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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
14 セートの日常(?)
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14.11 Get Many Money


 ゴーレムを討伐してから、早数日が経過しようとしていた。


 その間も採掘は着々と進み、もうじき第57番洞窟を掘り尽くしてしまう勢いである。


 そんなわけで、メアリーとの商談をすべく、俺達5人は帝都を訪れた。


 当の商談は、と言うと、メアリーによる事前準備が恐ろしく周到になされていたため、ものの数分で魔水晶と代金の交換まで終了してしまった。


 商談の内容、より正確に言うならばどれくらいの金額で取引されるのか、と言う話については、基本的には一定額で取引を行い、帝国が魔水晶の値を釣り上げて販売した時に、その値上げで帝国が得た利益の半分を俺達が貰うことで同意をした。


 従って、今日は一定額での取引分の代金を俺達は受け取ったわけだ。その額、1人あたり、およそ92万ブロン。日本円にして920万円だ。


 1つの洞窟を掘削して500万ブロンぐらい得られると考えると比較的割の良い仕事だな。


 帝国もこんな大金をポンと渡せるのはすごいな、と思ったけれど、よく考えたら以前俺達は3人で3000万ブロン貰っていたので、国家の予算単位で考えたら実は大したことがない金額なのかもしれないな。


 てか、あの時使い切るはずがないとか思っていたが、そんなこともなかったな。やっぱり人間は金があれば使ってしまうものなんだな。


 さて、先程は1人あたり92万ブロンと言ったが、俺の手取りはもう少し少ない。


 と言うもの、まず、次の洞窟を買い取る為の資金としてある程度の額を全体から差し引いたのだ。


 そして、作業の分担から考えて、カレンの受け取る額を増額した。


 よって、俺が受け取った実質の額は60万ブロンとなった。


 それと、俺はメアリーに洞窟内にいた魔水晶のゴーレムの解析を依頼した。


 まあ、帝都との取引額の交渉のために、ゴーレムがどんな魔水晶で構成されているのかを解析するってのが本質的なところではあるが。


 ゴーレムの解析については、専門家が見れば1発でどんな魔水晶なのかはわかるそうで、俺達はしばらく城の応接室で待機することにした。


―――


 さて、問題はここからだ。


 この待機の時間、帝国内での俺達の存在の周知を目的とした取材が開かれることとなった。


 取材と言っても、帝国民への周知用の書類に載せる写真の撮影がメインではあるのだが。


 とりあえず、これが地獄だ。そもそも俺は写真を撮られるのが好きではないからだ。


「ケン様、笑ってくださーい」


 撮影係の記者がそんな俺に向かって声をかけてくる。ただでさえ、写真を撮られるのが嫌なのに、笑ってくれなんて無茶振りにも程がある…。


 とは言え、帝国中に配布されるであろう写真に仏頂面(ぶっちょうづら)で写るって言うのが帝国関係者的にあまりよろしくないのは理解できるので、俺は頑張って口角を上げた。


「ちょっとケン、笑うの下手すぎないかい?不自然さしかないよ」


 そう言ったのはジンだった。


「いや、苦手なんだよ。普段笑おうと思って笑うことなんてないからな」


 茶化(ちゃか)すようなジンの言葉に俺はそう弁明した。


「一旦、その表情で撮ってみますね」


 記者はそう言って1枚写真を撮った。その写真はすぐさま現像される。


 ちなみに、俺達の写真を撮っているのは撮影機と呼ばれる魔法道具だ。原理は知らないが、撮った写真を紙に現像できる魔法道具だそうだ。なお、写真は1枚分しか保存できないそうで、撮影と現像はワンセットらしい。


 そんな撮影機から現像された写真を俺達は見る。


 うわ、俺の顔(ひど)過ぎ。もうちょっとまともに笑えていると思っていたのだが、この表情は不自然を通り越して最早(もはや)、恐怖だ。


 他のみんなは、と言うと全員上手く笑えている。素晴らしい写真写りだ。


 つか、ジンとかウェンディは良い笑顔だな。自然体過ぎる。まあ、カレンとアイリーンもそれなりに自然な表情ではあるのだが。


 何はともあれ、俺が酷過ぎるな。指名手配犯みたいな顔になってるぞ。


「ケン様は普段の表情で撮影しましょうか」


 現像した写真を見て、記者はそう言った。笑顔が下手くそって言われているようなものではあるが、これに関しては俺もそれが良いと思う。


「はい。それでお願いします。あ、アイリーン。アイリーンも俺と同じ感じで撮ってくれないか?」


「あたし?別に良いけど、なんであたしも?」


「いや、5人いて4人が笑顔なのに、1人だけ真顔っておかしいだろ?だから、1番キリッとした表情の似合うアイリーンも俺と同じ感じになってくれればな、と思ってな」


「なるほどね。良いよ、わかった」


 そんなわけで俺達は再度写真を撮影した。


「良いですね。非常に良い写真が撮れました」


 記者はそう言って俺達に写真を見せた。


 うん、さっきの写真の100万倍は良いな。俺達の個性的なものがしっかり写っている気がする。


 かくして、俺にとって苦難の写真撮影は終了したのであった。


―――


 さて、そんな苦行であるところの写真撮影を終えた俺達の元にジャストのタイミングでゴーレムの解析結果がやって来たので、俺はメアリーとのゴーレム売却の話を再開することにした。


 解析報告書によると、ゴーレムの身体は、硬魔水晶、炎魔水晶、吸魔水晶、蓄魔水晶で構成されていたようだった。


「なあ、カレン。ここに載ってる魔水晶ってわかったりするか?」


「ええと、そうですね。硬魔水晶は以前説明した通り硬化する魔水晶で、炎魔水晶は炎を出す魔水晶って事はわかるんですけど、この吸魔水晶と蓄魔水晶はわかりませんね」


「吸魔水晶は周囲の魔力を吸い取る魔水晶で、蓄魔水晶は魔力を保持する魔水晶ですよ、ケン」


 知らない魔水晶の情報に俺とカレンが戸惑っていると、メアリーが補足をしてくれた。


「なるほどな。ありがとう、メアリー。それで、このゴーレムの残骸はいくらくらいで買い取ってくれるんだ?」


「そうですね、これらの魔水晶は全て純度が極めて高く、量も多いですから、300万ブロンで買い取らせて頂こうと考えているのですが、如何でしょう?」


「な!?そんな高値で買い取ってくれるのか!?こっちとしては嬉しい限りだが」


 洞窟0.5個分の価値を持っているとは思わなかった。


「では、商談は成立と言うことで、今代金を用意いたしますわね。ところで、ケンはこのゴーレムについてどのくらい情報を持っているのですか?」


「いや、(ほとん)ど知らないな。洞窟内でたまたま遭遇(そうぐう)して倒しただけだから。でも、なんでだ?」


「解析を行った研究者(いわ)く、吸魔水晶を持ったゴーレムはありえないそうなのです。これほどの純度の吸魔水晶だと、周囲の大概の魔法は無効化してしまいますし、ゴーレム自身もその原動力である魔力の流れを乱されてしまいますから」


「なるほどな。確かに、俺達の魔法系は全部発動できなかったな。でも、そのゴーレムが動いていたのも事実だぞ」


「そうですか。その辺りの解析は研究者達に依頼するといたします」


「悪いな、力になれなくて」


「いえ、そんなお気になさらず。こんなにも多くの魔水晶を頂けただけで、計り知れないほどの功績ですから」


 この後も、そんな感じの会話をしばらくして、俺達は城を去った。

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