10.6 とある1週間
いつもご愛読ありがとうございます。作者です。
さて、この話が投稿された翌日3/17で投稿を始めてから1年が経とうとしております。
以前あらすじの方でご報告はさせていただきましたが、
1周年記念といたしまして3/16 0:00~3/17 0:00までの24時間、1時間に1話の投稿をさせていただきます。
以上、よろしくお願いいたします。
テレポートの魔法を使って帝都を訪れた翌日、夜更かしをした俺は案の定昼過ぎに目を覚ました。
目を覚ましたというよりは、話がしたいのに俺がなかなか起きてこないことに痺れを切らしたジンとカレンに起こされたという方が正しい。
ジンとカレンが俺を起こしてまで話したかったことというのは今後の行動指針についてだ。
現状、俺達は完全なフリーだ。帝王から大金を貰ったあの時に冒険者としての活動を続けるというざっくりとした行動指針は決めたものの、(俺は結構使ってしまったが)大金を持っているので急いで依頼を選ぶ必要もなく、特にやりたい仕事もないのである。
そのため、とりあえずの具体的な行動指針だけでも決めようという話になったわけだ。
「それで、どうするんだい、ケン?」
「そうだな、俺としてはやりたいことが1つだけあるっちゃあるんだが、冒険者に関係しないことなんだよな」
「まあ、言ってみなよ」
「ゲオルク・フィッツロイを倒すことだ」
「ゲオルク・フィッツロイ?誰だい、それ?」
「ケンさん、冗談はやめてください。彼はもう亡くなっているじゃないですか」
「実はな、俺があの赤くて大きなキメラを倒した時、いつもキメラが出てくる空中に空いたあの黒い穴から1人の男が出てきたんだ。そいつは自分のことをゲオルク・フィッツロイだと言っていた」
「オレ達がいない間にそんなことになっていたんだね。オレ達が駆けつけた時には既に気を失ったケンと肉塊と化したそのキメラしかいなかったから、知らなかったよ」
「ゲオルクは俺を待っていたと言っていた。そして、俺にもっと強くなれともな。何を考えているのかはわからないが、ゲオルクがキメラを作っている以上、倒す必要はあると思う。それが、俺のやりたいことだ」
「ケンがやりたいって言うならオレは反対しないよ」
「まあ、そうですね。それを行動指針とすることに私も異議はありません」
「じゃあ、決まりだな。それでだが、俺はちょっとメアリーの所で色々と聞きたいと思っているんだ」
「と、言うと、どう言うことですか?」
「俺は今、知識が足りないと思っているんだ。帝国のことも王国のことも、そして戦おうとしているゲオルク・フィッツロイのことも」
「確かにそうですね。今ケンさんが倒すべき敵をゲオルク・フィッツロイと思っているのは、本人がゲオルク・フィッツロイと名乗っているからであって、そこには証拠がないですもんね」
「ああ。だから、しばらく俺はメアリーに色々と教えて貰おうと思う。カレンもクリフさんに魔法を教えて貰ったらどうだ?」
「そうですね。どうせケンさんが帝都に行くときには私も同行することになるでしょうし、魔法を教えて貰っていれば有意義に過ごすことができますからね」
「俺に付き合わせる感じになってしまって悪いな。それで、ジンはどうする?」
「オレはこの王都でもぶらぶらしてようかな。王国に来るのは初めてだし、こっちの文化なんかも知りたいから」
「わかった。じゃあ、カレンは昼食の後、しばらくしたら帝都へ行こうか」
「はい」
―――
そんなわけでしばらくの後、俺とカレンは帝都へと訪れた。
王都はそろそろ夕方になるというのに、時差の影響で帝都は早朝だった。
適当な喫茶店で時間を潰し、ある程度の人通りが増えたところで城へと向かうことにした。
時間を潰したとは言え、アポなしで朝から城に行くのは失礼かな、とも思ったが、とりあえず俺はカレンと別れて城へ向かうことにした。
城に着くと相変わらずのざるセキュリティであっという間に城の中へと入ることができた。
本当に大丈夫なのか?俺が王国のスパイだったら、情報盗み放題だぞ。まあ、俺は王国嫌いだからそんなことしないけど。
そして、数分もしないうちにメアリーの部屋へと通された。
「おはよう、メアリー」
「おはようございます、ケン。こんな朝早くから私に会いに来てくださるなんて、私は幸せです」
「それは良かった。まあ、王都は今頃時差で夕方なんだけどな」
「『じさ』とは何ですか?」
「時間の差と書いて時差だ。ほら、惑星って丸いから場所が大きく離れると太陽の登る時間が異なるんだよ」
「『わくせい』?」
あ、そうか。そうなるな。時差なんて基本的にこの世界だと生じないもんな。そもそも、地面が球体だなんてことも信じられないだろうな。
「悪い、この話はまた今度、順を追って説明するする。俺も唐突に説明するのは難しいからな」
「わかりました。今は王都と帝都では昼と夜の時間が異なるということだけ理解しておきます」
「助かる。それで、本題なんだが」
「結婚式の日取りですか?」
「ああ、そうそう…って違うわ!」
「あら、残念です」
メアリーといるとペースを乱されるな。つか、積極的過ぎるだろ、どんだけ結婚に話を持っていくんだ?
「メアリーに聞きたいことがあって来たんだが。…そうだな、メアリーには話しておこう」
俺はメアリーに王都に襲来した「憤怒」と呼ばれたキメラのことやゲオルクのことを話した。
「なるほど、それでケンは情報を求めて、私を訪ねて来たと」
メアリーが心なしか落ち込んでいるのを俺は見逃さなかった。
「ああ、概ねそうだ。メアリーは話が早くて助かるよ。それに、こんなこと普通の人に言っても信じてもらえないだろうから、気の置けない仲間以外には話せないしな。…。…まあ、それとメアリーと一緒にいる機会は増やそうと思っていたしな」
落ち込むメアリーをフォローするつもりが、不器用過ぎて、下手なツンデレみたいになってしまった。
男のツンデレとか誰得だよ!顔から火が出そうになりながら、俺はそう思った。
「ふふふ、そんなに無理しなくても良いですよ。ケンの気遣いをしようという気持ちだけで私は嬉しいです。私、そういうケンの優しさ大好きです」
ちょ、やめて。恥ずかしい台詞頑張って言ったのに、その頑張りを褒められるとなお恥ずかしいから。それに、大好きだなんてさらりと言わないで、めっちゃくちゃ照れる。
会って数分でライフを0にされる俺だったが、世辞でもなんでもなくメアリーだけが頼みの綱なので、その後、俺はメアリーに様々なことを教えて貰った。
―――
そして、6日後、教えて貰いたいことは概ね教えて貰った俺は、カレンの方が無事に教えて貰いきったということもあり、メアリーの講義を終えることにした。
飯の時に、あーんを要求された時は、正直心臓が持たなかったが、しっかり教えて貰えることは教えて貰えたので、良しとしよう。




