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落日の国  作者: 青山 樹
第二章 『国防軍』
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第六話 『最前線の兵士』

 翌日、シュウは昨日の騒動などなかったように何食わぬ顔でハル達と行動を共にしていた。

 そんな彼の態度にリオとフタバは呆れ、ヒカルは苛立ったが、誰も責めはしなかった。昨日のことはできる限り触れたくないことだからだ。

 シュウもそのあたりのことをよく理解しているから、堂々としていられるのだろう。


 この日も前日と同じく、午前中は守備部隊の隊員達と共同で訓練に取り組んだ。

 訓練中にハルは、彼らの雰囲気が自分達とほとんど変わらないということに気づいた。

 多くの隊員は十代後半といったところで、西日本の最前線にいるにも関わらず、その表情にはどこか緊張感がかけていた。いつ、どこで敵の襲撃があるかわからないのに、彼らはごく普通の生活をしているようにも見える。


 それが戦場に慣れているためではないということは、トウイチやキョウカを見ればすぐにわかった。

 二人も普段は他の隊員達と同じように振る舞っているが、その一挙一動の端々には一般人にはない尖ったものが見え隠れしている。実際に戦場を生きてきた者だけが身に着けられる独特の感性のようなものがあるのだろう。サツキにいたっては、普段からして異質な雰囲気をまとっていた。


 ハルはふと、防衛学校にいた頃に聞いたうわさを思い出す。

 最前線に配備されている軍人は、ごく一部のベテランをのぞき全て新兵ばかりでまかなわれているらしい。

 経験のある軍人は、九州をはじめとする西日本の中枢の防衛にあてられるからだ。

 そして、何が起こるかわからない最前線には、育成にそれほどコストがかかっていない新兵が送られる。

 それなら仮に戦闘が発生して戦死者が出ても、ベテランの軍人が戦死するよりコスト的な被害をおさえられる。


 ハルはそのうわさが、根拠のないものではないということを実感した。

 ここにいる隊員の多くは、ここで死ぬことを前提として配備されているのかもしれない。


 そして、おそらくは自分達も。


 昼食のあと、ハルは昨日サツキが言った通り実戦訓練を行うため、本部を出て訓練場へ向かった。

 リオはハルが装備するフレームを調整するために同行し、ヒカルとフタバは見学のため二人につきそった。

 シュウは昨日に決めた通り本部とその周辺施設の見学へ向かった。

 フタバはシュウも一緒に来るよう誘ったが、シュウはハルとヒカルの顔を交互に見て「やめておくよ」と言った。


「お前らにやりたいことがあるように、俺にもやりたいことがあるからさ」


 去っていくシュウのうしろ姿を見送りながら、ハルは小さくため息をついた。

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