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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
2 ギルドでの初仕事
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2.4 帰還


 街に着くなり俺達はギルドの受付へ依頼完了の報告に向かった。


「すいません。依頼完了の報告をしたいんですけど」


「おかえりなさいませ、ヒイラギ・ケン様。では、ケン様と同行者のカレン様のギルドカードをご提出いただけますか?」


 俺とカレンはギルドカードを受付に提出し、カレンはついでにキメラの角を受付の人に渡した。


「これはキメラの角ですね。それでは依頼の報酬の精算と同時にキメラの角の報酬も精算いたしますね。では、しばらくお待ちくださいませ。手続きが完了し次第、お呼びしますのでギルド内でお待ちください」


―――


 受付の奥が気になって覗き込んでみると、職員の方がギルドカードからシロップベアーを取り出していた。うわあ、グロい。


 少し待つと受付の人に呼び出された。


「お待たせしました。依頼の報酬の1万8000ブロンとキメラの報酬の6万4000ブロンです。ポイントは1人あたり154ポイントです。御二方とも100ポイントを超えましたので、階級が1つ上の第2階級である赤階級に昇進いたしました。今回の精算の結果は以上です」


―――


 いやー、キメラの討伐分がすごい報酬だったな。カレン曰く、今回のキメラの角は記録されている中でも結構大きめだったらしい。強さとしては第3階級である橙階級の冒険者が6人がかりでようやく倒せるレベルらしい。


「ケンさん、本当に助かりましたよ。冒険者活動が停止にならないようにするために協力して貰ったはずが、まさか赤階級にまでなれるなんて。本当にありがとうございます」


「いやいや、俺の方も助かったよ。もしカレンが良かったらなんだけどさ、これからも一緒に冒険者活動をして貰えないか?」


「もちろんです!ケンさんが言い出さなければ今頃私からパーティ結成をお願いしていたところです」


 俺達のパーティ結成祝いにどこかで夕飯を食べようという話になった。


 しかし、夕飯にはまだ早かったので、とりあえず今夜の宿とるべく半日ぶりにケビンさん達が経営する宿屋「トワイライト」に向かった。カレンもトワイライトで部屋をとるらしい。確かに同じパーティなんだから同じ宿屋の方が都合が良いか。


―――


 トワイライトを出て半日しか経っていないのに、この外観を見ると感慨深いものがある。何とも言えない安心感だ。


 トワイライトの中に入るとフロントにはマイちゃんがいた。


「おかえり、ケン!待ってたよ!ギルドの仕事はどうだったの?って、その美人さん誰…?もしかして彼女さん…?ケンはギルドに行って彼女をつくってきたの…?」


「ち、違うよ!彼女はカレン、俺の冒険者仲間だよ」


「なんだぁ!ビックリしたよ!あ、カレンさん、私はマイ・マクスウェル、15歳!よろしくお願いします!」


「ミヤモト・カレンです。マイさんと同じ15歳です。こちらこそよろしくお願いします」


「同い年だ!じゃあ、お互いに敬語じゃなくても良いよね!」


「そうですね」


「それで冒険者の仕事はどうだったの、ケン!?」


「想像以上稼げたよ。ところでマイちゃん、俺が使ってた部屋ってまだ空いてるかな?」


「空いてるよ!っていうか、とっておいてあげたよ!ケンが帰ってくるって知ってたからね!」


「ありがとう、マイちゃん。じゃあ、その部屋で60泊って出来るかな?」


「ろ、60泊!出来るけど、前払いだよ!」


「はい、2万4000ブロン」


「そんなに簡単に大金を払えるの!?今日1日でそんなに稼いだの!?」


「まあ、そうだよ。カレンも部屋とるんだよな?」


「そうですね。マイさん、私も60泊でお願いできますか?これ2万4000ブロンです」


「わわわ、冒険者ってすごい!私も冒険者になりたいな!あ!これ、部屋の鍵ね!カレンの部屋はケンの向かいだから、ケンに付いていけばわかると思うよ!」


「ありがとうございます」


―――


 俺とカレンは一度それぞれの部屋に向かうことにした。


 祝いの宴はトワイライトの食堂兼酒場ですることになった。宴と言っても飯食うだけだが。


 そして、1時間後。夕飯には少し早いが、混み始める前に食堂兼酒場に集まった。適当に注文しようとするとユイさんがやってきた。


「あら~、ケンくんじゃない~。隣にいるのは彼女さんかしら~?」


「違いますよ、ユイさん。冒険者仲間のカレンです」


「ミヤモト・カレンです。よろしくお願いします」


「ユイ・マクスウェルです~、よろしくお願いね~。あ、そうそう。私もマイに勧められて『ケンくん』って呼ぶことにしたの~」


「はい、親しくなれた感じで嬉しいです」


 ユイさんに注文をした後、しばらく待っていると飲み物と料理が運ばれてきた。シンプルな晩飯は宿代に含まれるのだが、この注文は宿代に含まれていないので別料金だ。まあ、今日は稼いだし気にしなくても良いだろう。


「それでは今日の勝利とパーティ結成を祝して、乾杯!」


 数時間、食事と話を楽しんだのちにお開きとなった。


―――


 そして、夜。俺が自室でゆっくりしているとマイちゃんが入ってきた。


「ケン!明日は暇!?私と買い物に行こ!」


「いいけど、仕事は大丈夫なのか?」


「うん、お昼の時間ある時に行くから大丈夫。それに備品の買い出しも兼ねてるからね!一応、お母さんに許可は貰ったし!」


「わかったよ、じゃあ明日ね」


「うん!約束ね!」


 上機嫌なマイちゃんは部屋を出ていった。


 今日は疲れたので早く寝ることにした。明日はマイちゃんとの約束もあるし、ギルドの仕事は休みにしよう。


===


 しかし、俺は約束を果たすことができなかった。


 端的に言うと4日間ほど高熱で寝込んだのである。熱が下がった日に看護してくれたカレンに話を聞いた。


 カレンによると、熱は1日ごとに周期的に上がったり下がったりを繰り返していたらしい。


 俺にその時の記憶はほとんどなかったが、高熱の時に過去の記憶で思い出した事がある。


 元の世界にいた時も今回のように寝込んでいたという事だ。特にイベントがあった翌日に熱を出していたのだが、次の日には何事もなかったように治っていたはずだ。


―――


 例によって昨日までの高熱が嘘のように元気なので、心配をかけたカレンとマクスウェルさん一家の人達に報告してまわった。


 今日は念のために仕事を休みにしてカレンとマイちゃんと街で買い物をすることにした。


 埋め合わせをすると言った時は上機嫌だったマイちゃんが、カレンも行くと伝えた時に少し不機嫌そうな顔になったのは不思議だったが、約束を果たせなかったお詫びにとネックレスを買って渡したら機嫌が良くなっていた。


 別に高いネックレスでもなかったんだが想像以上に喜んでくれた。前々から欲しかったのだろうか?


 その後、2時間ほど買い物をして宿屋へと帰った。夜に部屋のベットに寝ころび、「今日の買い物で多くの金を使ったから、明日はギルドの仕事をしないとな」とか考えていたら、いつの間にか眠ってしまった。

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