小学生編 第三話
顔も名前も知らない人とインターネットを通じて交流をする。当時の僕にとって、それは革命的であり、同時に内心に恐れがあった。自分の発した言葉が見ず知らずの人に届き、それが返ってくる。このメッセージが相手に不快感を与えてしまったら、意図しない解釈に取られて諍いになってしまったらなど、当時の僕はネットリテラシーはなく、微妙な知識しかないために最悪の場合は逮捕されてしまうのではないかとびくびくしていた。しかし、僕はそんな恐怖よりも、誰かと繋がっていられる喜びのほうが勝っていたのだ。
ここで僕の名誉のために言っておくが、小学校に友達がいなかったわけではない。学校に行けば友達と談笑し、休み時間には外遊びもしていた。いじめなどの問題がなかったわけではないがここでは割愛させて頂く。また、小学生というのは、まだ完全に性を意識する年頃でもなく中学高校に比べると充実した生活を送っていたと言えるだろう。性を意識してからの拗らせは後で詳しく述べようと思う。
動画を見てはコメントを書き、返事を待つ。こんな生活がある程度続いたある日、僕は飽きた。理由はいくつかある。
一つ目は、見る動画そのものが少なくなってしまったことだ。前述の通り、当時の僕は検索能力も低く、人気の高い動画を中心に視聴していた。それが数か月も続けば検索をある程度捻ったところで被りが生じるのだ。同じ動画に二度コメントするのは何か違うものを感じ、見る動画の幅が狭まったのだ。
二つ目に、動画とは別にネット小説にはまったからである。ネット小説では主にショートショートもしくはショートストーリーという通称ssと呼ばれるネット上の読み物を楽しんでいた。これはたまたまネットサーフィンをしているときに、とある魅力的なタイトルがまとめサイトの記事に見えたことが始まりだった。単純な僕は、またしてもこのssに感動してしまい、途端に狂ったように漁るようになった。ここでは純粋に読み物としてはまったために、コメントを残す作業はしていない。ssを通して地の文がある小説や、内容がカオスなものなど様々な文字に触れることができた。僕は一次作品、いわゆるオリジナルssが好きであり、今でも定期的に読むほどには人生に影響を与えられたと思う。機会があればssについてはどこかで語りたいと思う。
これらの二つの理由から僕はネットで「繋がる」ということをやめたまま、小学校を卒業した。