしてくれて、その中でもレスと呼ばれる指差しや投げキッスなどをされたと言っていた。正直アイドルというと某有名な超大手グループしか思い浮かばなかったので、本当に自分に向けてか分かるものなのかと思うこともあった。


だが確かに今黄色い服の男の子はみゆのことを指差した。ステージとの距離が近いためアイドルたちの黒目まで見えるためどの人にやったのか分かりやすい。


「キンブレまいの分も持ってきたから!どの子が好み?」


「えっ!えーと…この中なら、青かな?」


「あーまい好きそう!」


そう言ってみゆはもう1本の光る棒…キンブレを青に光らせて私に渡してきた。使い方が分からないためそれを胸元あたりで持ちながらステージの方を見る。


そうか、こうやってみんな自分が誰のことを見てるのかアピールするんだ。そしたらアイドル側も自分のファンが分かりやすいためレスをくれるようだ。


チラリとみゆの方を向くとみゆはずっと黄色の男の子を目で追っている。私も同じように青い服を来た人に目線を向けるとタイミング悪く目が合ってしまった。


タイミング良く…なのかな?だが全く勝手が分からない私は目が合ったことにびっくりしていたら、青い服の男の子がキョトンとした顔をした後に少し笑って手を振ってくれて嬉しくなる。


ここに来てる子はこれが楽しいからライブ見に来てるんだ…分かる気がした。確かに自分に向けられたファンサービスは嬉しくなってテンションが上がる。


3曲ほど歌い少しMCを挟んだ後にもう1曲やって男の子たちはステージからはけて行った。すると最前列にいた女の子たちがまた入れ替わる。


「結構楽しいね」


「ホント?良かったー!」


みゆに教わりながらキンブレの光を消して、私は素直な感想を言った。するとみゆも楽しかったみたいでニコニコしながら喜んでくれる。


「今のグループ、すまいるさぷりっていうんだってー!黄色のレンくんに推し変しようかなー?」


「推し変?」


「応援してる人を変えること!ヒカルくんあんまりレスくれなくなってきたからさー」


ヒカルとはみゆのはにぷり内の推しで、よく私にヒカルくんにああされたこうされたと話をしてくれていた。楽しそうな話ばかり聞いていたけど、不満もあったみたいでみゆは愚痴を漏らした。


「新規釣りで最初はめちゃくちゃレスくれたのに自分のオタクになった途端レスが減って…」


新規釣りというのは自分のファンではない人に対して、過剰にファンサービスをしたり喜ばせる対応をして自分のファンにさせるというファン獲得の仕方らしい。ヒカルくんは俗にいう釣った魚に餌をやらないタイプというわけだ。


「決めた!今日の物販レンくんのとこ行く!」






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