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漢気!ド根性ハーツ ~気合と絆こそが俺の魔法だ!~  作者: 檻牛 無法
外伝3 花の都のリーゼント
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EP11 東と旅立ちと7人

 ソメイ親分率いるハナノメ組を倒した報酬は総額2100万ルドであった。

 その報酬のほとんどは、キリュウとミカミの意思により、ハナノメ組の被害に遭った市民たちへの補償にあてられた。

 このニュースは、ザポネを超えて海の向こうへと伝わるところとなった。


 抗争から二日後、帝都のとある病院。その一室。

 ようやくユナの目が醒めた。



「あ、あれ……アタイは?」

「ああ、よかった……!」

 ミカミは、涙ながらにユナの両手を包んだ。

 その感動の声が病室の外でも聞こえたようで、キリュウ達も入ってきた。


「……ここ何ヶ月かの記憶がないわ。確か、ハナノメ組の男に襲われて……」

 ユナは、頭を抱えた。


「マガツとかいう男に洗脳を受けていたみたいっすよ」


 ミカミは、外で起こっていたいきさつをユナに話した。


「もう、戻るのは無理そう」


 ユナは、夜の街でナンバーワンを獲った栄華に、想いを馳せた。

 彼女が艶めかしいため息をつくと、キリュウは目の前に手を差し伸べた。


「もし、アレだったら……俺と来るか?」

「アンタら、アタイを分かってて誘ってるのかい? 仮にもアタイは夜の女だよ?」

 ユナは、キリュウの手を振り払った。

「んなの、俺らの知った事じゃねぇよ。ハナノメ組倒さなきゃ、お前を路頭に迷わせることもなかったから、こうして……」

 責任を取るつもりだった――そう言おうとしたが、ユナは食い気味に口を開いた。


「二十歳に満たないくせに、女の扱いを少しは分かってるじゃない」

 キリュウは、少し誇らしげに鼻を鳴らした。


「来るか? 俺たちの冒険団に。それも、全員何かしらのコンプレックスを抱えてる、“風変わり”な集団だけどな」

 コンプレックスも風変わりも、誇りとして名乗ったキリュウ。

 ユナは、口元を抑えて笑いをこらえた。


「前言撤回。やっぱり女心くすぐるの下手だね。顔と体格がいいってだけでモテた……そんな感じじゃないかい」

「仕方ねぇだろ。大人の女を口説くの初めてなんだからよ」

 キリュウの唇がへの字に曲がる。交際経験こそ多数あれど、勝気な年上の女だけは苦手だった。彼の母がヤンママで、気が強すぎたのが原因である。

 責任を果たせないと分かると、途端にキリュウは頭をがっくり落とした。それでも、ユナは変わらず笑っていた。


「でも、アンタについていくのも悪くはないけどね。アンタがアタイを本気で気にかけていたこと、おぼろげだけど覚えてるよ」

「じゃあ……!」

 キリュウの目が急に輝いた。


「責任取るんだろう? アタイも連れてっておくんな」

 ユナははにかんだ。キリュウは、たまらずガッツポーズ。

 キリュウ一派に新たな仲間。夜の街の元ナンバーワン・ユナの加入を祝って、この日はちょっとしたパーティーとなった。



 数日後、ユナが退院した。


「で、目的のハナノメ組の親分討伐も終わった事ですし……これからどうしやしょう?」

「そうだな……ザポネの外に出てみねぇか?」


 キリュウは、ドヤ顔で言った。自分たちは冒険団だから――そう思えばこその言葉だった。

 それに、彼だけは地球人。カルミナの事をもっともっと知りたい。探求心は、留まるところを知らない。


「私、賛成」

「拙者も行きたい。誰が相手であろうと、臆することなく会話ができる勇気と技術が欲しい」

「アンタが望むなら、アタイはどこへなりと。西かい? それとも東かい?」


「東だな。理由は、何となくだ」


「お、オデも海外の技術には興味があるど。だども……」

 四人の視線がダーレンに向かった。


「何か心配事でもあんのか?」

 キリュウは、神妙な面持ちで訊いた。

「ザポネより東には、奈落があって……」

「そんな事、行ってみなきゃ分かりやせんよ」

 ミカミは、ダーレンの背中をさすった。


「行かなくても分かるだろ。世界は丸いんだよ。ガキでも知ってる常識だ」

 キリュウは、ダーレンの杞憂を鼻で笑った。


「じゃあ、もう東に行くって事でいっすよね? だったら、船がいりやすね」


 ミカミ曰く、ザポネはカルミナの極東に位置する島国である。

 東西南北どこだろうと、ザポネを出たけりゃ船は必須となる。



「ミカミ、ここから一番近い東の陸地は?」

「エデンの島じゃないすかね。まともな街、って意味ならメルドベラになりやすが。いずれにしても、かなり長期の航海になりやす」


 ミカミは、世界地図を広げた。そして、指で航路をなぞる。

 ザポネ国外で最も近いエデンの島ですら3000キロ。メルドベラに至っては、赤道を超えて6500キロほど。


「長い海の旅か……」

「何だか、海賊みたい」

 ランがボソッと呟くと、キリュウは高笑いした。


「何度も海難事故に遭うような海賊なんて、ゴメンだろ」

「縁起でもないこと言わないでくださいよ」

 ミカミは、冗談を笑い飛ばした。


 そうしてたどり着いた帝都の港。一隻のガレオンとともにユラヒメとリャンソーが待っていた。


「リャンソー、ユラヒメ! 元気そうじゃねぇか!」

「おお、遅いぞ。待ちくたびれたぞ」

 ユラヒメは、へちゃむくれになって言った。

「すまねぇな。ちょいと仲間の回復を待ってたモンでよ」

 キリュウは、苦笑いして何とか機嫌を取ろうとした。


「ああ、そうだ。先日は力を貸していただいて、あざっした!」

 ミカミは、頭を下げた。そして、キリュウの頭を無理やり押した。


「まぁ、良い。それで、お主らに頼みたいことがあるのじゃが……」

 ユラヒメは、リャンソーに目配せした。


「実は、キリュウさんたちの事が少し気に入ったもので……」

「連れてけ、ってか。俺らが断れるわけねーだろ」


 リャンソーは、喜びに打ち震えた。

 願ってもみない六人目の仲間は、船乗り。肩がすれ違った程度の縁ではあるものの、それでもキリュウを選んだ。



「で、キリュウ一派最初の仕事だが……」

「大将の頼みとあらば、どこへなりと船を出す所存! 目的地は?」



「とりあえず東へ」

 そう言ってキリュウは、船へと乗り込んだ。

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