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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
12 水晶の街・セート
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12.2 犇めく土塊人形


 俺達が王都を出発して、早5日、いや、6日が経とうとしていた。


 だんだんと日も落ちて来たので、今日は次の街、トウコウで夜を明かそうと考えていた。


 このトウコウはあまり大きな街ではないのだが、ゴーレム発明家の墓があることで有名だ。


 なぜ、たかが墓がそんなに有名なのか、それはその墓の大きさと内容物に関係がある。


 その墓はその発明家が生前残した場所らしく、人間が6000人程度入ることができるほど広い地下空間だ。彼の死後、その中央に石室が作られ、彼の遺体はその中に安置された。そして、余った空間には彼が未完成のまま残した、動くことのない5000体のゴーレムが入れられた。


 ゴーレムに囲まれながら永遠に眠るのはどうなんだろうか?とも思ったが、当時の彼を知る人がそうしたのだから、赤の他人の俺がどうこういう話ではないな。


 ちょうど良い機会なので、先程から連呼しているゴーレムとは何か、その説明(カレン談)をしようと思う。


 この世界のゴーレムとは無機物で作られた身体とそれを制御する核を持った生命体の総称で、主なゴーレムは泥、土、ないしは岩の身体を持っているとのことだ。


 多くの人々が亡くなった炭鉱や土砂崩れ後で(まれ)に自然発生することが確認されているらしい。一応、人間の手でも作れないことはないが、ゴーレム生成の詳しいメカニズムはわかっておらず、失敗と成功を繰り返しているそうだ。


 さて、こう説明してきたわけだが、トウコウの街のゴーレムは他とは多少勝手が違う。


 性能にそこまで影響を及ぼすほどの差異ではないのだが、トウコウの街のゴーレムは作りが緻密なのである。


 普通のゴーレムは頭ドーン、身体ドーン、手足ドーンと適当な(かたまり)をくっつけているだけに過ぎない作りになっているのに対し、この街のゴーレムは人形と同様にそれぞれのパーツや接合部が緻密に作られている。


 そのようなゴーレム達は、地下室に5000体がぎっしりと整列させられているわけだが、精密に作られていることも相まって、その様子はさながら中国の兵馬俑坑のようなのであろうと、俺は予想している。


―――


 そんなわけで、俺達一行は、トウコウの街に着くなり、その墓の様子を見ようという話になった。


 街の外れにあるその墓はそこまで距離が離れているわけではなく、街からも墓の地上部分、一辺30mはあるだろうという立方体の大岩が見えていた。


 その大岩の下の部分が地下へと続く通路および階段になっているとのことだ。


 てか、あの岩、どうやって運んだんだ?


 そんな疑問を持ちながら俺がみんなと墓へと続く荒野を歩いていると、人が倒れていた。その人の脇腹と足からは血がドバドバと流れていた。


「大丈夫ですか!?」


 俺はその人に近付こうとする。


「待って、ケン。誰かいる」


 ジンの呼び止めに倒れている人の奥の方に目を向ける。


 今はもう逢魔(おうま)が時であるため遠方はほぼ見えないが、目を凝らして見てみると、うっすらと剣を持った人の姿が確認できた。


「ジン、任せて良いか?俺はあの人を助ける」


「もちろん、良いよ」


 俺は倒れた人の所へと駆け寄る。その俺に反応して剣を持つ何者かは俺に襲いかかってくるが、そいつに向かってジンは剣を振るう。


 そいつはジンの攻撃を食らうと、後ろへと飛び下がった。ズザザッと言う着地音が聞こえる。


「肉を斬った感触はない、防がれたね」


「《タイムバックワード》」


 ジンがそいつと(にら)み合っている隙に、俺は倒れた人に魔術を使う。30分ほど時間を戻すと、その人の傷がみるみると元に戻っていくところを見るに、怪我をしたのは30分以内だったようだ。治せて良かった。


