12.4 犇めく土塊人形Ⅲ
俺達5人と自動修復するゴーレムとの戦闘は始まった。
戦闘が始まったと言っても、ゴーレムの動きは単調かつ愚鈍だ。戦闘と言うよりは、ゴーレムの動きに気を払いつつ、倒し方を模索している感じだ。
「ケン、どうするの?」
「とりあえず、自動修復の仕組みを知るべきだな。ゴーレムの攻撃に注意しろよ」
「こんなの当たらないって」
「そうやって油断していると危ないぞ。動作の前に一拍置いているから遅いだけで、攻撃自体は当たれば最悪致命傷になるからな」
「はいはい。とりあえず、適当に壊すね」
ジンは、本当にわかっているかどうか微妙な返事をしたかと思えば、ゴーレムの四肢、その付け根を破壊した。
しかし、身体から離れたそれらは1度砂のようになって形を失ったかと思うと、破壊された箇所へとさらさらと移動し、元の形へと再構築されていった。
「ジン、核を狙ってくれ。核はゴーレムにとっての心臓だ。その核が破壊されれば、自動修復は止まるだろう」
「でも、場所がわからないんだよね」
「私に任せてください。《貫く無数の風槍 ハニカム》」
カレンが魔法を使うと、ゴーレムの身体は魔法名通り蜂の巣になった。
すると、身体に空いた穴から、直径3cm程の土か石のような球体がポロリと転がり落ちた。それも1つではない複数個だ。
その球体も他の身体のパーツと同様に1度砂になったかと思うと、ゴーレムの身体へと戻っていった。蜂の巣になっていた身体も元に戻る。
「俺思ったんだが、こいつの核は複数個あるんじゃないか?」
「どう言うことですか?」
「きっと、あの土の球体みたいなのが核で、それぞれの核がその核以外の身体の全てを修復するんじゃないか?そうすれば、全ての核が破壊されない限り修復を続けられるしな」
「ゴーレムの自動修復が核によって行われているのは私もなんとなく予測していましたが、あの土の球体が核なんですか?他のゴーレムは半透明な球体でしたけど」
「他のゴーレムと同様の核を使うと、複数の核で互いに修復し合う仕組みが使えないんじゃないか?」
「なるほど、詳細は未だわからないままですが、何となくは理解できました」
「まあ何にせよ、俺達はゴーレム発明家じゃないからな、正解はわからない。でも、物は試しで全ての核を同時に壊してみるのはありかもな」
「ちょっと待って、ケン」
「ん?どうした、アイリーン」
「ケン達の話を完全に理解した訳じゃないけどさ、何個あるかわからない核を全て同時に破壊するなんて無理じゃない?少なくともあたしには良い方法は浮かばないよ、ケンには何か考えがあるの?」
「それはだな…」
「それは?」
俺の言葉の続きを固唾を呑んで待つアイリーン。その期待に応えるように俺は口を開いた。ただ、その内容はアイリーンが求めたものではなかっただろうが。
「カレン、なんか良い魔法ない?」
「え!?私ですか!?」
突然話を振られたカレンは戸惑いを見せる。
「いや、物理的な解決策が思い浮かばないから、魔法に頼るしかなくてな」
「そう言われても、私も思いつかないですよ。私が使える全ての魔法について完璧に把握しているわけじゃないですし。そもそも、このゴーレムがなんで修復できているのかさえわかっていないので、どんな魔法が有効かなんて判断できませんよ」
「確かにな」
いや、待てよ。
このゴーレム確かになんで修復できているんだ?
と言うか、この機械的な動きも気になるしな。
元の世界ならそう言うプログラムを組んであるからって納得できるんだが、この世界にプログラムはないだろうしな。
プログラムのような魔法がかけてあるのか?
あ、そう言えば「オーダー」って言う刻印式魔法があったな。あれの挙動ってちょっとプログラム的なところあるよな。
このゴーレムにも「オーダー」がかかっているのか?
