14.2 第7騎士団第4部隊
俺が目を覚ましてから早1週間が経とうとしている。
街の復興もあっという間に進み、建物の装飾などのディテールを除けば、以前と何ら変わりない街並みになっている。
今回、一連の復興作業を見ていたが、魔法が本当に優秀だ。きっと魔法がなければ復興には何倍もの時間がかかるだろう。
そんなわけで、復興作業はだんだんと終わりを迎えてきているのだが、復興作業が進むにつれ、激化する問題があった。
そう、被害住民によるデモだ。
生活が安定感を取り戻すことでデモ団体の行動はだんだんと激しくなっていった。今では、ギルドの冒険者と知られると追いかけ回されるなんて事態まで誘発しているため、俺達冒険者は気軽にギルドに近付くことすらできなくなっていた。
さらに、デモに参加する住民は日に日に増えている。これは復興作業が終わりに向かうにつれて被害額や修復にかかった費用などが明確になってきたのが原因の一端を担っていると考えられる。
と、言うのも復興にかかった費用は一部国や街が負担するものの大部分は住民による支払いなのだ。
つまり、住民達はギルドに非を認めさせれば、ギルドからの損害賠償によってその支払額を減らすことができる。したがって、支払いを渋る住民も現在ではデモ団体の一員になっているのだ。
そんなわけで今、街は空前のデモ活動が実施中なのである。
一方、復興作業において出る幕が殆どなく、ギルドの仕事すらできなくなった俺はと言うと、最近、カチュウさんからの翻訳作業を進めている。本1冊の内容を手書きで書き写すようなこの作業は難しくこそないものの、非常に面倒だ。
なんて文句を垂れながら宿屋で作業を続けている俺の耳に、外から何やら声が聞こえてきた。
気になった俺が宿屋を出て、騒ぎが起こっている方まで歩いて行くと、「怠惰」と戦った広場に馬に乗った騎士が10人ほどいた。そして、その対面にはセートの街の長がいた。
しばらくして騒めきが落ち着いてくると、騎士のうちの1人がこう言った。
「私はエーシャア王国第7騎士団第4部隊隊長ザック・ノードリーだ。此度は街を襲ったキメラの調査、及びギルドと住民間の騒動の仲裁のために訪れた次第だ」
この後もザック隊長の話は続いた。
その話をまとめると、ギルド及び冒険者に対する事情聴取はまた後日行い、今日はギルドと住民間の騒動についての裁判をこの広場で実施するそうだ。なんでも、このデモ騒動の方をなるべく早くに終結させたいらしい。
そんなわけで間もなく裁判は始まる。
ちょうど良い機会なので、王国の裁判制度について説明しておこう(カレンから教えてもらったことをそのまま話すだけだが)。
この国において、法律は存在しない。
正しく言うのであれば、法律は王や貴族にのみ適応される。まあ、それは汚職や賄賂の禁止に対するルールのようなものなので、俗に言うような法律とは多少異なるわけだが、今回は置いておこう。
そんなわけで、法律がないこの国において物事の善悪の判断は犯罪者を捉える側の主観によって決定される。具代的に言うのであれば、この辺の辺境の街や村ではそれぞれ配属された兵士がその判断をしているのだ。
そのため、殺人や窃盗などの明確な悪質行為であれば問題なく処理されるわけだが、一方で今回のようなどちらが悪いのかの判断が人によって分かれるような案件に対しては兵士達は判断ができない。と言うよりは、兵士達は判断してはいけない規則になっている。
では、そう言った民事訴訟のような案件は誰が善悪や罰を決定するのか。答えは、第7騎士団である。王国騎士団は8つの騎士団があり、それぞれが各役割を果たしているのだが、第7騎士団はそう言った兵士達では判断ができない案件の処理を行っている。
実際の処理自体はそれぞれの裁判を担当する部隊長に一任されているわけだが、双方の主張を聞く、判例に基づいた判決を出すと言う根本的なところはあらかじめ決まっている。
とは言え、裏を返せば、それしか決まっていないわけで、どんな順序で裁判を進めるかや、何にどれくらいの時間を使うのかなどは担当する部隊長の一存で全てが決まる。
まあ、今回の裁判では、ギルド・冒険者側の代表者と住民側の代表者が証言し、ザック隊長が判決を下すということだけは既に決まっているわけだ。
そして、この裁判はギルド側が勝てば復興費用は住民が負担、住民側が勝てば復興費用はギルドが負担となるだろう。しかし、ザック隊長の判決次第では最悪の場合、俺達冒険者までも復興費用の負担することになるかもしれない。
街を救ったのに金払わないといけないってどういうことだよ。
どちらにせよ、裁判に負ければ今回のキメラ討伐の報酬がギルドから払われることはないだろう。
骨折り損になることと、私欲のためデモに参加している住人がいること、この2つがどうしても腑に落ちなかった俺はギルドへと向かった。




