11.4 降った雨で固まる地
キメラを倒し、ヤポンへ到着し、マクスウェル一家と再会し、ギルドで事情聴取に協力し、アイリーンに迫られ、ウェンディにも迫られた翌日。
前日、心身ともにフル稼働した俺は例の高熱を発症した。
原因がわかったとは言え、高熱で予定がおじゃんになるのは正直辛い。
しかし、俺の看病を経て、マクスウェル一家と俺以外の4人は親しさが増していた。
うんうん、実に良いことだ。
それと、もう2つ俺にとって良いことがあった。
それはウェンディとアイリーンのことについてだ。
話は俺が起きてすぐ、目を覚ました時に側にいたカレンがみんなに報告するために部屋を出たときに遡る。
〜〜〜
俺が目を覚まし、起きがってベッドに座っていると、コンコンと力ないノックが聞こえた。
俺が返事を返すと、ガチャリとドアが開き、ウェンディが入ってきた。
「ケン、調子はどうなの?」
そう問うウェンディは何故か俺と目を合わさないように視線を少しずらしていた。
「元気だな、いつもこの熱が出た時は熱が引いたら何事もなかったかのように元気なんだ」
「そうなんだ、良かった。あ、あのさ…」
「ん?なんだ?」
「一昨日の夜はごめんね!わたしも自分があんなにもお酒に弱いなんて思わなくて」
その時のことを思い出したのか、ウェンディは顔を真っ赤にしてそう言った。
つか、お酒って言うけど、あさりの酒蒸しだろ、本当にアルコールがあったのかすら怪しいぞ。
「そんなに気にしなくて良いぞ。まあただ、謝ってくれるのなら、これからは気をつけて欲しいな」
「う、うん、気をつける」
そう言うと、ウェンディは逃げるように部屋を出て行ってしまった。
今回の一件でしばらく大人しくしてくれると良いんだが。
俺がそう思っていると、次はアイリーンが食事を持ってきてくれた。
お粥、お粥かあ。病人の分際で作ってもらった料理に文句を言うのはあれだけど、俺お粥得意じゃないんだよな。
そう思いながらも、食欲に勝てず一口目を食べる。
う、美味い、なんだこの美味さは!
続け様に一口、もう一口と俺はお粥を口へと運んだ。
「これ、アイリーンが作ったのか?」
「うん。って言いたいところだけど、作ったのはツバサさんだよ」
「ああ、ツバサさんが作ったのか、そりゃ美味いはずだな」
ツバサさんはこの宿屋にある酒場の厨房担当。ツバサさんの作る料理はどれも美味しい。
それにしても美味すぎて、止まらないな。
「元気になったみたいで良かった。それで、ケン、ごめんね」
「一昨日のことか?なら、別に気にしてないぞ」
「ケンに余計な心労かけたのかなと思って」
「全然大丈夫だ」
「それと、あの時はありがとう」
「何がだ?」
「積極的になる必要はないって言ってくれて嬉しかった」
アイリーンは積極的なウェンディとメアリーの行動を恐れて、自分も負けじとあんな行動をしたんだったか?
「礼を言われるようなことは言ってないぞ、本心だ」
その後、俺はお粥を食べながらアイリーンと話し、俺がお粥を食べ終わるとアイリーンは食器を下げると言って、部屋を出て行った。
これで、俺は夜を穏やかな気持ちで過ごせるな。
俺は思わずほっとした。
胸をなでおろす俺の部屋に今度はカレンが入ってきた。なんだが入れ替わりが激しいな。
入れ替わりの激しさに違和感を覚えた俺はカレンに鎌をかけてみる。
「ウェンディとアイリーンのこと、ありがとな」
「ケンさん、気付いていたんですね」
「いいや、何も気付いてない、ただ気になったから鎌をかけただけだ」
やっぱりカレンが1枚噛んでいたか。俺はカレンにこれまでの経緯を聞いた。
やはり2人の謝罪はカレンが後ろから背中を押したことで実現したようだった。
昨日の朝、俺が寝込んだことを知った2人は、俺が寝込む原因が疲れ(本当は新たな経験だが)だと知り、自分の行動のせいだと思い、悩んでしまっていたらしい。
そんな2人の様子に違和感を感じたカレンが2人から話を聞き、色々あって今回の謝罪の運びへとなったんだとか。
いや、本当、カレン様様だな。
〜〜〜
そんなわけで朝の1つのイベントで、熱と疲れと悩みが吹っ飛んだ俺は昨日できなかったことをしようと意気込んでいた。
しかし、俺の意気込みなど関係ないと言うようにギルドからのお達しがきた。
なんだって言うんだ…。




