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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
12 水晶の街・セート
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12.7 歴史研究家の男Ⅱ


 俺達が和室で大人しく待っていると、カチュウさんは両手一杯に書物を抱えて戻って来た。


「待たせてすまない。ヒイラギ君に是非この書物を読んで欲しくてな」


「これは何ですか?」


「私が研究している書物なのだが、解読に手間取っていてな。良かったら、内容を教えてくれないか?」


「はあ、まあ、良いですけど」


「ありがとう、助かる」


 ゲオルクの情報の恩返しと思えば、断るわけにはいかない。ただ、音読するだけで良いなら楽だしな。


 そう思いながら俺は手始めに簡単に読みきれそうな紙切れを手に取って、音読し始めた。


「えっと、『勇者の持つ剣は名を【ゴッズ インターベンション】と言った。その剣は天を裂き、地を割ることも容易く、剰え特殊な能力をも備えていた。剣の持つ特殊な能力とは』。ここから下が千切れていて読むことができませんね。有益な情報はないようですし、ハズレですかね」


「いや、充分だ。本来であればこの文章の解析には1年近くかかってしまう。その内容をこんなにも短時間で知れたのだ。それだけで充分有益だ」


「そうですか?ありがとうございます」


「では、次だが…」


 そう言ってカチュウさんは持ってきた本を手に取る。


 ちょっと待って、これ全部読む流れなのか?


 何時間かかるんだよ…。


「すいません、カチュウさん。今日はもう時間も時間なので、続きは次の機会にしていただけると嬉しいのですが」


 俺はお得意のお茶濁しでこの場から逃げようとする。


「ん?そうかね?では、最後にこの文字が読めるかどうかだけ教えてもらえないだろうか?」


 そう言って、カチュウさんは別の本を手にとり、俺に手渡す。


 その本を開くとそこにはアルファベットが書かれていた。


「カチュウさん、これは?」


「それはエウロメ語のエウロメ文字で書かれた本だ。読めるかね?」


 構文を見るに、英語であることはほぼ間違いないだろうが、俺は英語が得意なわけじゃないんだよな。


 一般的な文章であれば読み書きはできるが、少し専門的な単語や構文、ネイティブなものになるともうお手上げだ。学校の授業+αくらいの知識だからな。辞書がない現状だと、知識量はもう少し減るかも知れない。


「ええ、読めるか読めないかで言えば、読むことはできるのですが、ヤポン語ほど得意な言語ではないので、期待に応えられるような結果を出すことは難しいです」


「そうか、まあ、できないことは仕方がない。私もできないからこうして君に頼んでいるわけだからな」


「お力になれず申し訳ないです。しばらくはヤポン語の書物の解読を手伝うことができればと思います」


「そう言ってもらえると助かる。そこで提案なのだが、この書物と紙と筆記用具を貸すので、解読した文章を書いておいてくれないか?そうすれば、わざわざ私の家に通わなくても解読の作業ができると思うのだが」


「お借りしても良いんですか?それらは貴重な書物ではないのですか?」


「君が解読してくれれば、歴史研究が飛躍的に発展するのだ。莫大な利益のためならこの程度の損失の危険性などお釣りがくるほどだよ」


「わかりました。では、諸々の機材はお借りします」


 俺達の話がまとまりかけた丁度その時、異変は起こった。


 俺達が話している広い和室、その空間に漆黒の穴が出現した。

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