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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
14 セートの日常(?)
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14.6 魔水晶の眠る洞窟Ⅲ


 さて、洞窟へと再び潜った俺達はまずは拠点の確認をすることにした。


 とは言え、洞窟の深部に行くためには必ず通る道すがらにあるので、意識しなくても確認はできるが。


「ところで、カレン。魔法陣は描き終わったのか?」


「ええ、問題なく描き終わりましたよ。入り口には扉も設置しましたし、既に拠点として使うことはできます」


 拠点の中へと入った俺が辺りを見回しながら、言うとカレンはそう答えた。


「なるほど、ありがとう。ぱっと見た感じ問題もなさそうだし、鉱脈でも探すか」


 そんなわけで、拠点の確認という第1目標をあっさりと達成した俺達は第2目標である鉱脈の探索をすることにした。


―――


 イエロースライムを警戒しながら道を進むも先程戦闘があった地点も無事通過し、今は入り口から1.5km程の地点だ。


「それにしても、全然見つからないね」


 集中が切れたのか、退屈そうな声でジンはそう言った。


「ああ、確かにな。警戒している時には出てこないものだよな」


「あー、違う違う。魔水晶の話。魔水晶ってさ、オレ達に見えるように埋まっているの?そうじゃないなら、見つからなくない?」


「俺が聞いた話だと、鉱脈の端が壁面に突き出ているから、魔水晶が見えるように埋まっているらしいぞ。まあ、ハズレの洞窟だと、完全に外から見えないように埋まっているそうだが」


「じゃあ、この洞窟もハズレなんじゃないの?」


 ジンとそんな会話をしながら歩いている俺は視界の隅で黄色いものが動いているのを捉える。


 それはどうやらジンも同じようで俺が視線を向けた時には既に身構えていた。


「スライムだ!」


 俺がそう声を発すると俺とジンの後ろを歩いていた女子3人も速やかに戦闘体勢に入る。


 俺の声に反応したのは、仲間達だけではなかったようで、スライムもまた奥からぞろぞろと大量に現れた。


「私に任せてください。《斬り裂く竜巻 トルネード》」


 大量のスライムに俺が面を食らっている間に、カレンが一歩前に出て魔法を使う。


 発生した竜巻は、スライム達を引きずり込み、斬り裂きながら、進んでいった。


 竜巻の進行ルートから外れるスライムは処理できていないものの、先程までちまちまと1匹ずつスライムを倒していた俺からしてみれば、1度に大量のスライムが倒されていくその光景には声すら出なかった。


「良いなぁ、風の刃。オレも使いたいよ。あ!そうだ。アイリーンちゃん、魔法で風の剣作れたよね?」

どうやらジンは、スライムの酸によって消耗しない風の剣であれば、サクサクとスライムを討伐できると考えたようで、アイリーンに鉄ではなく、風の剣を作るように頼んだ。


「作れるけど、あたしが作った風の剣はあたし以外が持つと手が斬れるよ」


「んー、多分大丈夫かな。ね、ケン?」


「俺の魔術で治せってことか。わかったよ」


 カレンの魔力が消耗している今、いたずらに傷を増やすのはどうかと思ったが、その傷を俺が治せば問題はないな。


「まあ、大丈夫って言うならあたしは構わないけど。《創造する風の剣 ウインドソード》」


「ありがとう。じゃあ、早速…」


 作られた風の剣をジンは受け取る。


 直後、ジンの右手から血が噴き出し、辺りに飛び散った。


 ぜ、前言撤回。問題あり、つか、問題しかない。


「おいおい、ジン、大丈夫か!?」


「大丈夫大丈夫、見た目は派手だけど、浅い傷だから。それより、ケンの魔術なら、この流した血も元に戻るんだよね?」


「まあ、戻るが」


「そうかいそうかい。それなら何も問題はないね。せっかくスライム倒しても、貧血で倒れたら格好悪いからね」


 そう言ったかと思うと、ジンの姿は一瞬で消える。かと思えば、次々とスライムが倒されて行った。


 その様はカレンが先程使った魔法と遜色のないレベルだ。魔法を擬似的に再現できるってどんな身体能力だよ。


 そんなことを考えながら、ふとアイリーンの方を見ると、アイリーンは不安そうな表情をしていた。目を凝らして見ると、身体は(わず)かに震えている。


「アイリーン?どうしたんだ?大丈夫か?」


「あ、あたし、あんなに大きな怪我になるなんて思わなくて…」


 そう言ってアイリーンは自分の(ほお)についたジンの血に触れる。


 どうやら、自分の魔法で仲間を傷付けてしまったことに責任を感じてしまっているらしい。


 そう言えば、以前盗賊と戦った時に、盗賊の1人がアイリーンの作った炎の剣を持ったら、「熱っ」って言うぐらいで済んでたもんな。


 アイリーン的には手が斬られると言っても、あそこまで血が飛び散る程の怪我だとは思わなかったんだろう。


「大丈夫だ。アイリーンの責任じゃない。それに傷だって俺が元通り綺麗に治す」


「う、うん。そう、だよね。わかった…」


 そう言うアイリーンの表情はその声色と同様にいまいち()に落ちていない様子であった。


 俺も自分の魔術を頼りに、自分の身体を傷付けるような策をよく使うが、人がそれをやっている様やそれによって悲しんでいる人を見ると思うところがあるな。


 そう言えば、俺もカレンに、俺の身体を撃ち抜くように魔法を使う指示を出したことがあったが、その時のカレンも今のアイリーンみたいな気持ちになったのだろうか。


 いつか謝っておこう。


「おーい、ケン。終わったよ。全部倒した」


 俺が物思いにふけている間に、ジンは辺りのスライムを一掃していた。


 武器が消耗しなくなっただけでこんなにも違うものなのか。


 ジンの優秀さに若干引きながらも、ジンの方を見ると、右腕が真っ赤に染まっている。


「ちょ、それ、マズくないか!?」


「そうなんだよ。ちょっと頭がボーッとして来てる。それに飛び散ったスライムの粘液が身体に付いてヒリヒリ痛むんだよ」


 確かに、ジンの服は所々穴が空いていて、赤くなった皮膚が見えた。


「わ、わかった、今治す。《タイムバックワード》」


 俺の魔術によってジンの傷はみるみる塞がっていき、服に空いた穴も綺麗に消え去った。


「やっぱり、この魔術すごいね。オレがどんだけ怪我してもケンさえいれば大丈夫だね」


「馬鹿言うな。この魔術だって死んだ人を生き返らせることはできないんだ。なるべく怪我をしないように戦闘してくれよ」


「はいはい、わかってるって」


「それと、知っているとは思うが、この魔術はしばらく時間が経たないと同じ対象に使うことができないから、すぐにまたスライムが出てもさっきと同じ戦い方はするなよ。致命傷になっても治せないからな!」


「そんな念を押されなくてもわかってるから。それよりさ、ちょっと来てよ。向こうに面白いものがあったんだよ」


 俺の忠告を軽く流しながら、ジンは指をさした。


 ジンに案内されるがままに少し奥へと進むと、無色透明の水晶が地面から生えていた。しかも、かなりの大きさだ。


「これは…魔水晶か?」


「だよね、魔水晶だよね!さっきオレがスライムを倒している時にチラッと見えてさ、絶対魔水晶だと思ったんだよ!」


 スライムに続いて魔水晶も見つけることができるなんてな。きっと辺りを掘ればもっと魔水晶を見つけることができるだろうし、第2の目標である魔水晶の鉱脈発見も達成だな。


 とりあえず、俺達は見つけた魔水晶に目印をつけて、今日は帰ることとした。

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