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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
10 目標に向かって
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10.5 帝都への顔出しⅡ


 さて、クリフさんのいる第3魔法研究棟を後にした俺達は城へと向かった。


 メアリーにはお世話になっているし、仲間と言いながら帝国まで来ているのに会わないのもおかしな話なのでメアリーに会おうと思ったのだ。


 いつものように警備の兵士達に話をつけて、城に入りメアリーの部屋へ入る許可が下りるのを応接室で待つ。


 扉に背を向けるように立ちながら、椅子に座っているカレンと待ちながら話していると、勢い良く扉が開いた。


「ケン!」


 俺が振り返るよりも早く、メアリーは俺に飛び付いて来た。おいおい、一国のお姫様がはしたない真似して良いのか…。


 メアリーにくっつかれながら、そう冷静に分析していた俺はふと背中に当たる大きく柔らかな感触に気付く。


 その正体に気付くや否や、俺は反射的にメアリーの手を振り払ってしまう。仰々(ぎょうぎょう)しい物言いだが、単純に照れただけだ。天才と豪語していても中身は思春期の男子だからな。


 手を振り払った俺がメアリーの顔を見ると、メアリーは悲しそうな顔をしていた。


「す、すまん」


 俺がメアリーに謝るも、メアリーは伏し目がちに口を開く。


「私、迷惑でしたか?」


「いや、ただ少し驚いただけだ。迷惑だなんて思っていない」


「でも、私のことなんて、お嫌いでしょう?」


「いや、嫌いじゃない」


「じゃあ、好きですか?」


「ああ、好きだ」


 途端にメアリーの表情は明るい笑顔になる。まるでスイッチが切り替わったかのような変わりようだ。


 はっ、()められた!


「言質、いただきました、ね?結婚式はいつにしましょうか?」


「違う違う、誤解だ」


「先程の言葉は嘘、だったのですか?」


 ぐっ、そんな悲しそうな顔をするなよ。会話の運び方と言い、この演技力と言い、なんてセンスだ。まさしく今俺はメアリーの(てのひら)の上で踊らされているのだろう。


「嘘では、ない…」


「なら、早く式を挙げましょう!」


 メアリーの策に言い(よど)むことしかできない俺であったが、刹那 俺の脳裏に電流が流れたかのような閃きが訪れた。


「仲間としてだ!俺は仲間としてメアリーを好きだと言ったんだ!」


「…まあ、苦しい言い分ですが、今回はそう言うことにしておきましょう」


 危なかった!詭弁(きべん)で流せてよかった。才能に感謝。


 安堵(あんど)したのも束の間、今度は後ろから痛いほどの視線が突き刺さる。


 恐る恐る首だけで振り向くとカレンが殺気を漏らしながらこちらを見ていた。


 その表情はまるで「バカップルが。くっつくならさっさとくっつけよ」と言わんばかりだった。


 身の危険を感じた俺はゆっくりと首を正面に戻す。


「そ、それでメアリーの方は最近どうだ?」


 我ながら、どんなお茶の濁し方だ、とは思ったが、一難去ってまた一難という言葉がぴったりなこの状態で、更なる詭弁なんて思い付くわけがない。


「最近、ですか?そうですね、大臣と将軍が変わってから随分と時間が経って、ようやく帝都も落ち着いて来ましたね」


「そうか、あれからもう3ヶ月くらい経ったのか」


「ええ、ケンがお父様を助けてくださらねば、今頃この帝都は大きな混乱が訪れていたことでしょう。もしかしたら、王国との戦争も起きていたかも知れませんね。そして、私もどうなっていたかわかりません。本当にケンには感謝しかありません」


「いや、前にも言ったかも知れないが、俺は大したことはしていないさ。最終的にストロング将軍を倒したのはジンだし、ブリリアント宰相と1人で相手をして倒したのはここにいるカレンだ。感謝するなら、2人に感謝する方が正しいと思うぞ」


「そうですね。よく考えてみたら、カレン様には直接感謝の言葉を述べていませんでしたね。帝国の危機を救ってくださり、本当にありがとうございました」


「そ、そんな、お姫様からの感謝の言葉だなんて恐れ多いです」


「『お姫様』だなんて呼ばれると距離を感じてしまいます。ケンと同じように『メアリー』とお呼びください」


「わかりました。『メアリーさん』と呼ばせて貰います」


「嬉しいです。では、私もこれからは『カレン』とお呼びしますね」


 メアリーとカレンの仲が深まっていく様を見て、俺は少し安心する。


 メアリーは俺達の仲間になったと言っても、基本的に俺としか繋がりがなかったから、本当に仲間としての関係性を保てているのか不安だったのだ。しかし、こうしてカレンと仲良くなっていくのを見ると、ちゃんと仲間になっているのだと感じる。


 この日は3人で近況や他愛もない話をして、解散する運びとなった。


 夕方になり俺とカレンは王国に帰るも、時差の事を完全に忘れていて、王国は既に深夜だった。


 きっと明日は昼過ぎに起きるんだろうなと思いつつ、俺は眠った。

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