55.16 民の意思に反すればⅡ
「くくく、良かったぞ、兄さん。我輩の溜飲も少しは下がると言うものだ」
裕也は笑いながらそう言った。
「おい。良い加減、説明してくれよ、色々とな。俺、何かまずいこと言ったのか?」
「ふむ。兄さんは、親を殺した奴が親の葬式に来て、『この度はご愁傷様でした』と言ったら、どう思う?」
「え?そんなの、『どの口が!?』って思うだろ」
「それが魔人族が兄さんに抱いている感情だよ」
「は?」
「くくく。良かろう。説明するとしよう。1からわかりやすくな」
「あ、ああ。頼む」
「今回の亡命。その発端は、テクノロと魔人国の同盟にある」
「どう言うことだ!?」
「まあ、落ち着き給え。順番に説明する。テクノロと魔人国の同盟締結は、魔人国の国民にとっては不本意な形の同盟だったのだよ」
「どうしてだ?」
「今回にあるのは、やはり魔人族の人類に対する怨恨。我々はそれを解決して同盟を結んだ訳でなかろう?」
「ああ、そう、だな」
「我輩達があの場で行ったのは、言うなれば暴力による脅し、恫喝。飴と鞭と言っても良い。リン君と言う圧倒的な暴力と、それから唯一逃れることのできる同盟と言う兄さんの提案。あの場にいれば、誰だって同盟を選ぶだろう」
「まあ、確かにな」
「裏を返せば、あの場にいなければ、同盟などと言う選択はあり得ないのだよ。故に、軋轢が生じたのだ、あの場にいた魔人王達とあの場にいなかった国民達の間でな」
「なるほど。見えて来たぜ、漸くな。俺達と同盟を結んだことが原因なのに、他人事みたいに『困った時はお互い様』なんて言われたたらな」
「くくく、そう言うことだ。さて、従って、魔人国は今、3つの勢力に別れている」
「3つ?クーデターを起こした(言うなれば)反人派と、亡命して来た(言うなれば)親人派の2つじゃないのか?」
「クーデターを起こしたのは反人派だが、亡命して来たのは親人派だけではないのだよ。リン君と言う暴力に屈した仮初の親人派も含まれている」
「なるほどな」
「それぞれの派閥の主要人物についても伝えておこう。反人派のトップは、魔人王の嫡男であるアンビーマ・ビルジン。仮初の親人派は、魔人王であるマヒーボ・ビルジン。そして、親人派はアンビーマの弟であるクロビト・ビルジンだ」
「くっ。一気に3人の名前を言われても覚えられる気がしないぞ。間違って覚えそうだ」
「問題ない。すぐに記憶できる。では、行くとしようか」
「どこにだ?」
「魔人王との会談だよ」




