××な先輩4
「あ、あはは、 まぁこんなこともあるよ、後輩君。
スピーカーで話してたっていったらなんとか誤魔化せ…ないかなぁ。
だいぶ最初の方から聞いちゃってたし。」
なんとか場を和まそうとする大野先輩であったが、逆に止めを刺しにいった形になってしまった。
そんな誠はふらふらとベッドへうつ伏せに倒れ込むようにダイブする。
「すみません大野先輩。
今日はもう寝ます。」
「うぇえ、ふて寝!?
ショックなのはわかるけどもうちょっとお話ししようよ!
せっかくの夏休みなんだから徹夜で討論会しようねって約束覚えてないの!?」
「まったく身に覚えがまったくありません。
なんですか討論会って。
それに夏休みだからってずっとぐーたらできませんよ、家の手伝いもあるのに。」
「ぶーだよ、ぶーー!」
大野先輩は両方の頬っぺたを思い切り膨らませてブーイングを行う。
しかし、眉も目もハの字になりどんよりしている誠を見て、やれやれといった表情で軽い溜め息をついた後にふわっと天井に向けて浮かび上がった。
「まっ、今日は災難だったみたいだしこれで引き上げてあげるよ。
そのかわり次に会う時は話しのネタたくさん準備しといてね。」
「うーい。
大野先輩は次に会う時までに知力上げといてください。」
「さらっと先輩をディスらないでくれるかな?
まっそんな余裕があるなら安心だよ。
おやすみー。」
先輩は手を振りながらふわふわとカーテンをすり抜けていき、誠もそれに答えるように寝たままではあるが手を振り返した。
そのまま手をベッドの頭元に伸ばし、リモコンで部屋の電気を切る。
寝返りをうって天井を呆然と眺めていると、瞼が次第に重たくなってきたが、それと同時に冷静さを取り戻し始め、ある思いが込み上げてきた。
「……………………先輩に悪いことしたな。」
暗い部屋の中でぽつりと呟く。
色々と振り回されたものの、一時的な感情でろくに話さず大野先輩と別れたため罪悪感が生まれたのだ。
大野先輩の姿を見たり話せたりできるのは自分だけ、それならマンネリな芸を見せられたとしても我慢して話し相手になってあげるべきだったのでは、天然なのに変な所で気が回るから今頃1人寂しくて縮こまっているのでは、などとあれこれ考えていると寝るに寝れなくなった様で眉間にシワを寄せながらスマホを触り始めた。
検索履歴を見るとケーキに関するサイトを巡っているようで、どうやら大野先輩からの宿題である『話しのネタ』を収集しているようだ。
こうした誠の罪滅ぼしは結局深夜まで続き、寝落ちという形でネタの収集は一区切りをついたのだった