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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
12 水晶の街・セート
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12.3 犇めく土塊人形Ⅱ


 所変わって、宿屋の一室、俺の部屋だ。


 今、この部屋にはパーティの5人全員が揃っている。


 最大で5000体になるゴーレム軍団を壊滅させるための作戦会議を行うためだ。


「さて、あのゴーレム達をどうやって壊滅しようか」


「オレ達で壊滅しようにもあの数が厄介だよね。オレでも全部壊すのは難しいよ」


「そうなのか?ジンなら一瞬で(さば)けそうな気もしていたが」


「まあ、一瞬で50体ぐらい壊すのは難しくないよ。でも、5000体倒すとなると、体力がもたないと思う。やっぱり数が多いって何かと面倒だよね」


「ああ、1体1体はそんなに強くはないが、囲まれたら俺は死ねる自信がある。一掃できる手段があれば良いんだが。カレン、何か良い魔法はあるか?」


「難しいですね。私の使える最大攻撃範囲の魔法でも、好き勝手動かれていたら一度に20体を壊すのが精一杯です」


「『グランドウォール』みたいに下から壁を出せるような魔法でも問題ないぞ」


「ケンさん、それは意味なくないですか?」


「いや、地下室で戦闘するなら、天井に押し付けて潰すのも有効だろ」


「あー、確かにそうですね。広範囲の地面を持ち上げるなら『アップリフト』と言う魔法もありますよ。これも帝国の研究所で開発された魔法なので魔力に応じて持ち上げる高さや範囲を拡張できますから、私の魔力を最大限使えば地下のすべての範囲を(まかな)えると思います」


「いいね。その魔法で押し潰そう」


「でも、魔力の大部分を高さや範囲に回すので、持ち上げる力は多少下がってしまうとと思いますよ。手足は砕けても、全てのゴーレムの核まで潰し切ることができるかどうか…」


「なるほど。まあ、最悪俺とジンとアイリーンの前衛組で残党狩りすればいけるだろう」


「わかりました。それでも、魔法による援護はできなくなると思います」


「そうだな。魔力を使い切ってしまうもんな。よし、とりあえず、作戦内容を整理するぞ。まずカレンが魔法で地下室の全てを押しつぶした後、カレンを避難させる。魔法の効果が切れたら、前衛3人組で残党や残骸(ざんがい)の処理をして、ウェンディは安全なところで俺達を支援する。って感じで良いか?」


「そうだね。わたしは特に意見はないよ」


「うん。オレもだよ」


「よし、みんなからも意見はなさそうだし、この作戦で行こう」


 その後、各人は自室へと戻り、準備を整えて翌日に備えた。


―――


 そして、朝。


 日が昇って間も無く、俺達はゴーレム達が(ひし)めいている墓へとやってきた。


「早速だが、作戦を実行する。アイリーンは3人分のメイスを作っておいて貰えるか?」


「わかった。今、作るよ」


「じゃあ、カレンはゴーレム達を潰しに行こうか」


「はい。ケンさん、ちょっと思ったんですけど、実際に目で見ないことには広さや高さなどの詳細の情報

がわからなくて…」


「そうだな。まあ、暗いとは思うが、使う直前に光系の魔法を使えば良いんじゃないか?」


「でも、それだと2つの魔法を使っている間に、ゴーレムがこっちに来てしまうと思うんですけど」


「ああ、確かにな。それなら、階段をおりて全体が見渡せるような場所に着いた時に風魔法の壁を作れば良いんじゃないか?空気の壁なら光の魔法は貫通するし、ゴーレム達が来ても『アップリフト』の魔法を使うまでの時間稼ぎにはなるだろう」


「そうですね。そうしましょう」


 具体的な作戦が決まったところで、ゴーレム達を押し潰すべく、カレンは大きな墓の内部へと続く階段に向かった。アイリーンから鉄のメイスを受け取った俺も付いていく。


 カレンはライトスピアを飛ばして前方を照らしながら先へと進む。どうやらここには上がって来ていないらしい。昨日倒した奴が例外的に上がって来ていただけのようだ。


 その後も特にゴーレムとの接触はなく、階段の終わりが見える。


 カレンは階段とゴーレム達がいる空間を隔てるように風の壁を作る。


 そして、階段を降りきると、光の矢を飛ばして広さを確認した。


 すると、その光の矢に反応したゴーレム達は俺達の方を見る。


 多数のゴーレムの首が同時にこちらを見る様は少しばかり恐怖を覚えるほどの迫力があった。


 俺達の姿を確認したゴーレム達は俺達の方へと歩き始める。これもまた寸分違わず揃っていた。


 お、ゴーレムの馬に乗っているゴーレムもいるのか、すごいな。


「《盛り上がる大地 アップリフト》」


 カレンが魔法を使うとゴーレム達は地面とともに押し上げられた。


 姿は見えないが、バキバキと言う音が聞こえてくる。


「よし、成功だ。流石だ、カレン。じゃあ、行こうか」


 俺がカレンの方を見ると、カレンはすでにフラフラだった。


 歩けるくらいには魔力を残すと言っていたのに、予想よりも広かったのか?


