第五話 『隊員』
三人は本部の外に出て、庭に設けられた駐車場へ行き、ハルとリオが乗ってきたのと同じタイプの軍用輸送車に乗った。ハルとリオは後部座席に座り、キョウカは運転席に座る。
「先に来ていたヒカル君とフタバさんはもう巡回に出ているわ。私達は彼らと反対のルートを通りましょう。そうすれば途中で合流できるだろうから」
ふと疑問に思い、ハルは尋ねる。
「シュウは一緒じゃないんですか?」
「ええ。なんでも具合が悪いとかで、今は医務室で休んでいるわ。初日だから気持ちがまいってしまうのは仕方ないだろうけど。心配なら、少し様子を見に行ってみる?」
「いえ、大丈夫です。あいつは昔からそういう奴でしたから」
幼なじみといえる間柄なので、ハルはシュウのことをよく知っている。
彼には苦しいことや嫌なことを目の前にすると、いつも逃げ出してしまう癖があった。
どうしてあいつは、国防軍に入隊する道を選んだのだろうか。
やはり、家庭の事情が絡んでいるのだろうとハルは思う。
「どーせまた仮病なんでしょ。シュウってば嫌なことがあるとすぐ逃げ出すんだから」
リオが言うと、キョウカは「あらあら」と小さく笑った。
「もし仮病だというのなら、研修中にその根性をしっかり叩きなおしてあげなくちゃね」
そう言うキョウカの声には、トウイチの声に勝るとも劣らない威圧感がこもっていた。
三人を乗せた車は本部を出発し、市街地の間を通る細長い道を通って、海岸部へ通じる幹線道路に出た。
「二人とも、車の運転はできる?」
キョウカに聞かれ、二人はできますと答えた。
「敵襲があれば私が応戦するから、あなた達はすぐに現場から離脱しなさい。いいわね」
「了解しました……。ですが、副隊長殿お一人でどうやって」
ハル君、とキョウカは彼の言葉をさえぎる。
「私のことはキョウカって呼んでくれるとうれしいんだけど」
「あ……、すいません。その、キョウカ、さん」
ハルはかすかに赤くなった顔をうつむかせる。
「大丈夫よ。この車には私のフレームと武装が積んであるから。こう見えても私は、うちの部隊では二番目くらいにフレームの操縦がうまいのよ」
「それは心強いです。キョウカさんが二番目なら、一番目は隊長なんですか?」
「いいえ。彼の実力は私とだいたい互角ってところかしら。一番の使い手、我が隊のエースは今ヒカル君やフタバさんと一緒に巡回をしているわ」
リオは興味津々といったかんじで尋ねる。
「その人って、どんな人なんですか?」
「たぶんあなた達も知っていると思うわ。ちょっとした有名人だし、あの二人も彼女のことを知っていたから」
そう話すキョウカの口調にはどこか陰りのようなものが感じられた。
なのでハルもリオもそれ以上聞くことをためらった。