まあ、あの魔法は1回使用すると効果切れるから、「オーダー」に似た違う魔法、もしくは魔術だろうが、なんにせよ、そう言ったものが使われているのだろう。
「ケンさん?どうしたんですか、いきなり黙りこんでしまいましたけど」
「壊せるかも知れないな。紙と鉛筆があればだけど」
「え?紙と鉛筆ですか?魔法を記録するための手帳で良いならありますけど」
「丁度良いからそれと書くものくれよ。確か手帳の方は予備が何冊かあったよな」
俺はカレンから手帳と鉛筆を受け取り、次のように記してそのページを破った。
***
オーダー:
全ての核の同時破壊:
***
紙に文字を書き終えた俺はゴーレムの後ろに回って紙を押し付け、魔力を流した。
しかし、ゴーレムが白く光ることはなかった。つまり、オーダーは発動していない。
「ケン、どうなの?」
何も変化していないゴーレムの様子を見て、ジンが俺に問いかける。
「すまん、ダメだった」
ダメか。まだオーダーの魔法の発動基準がいまいちわからないんだよな。
そもそもこのゴーレムにオーダーの魔法が効かない可能性もあるのだが、もう1回別の記載で試してみるか。
「え?じゃあ、どうするの?」
「ちょっと手を変えて、もう1回試すからみんなで少し時間を稼いでてくれ」
「わかった」
俺はゴーレムから距離を取り、再度書き直す。
***
オーダー:
条件;修復が始まる直前;
制限;30分間;
修復保留:
***
手帳からページを破った俺はジン達に気を取られているゴーレムにもう1度紙を押し付けて魔力を流した。
ゴーレムがうっすらと白く発光する。
成功だ!発動したぞ。
「カレン、こいつを蜂の巣にしてみてくれ!」
「わかりました。《貫く無数の風槍 ハニカム》」
ゴーレムの身体は穴だらけだ。肩や膝にも穴が空いたお陰でゴーレムは動くことができなくなる。
しかし、自動修復は始まらなかった。
「よし、成功だ。こいつの修復はしばらくは起こらない。今のうちにみんなでこいつの核をバラバラに砕くぞ」
俺達はゴーレムの身体をバラバラに砕く作業を始めた。
なんか今日は作業ばかりしている気がする。
「ねえ、ケン」
「ん?」
「さっき何したの?」
メイスを使ってゴーレムの身体を砂に変える作業に飽きたのか、手を動かしながらウェンディは俺に問う。
「オーダーって言う無生物に行動を指示できる刻印式魔法を使ってしばらくの間ゴーレムの修復を保留させたんだよ」
「へえ。でも、なんでしばらくなの?永遠に止めておけば良くない?」
「それは保留の時間を無限にするってことか?それとも修復させないってことか?」
「どっちでも良いけど」
「結局、多分どっちも無理なんだよ。保留の時間を無限にすると、俺の消費魔力が無限になるから発動できないし、修復させない方だと、元々ゴーレムに付与されているであろう修復の命令と矛盾が発生するからどんな挙動をとるかわからないし」
「ふーん、なるほどね(?)。わかったよ」
あ、絶対わかってないな、これ。まあ、元々そんなに興味がなかったって言うのもあると思うけど、俺の話の持っていきかたが悪かった節はあるんだが。
その後もゴーレムの身体を砂になるまで砕く作業は続き、破壊から30分経っても修復が始まらなかったので、破壊完了ということにした。
今日はもう疲れたので、旅はまた明日から始めるとしよう。
それと、街の長が今回の1件を最寄りのギルドに話してくれたらしく、ギルドは臨時依頼として処理してくれるらしい。俺達は集めた核を納品して、依頼は完了となった。
ちなみに、後日談にはなるが、あの地下空間はゴーレム用に魔力を蓄積させるための施設だったらしい。充電器ならぬ充魔室と言ったところか。それを当時の人が墓だと勘違いして遺体とともにゴーレムを入れてしまったらしい。
動力のない地下空間は即座にゴーレムに魔力を蓄積させて動かしてしまうようなことはなかったものの、長い年月の中で周囲の微弱な魔力をゴーレムに蓄積させてしまい、今回の1件を招いてしまったそうだ。
全く迷惑な奴もいたもんだ。
読者の皆様、お疲れ様です。作者です。
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これからも読者の皆様に楽しんでいただけるように私自身日々精進していきたいと思います。
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