10.13 プカン散策
さて、ウェンディとアイリーンが仲間になって色々あった日から一夜明け、今日はパーティ全員で買い物をすることになった。
今朝の話し合いで「とりあえずヤポンに帰りたい」と言う俺の提案にみんなが賛成してくれたので、明日から早速旅に出ることになった。
しかし、人数も増えて色々と必要な備品も増えたので、今日は準備日ということで、パーティ全員で買い物をする運びになったのだ。
昨晩のニューランズ姉妹の出来事で今日はどうなるんだと身構えていたが、姉妹揃って昨日の事を忘れたかのような対応だった。
2人のことが不安で今日の買い物は乗り気ではなかった俺であったが、杞憂だったのか?
今、2人に目線を向けてみても、特に変わった反応もなく普通だ。
カレンと楽しそうに話すウェンディ。そのウェンディにちょっかいをかけようとしているジンの首根っこを掴むアイリーン。
別段変わったことなどない。
もしかして昨日のは俺の夢?
そう思いながらみんなを見ていると、アイリーンと目が合う。
あ、顔が赤くなった。そうか…夢じゃないんだな…。
アイリーンの態度に儚き希望は潰えた。
さて、希望は潰えたものの、ニューランズ姉妹への不安は消えた俺であったが、未だこの買い物には乗り気ではない。
その理由はこの街の雰囲気にある。
この街の雰囲気は街に流れる噂を体現している。
そのため、悪人としての噂が流れている俺と、善人としての噂が流れているジンとでは扱いが全く違う。特に女性からの扱いが。
ジンが通ればあれよあれよと街中が黄色い歓声の嵐になるのに対して、俺が通ると夜の森の中のような静けさになる。まるで虫の鳴き声のように聞こえそうで聞こえない程度の音量で悪口が飛び交っているのがなお不愉快だった。さらには小石を投げつけられもする。
だから嫌いなんだ、この街。
ちなみに、俺の悪口が聞こえるたびにウェンディがピクッと反応している。今が夜じゃなくて本当に良かった。
―――
さて、数時間後、俺達は服屋にいた。
ある程度の備品を買い揃えた後、服屋に行きたいと言う女子達の意見で服屋に来た俺達だったが、この服屋には女物の服しか置いておらず、当然のことながら俺とジンは女物の服を着ないので、服屋の前で待っていることとなった。
もう30分は経っただろうか。チラチラと見える女子達は実に楽しそうだ。つまり、裏を返せばそれは買い物がまだ終わらないことを意味する。
「ねえ、ケン。アイリーンちゃんのことだけど」
「ああ、聞いたよ」
「本当!?どう?どう?どうだった!?」
反応が中学生なジンをなだめるように俺は言う。
「まあ、なんだ。意識は…していたな」
嘘じゃない嘘じゃない。好きの反対は嫌いじゃなくて無関心。
「うんうん、それで?」
「ジンは(仲間としては)長所がいっぱいあるって」
「本当かい!?嬉しいねえ!」
「でも、アイリーンはもっと無口な人が好きらしいから、ジンももう少し話す頻度下げた方が良いかもね」
「わかった!」
小学生か、と思うほどに素直に俺のアドバイスを聞くジン。アイリーンは無口な人が好きだなんて言っていなかった気がするが、これのパーティの平穏のための方便だ。
それからも周期的に他には何か言っていなかったのかと聞いてくるジンを適当に流していると、女子達の買い物は終わったようで店から出てきた。
その後も俺達は買い物を続け、夜には宿屋へと到着した。