 俺はカレンに肩を貸しながら、階段を上って地上へと戻った。


「お、戻ってきたね。どうだったんだい?」


「ああ、今のところ順調だ」


「それは良かった。オレ達は魔法の効果が切れるまでは待機ってことだね」


「ああ、そうだ」


 せっかくの機会なので、魔法について説明しよう。


 魔法を使用する場合、魔力は2つのタイミングでのみ使用される。


 1つは魔法を発動時。


 火を起こしたり、地面を隆起させたり、そう言ったタイミングで魔力が使用される。


 もう1つは魔法の効果を延長させる時。


 これは無意識のうちに処理されてしまうため実感はないが、魔法は一定時間ごとに魔法の効果を延長するかどうかのチェックが入る。このチェックの時に、術者に延長の意思があれば、魔力が追加で消費されて効果が延長される。


 魔法効果の延長は存在する魔法と存在しない魔法があるのだが、傾向として物体を生み出すような魔法には存在することが多い。


 例えば、アイリーンの使う魔法で武器を生み出す魔法なんかが良い例だ。


 今回カレンが使った魔法、「アップリフト」も魔力の追加消費で効果が延長できる魔法ではあるが、当然カレンは延長を望んでいないので間も無く隆起した地面も元に戻るだろう。


―――


 数分後、カレンを除いた俺達4人は当初の作戦通り地下空間に向かった。


 カレンの魔法で破壊することができなかったゴーレムを破壊するためだ。


「ケン、暗いんだけど。これじゃあオレでも時間かかるよ」


「そうだな。このバラバラになったゴーレムの山の中に動けるゴーレムが隠れていて、奇襲を受けたら危ないな」


「ケン。あたし炎とか光の剣作れるよ。あたししか持てないけど」


「なら、光の短剣何本か作って、辺りを照らすようにその辺に突き刺しといてくれよ」


「うん、わかった」


 アイリーンの光の短剣を照明代わりに周囲を見回すと、ゴーレムの(ほとん)どはバラバラになっていて動くことすらできなくなっていた。


「ケン、これならオレ1人でも残ったゴーレム壊せるよ」


「ああ、そうだな。俺とアイリーンは核拾いでもしておくか。無いとは思うが、核を放置したせいで、バラバラになったゴーレム達が組み上がって動き出したりなんかしたら困るしな」


「うん、わかった」


 俺達はそれぞれの仕事を淡々とこなしていった。


―――


 そして、数十分が経過した。


 核の中には粉々に砕け散ったものもあったので、全て回収できたわけでは無いが、およそ4700個程度の核を回収することができた。核は琥珀のような物質でできた球体で、直径は3cm程ではあるものの、5000個近くあるため相当嵩張(かさば)った。


 こんな空気が悪く、薄暗い空間で長時間作業するのは本当に気が滅入った。


 途中からジンとウェンディ、それに魔力が回復したカレンも核拾いをしていたが、それでも数が多過ぎだ。


「さて、無事に核回収も終わったことだし、戻るとするか」


「ケン、これは良いの?」


 ジンが指す方を見ると、そこには見るも無惨な様となった石室があった。石室と言っても巨大な石版を5個組み合わせせて出来ただけの立方体のようなものであったのだが、今となってはそれが崩れてしまっている。


「まあ、俺達にどうすることもできないし、一応ゴーレムがいないかだけ確認して、街の人に報告しよう」


 俺がそう言うと、ジンは崩れた元石室の周囲を確認し始める。


 すると、突如陰から刃が飛び出した。


 されど、相手はジンだ。不意打ちを避けるくらい造作もない。


「おっと、危ない危ない。どうやら、確認して良かったようだね。まだいたよ、生き残りが」


 陰から出てきたのは甲冑(かっちゅう)(まと)ったような見た目のゴーレムだった。まあ、武器も防具も土製だから、他のゴーレムと性能は変わらないとは思うが。


「ああ、そうだな。少し強そうな見た目だな」


「まあ、関係ないけどね」


 そう言ったかと思うと、ジンの姿が消える。


 ゴーレムの方に視線を移すと、ジンのメイスはゴーレムの身体に当たり、ゴーレムの右腕は首の右側から右脇腹を巻き込んで大きく(えぐ)れていた。


 はい、終わり。


 そう思った俺であったが、そのゴーレムは他のゴーレムとは違う挙動を見せていた。


「ジン!離れろ!」


 俺の呼びかけにジンは一瞬で俺のところに戻ってくる。


 ジンに破壊されたはずのゴーレムの身体はみるみると元に戻っていった。


「せっかく壊したのに元通りだね」


「ああ、やはり見た目が違うだけはあるな」


 ジンの言葉に俺は答える。


「どうするんだい、ケン?」


「カレン!壊しても修復するゴーレムのこと、何か知らないか?」


「聞いたこともないです」


「そうか。じゃあ、一旦引こう。こんな薄暗いところで戦えないからな」


 俺達はゴーレムに背を向けて階段を駆け上がる。


 ドスドスと言う足音から察するに、ゴーレムも付いてきているようだ。


 地下から脱出した俺達が階段を注視していると、案の定ゴーレムが出て来た。


 さて、どうやって倒そうか。

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