停滞した振動(おと)
静寂の中の自我は朧気で、何をしても現実感がない。
平生ならば外ではしゃぐ子らの声が届くというのに
なぜだか今日ばかりは何も聞こえない。
開いた窓から吹き込む風もなかった。
見上げた空には一分の蒼も見えず
停滞した世界はくすんでいる。
遠くで音が動いた。
緊急車両のサイレンが遠ざかる。
ふいに、世界が動き始めた。
音が私を目覚めさせる
鼻に届く濡れた舗装のにおいに気付き
じきに降るのかと目を凝らせば、既にやんだ後のよう。
いつの間にか顔に打ち付ける飛沫があった。
窓に打ち付ける水滴は空から落ちてきている。
いつの間にか止まっていた時間が、また動き出した。