 そう安堵(あんど)したのも束の間、剣を持った者は(おもむろ)にこちらへと近付いて来た。


 すると、そのドスドスと言う足音を聞いてなのか、俺の魔術によって傷が治った男の人は意識を取り戻した。そして、その男の人は間髪入れず、いきなり俺達にこう言った。


「その()()()()から離れろ!みんな殺されるぞ!」


 そう言われて、俺は顔を上げる。近付いて来たことにより、はっきりと見えるようになった剣を持つ者の顔は、無表情な土塊(つちくれ)だった。


「そうか、そうだよね。肉がないんじゃ、どんなに会心の当たりでも、肉を斬った感触はしないよね」


 そう納得するジン。


「カレン!ゴーレムの弱点は核だろう!?」


「はい、そうです。もしくは身体を壊してしまうと言う手もあります。これだけ精巧に作られていれば、少しの欠損でも致命的になるはずです!」


「わかった。アイリーン、鈍器は作れるか?」


「任せて。《創造する鉄の戦棍 アイアンメイス》」


 アイリーンは俺に鉄のメイスを手渡す。


「《上昇する筋力 アタックアップ》」


 ウェンディはさりげなく俺に魔法をかける。


「ありがとう、ウェンディ」


 そう言って俺は素早くゴーレムに近付くと、ゴーレムの身体の中心をめがけてメイスを振るった。


 ゴーレムは避けようともせずに、そのメイスはゴーレムの身体に直撃する。ゴーレムの身体にはバキバキとメイスが沈み込んでいった。


 反撃を警戒した俺だったが、メイスの一撃は核まで到達していたようで、ゴーレムはガラガラと音を立てて崩れ落ちた。


「よ、弱いな」


「そうだね。この身体の脆さだと、ウェンディちゃんの強化魔法なしでも壊すことができそうだ。ただ、武器の相性が悪いよね。打撃は有効だけど、斬撃がほぼ無効だから」


 そう、ジンは冷静に分析をしていた。


「それで、どうするよ?」


「どうするって?」


 俺の問いかけにジンは聞き返す。ジンとアイリーン、ウェンディは言っている意味がわかっていないようで首を傾げていた。


 俺は墓の大岩を指差して言う。


「あれだよ、あれ。まさか今倒した1体だけが急に動き出したわけじゃないだろう。向こうにいる全てのゴーレムだって動く可能性はある」


「あ、そうだね。何とかしないと」


「ケン、でもいっぱいいるんでしょ?わたし達だけでどうにかできるのかな?」


「ウェンディの言う通りですよ。あそこには5000体ものゴーレムがいるんです。1体1体は弱くても、5000体にもなったら対処できるかどうか」


「確かにな、この感じだと、俺達1人当たり1000体は壊さないとな」


「でも、それは難しいんじゃない?あたし達みたいな前衛なら今みたいに殴って壊すこともできるけど、カレンとウェンディ、特にウェンディはそんな攻撃魔法使えないよ」


「一理あるな、そろそろ夜になるし、体勢を立て直して宿屋で作戦会議でもするか?だが、夜、俺達が寝ている間に襲ってこられたら、それこそ全員抵抗するまもなく殺されるぞ」


 今後の方針について俺達の意見はなかなか一致せず、次の行動が決まらない。


 そんな俺達を待つことなく太陽は今にも沈もうとしている。


「夜襲われるかもっていうのはオレも心配だな。そうだ!ねえ、おっさん。おっさんはなんでゴーレムに襲われていたの?」


 ジンは俺が助けた男の人に話を振った。


「実は、墓の方から音がしたもんでな。気になって覗き込んだら、ゴーレムの首がいきなりこっちを向いたんだ。おらは驚きのあまり心臓が飛び出しそうになりながらも必死に逃げたんよ。でも、追っかけてくるゴーレムの足はそれはもう速くてな、追いつかれて、そのまま後ろからグサリと刺されてしまったんだ」


「なるほどなるほど、他のゴーレムの様子はどうだった?」


「おらが見たのはその1体だけだ。他のはどうだか」


「えっと、つまり貴方は1体のゴーレムに姿を見られて、そのままそのゴーレムに追われて攻撃されたと言うことですか?」


 ジンの質問に答える男の人に、俺は確認と整理の意味を込めて聞き返した。


「そうだ」


「他に、ゴーレムに襲われた人の話とかって聞いたことはありますか?」


「いや、おら聞いたことねえよ。でも近頃、墓の方から音がするって言う噂はあってな。気味悪がって誰も近付かねえんだ」


「ありがとうございます。話を聞く限りだと、ゴーレムは人を感知しないと襲ってこないと、俺は判断するんだが、みんなはどう思う?」


「オレも同意見だね。これなら体勢を整えてから突入するのもありかもね」


 女子達も(うなず)いていた。


「じゃあ、1度宿屋へ戻って作戦を決めよう」


 俺がそう言った時、辺りはもう真っ暗になってしまっていた。


 俺達は急いで街へと帰る。インジャーさん(俺が助けた男の人)には、街の人が墓へと近付かないように街の長へこの状況を伝えて貰うことにした。


 街へと帰る途中、(暗闇をチャンスと考え、闇夜に乗じた)ウェンディと(暗闇を恐れ、手が震えていた)アイリーンに俺の両腕を取られてしまっていた。


 一見すると両手に花的な状況に思えるが、俺の心中はアイリーンに抱きつかれていることがジンにバレるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。本当にニューランズ姉妹の超体質には手を焼かされる。

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