10.1 世界は変わり始めた
7日間に及んだ高熱も終わり、俺は目を覚ます。
2人の話によると、俺達3人の功績に対する王国からの報酬については俺が寝込んでいた7日間で色々と議論されて、今はもう準備段階まで進んでいるそうだ。
最終的に俺達が貰えることになったのは「王国認定冒険者」という名の称号らしい。
その名の通り この称号を持っている冒険者は王国が認定した冒険者であるということになる。そして、その冒険者には王国の後ろ盾があるということも示しているそうだ。どうやら前例はなく、俺達のためにわざわざ考案してくれた称号らしい。
揉めに揉めて決まったこの称号だが、ぶっちゃけいらない。すでに帝国の「特別名誉騎士」の称号によって俺達の身元の保証はできているし、称号の持てる権力的にも帝国の方が上だからだ。
しかし、貰っておいて損はないだろうから、称号とそれを証明する襟章の授与式には参加するつもりだ。
さて、その授与式は明日とのことなので、今日はギルドにでも顔を出して、異能の診断書でも貰いに行こうと思う。
ゲオルクに貰った「分析の片眼鏡」は体力や魔力などのステータスと「魂の名前」しか分析できないので、異能を知りたければギルドの方へ行かなければならないのだ。
そんなわけで俺は診断書を貰うべくギルドに向かった。
―――
診断書を貰うのも今回で3度目だ。普通の人なら紛失でもしない限り貰いに来ることはないが、俺の場合、「魂の名前」である「Evolution」の効果で定期的に先天的な異能と呼ばれる存在が増えるので何回も貰わなければならない。
「すいません、異能の診断書を貰えますか?」
「では、こちらの石板に手を置いてください」
俺が手を置くとこれまでと何ら変わることはなくうっすらと石板は光り、受付の人は石板の下に敷かれた紙を取り出した。
「こちらの紙に書かれたものが あなたの先天的な異能になります。全部で19個で うち13個が超能力ですか。平均よりも非常に数が多いですね。それに超体質や魔術までお持ちになられているようですね。ギルドでのご活躍を期待しております。こちらの診断書はお持ち帰りいただいて構いません」
案の定、異能の数が変わっているよな。つか、超体質まで増えたのか。
どれどれ、増えた超体質はなんだ?
ええと、「自己犠牲」?名前からして嫌な超体質だな。
そう思いながらも俺は説明を読んだ。
どうやら周りの味方よりもダメージを受けていると筋力や耐久力などのステータスが強化されるらしい。
そして、超体質のデメリットとしては味方の方が俺よりもダメージを受けているとステータスが下がるようだ。
戦場で活躍するためには傷を負わねばならないという縛りができたな。まあ、1人で戦えば大丈夫ではあるが、逆に戦場とか言ったら傷だらけの味方が多そうだから大幅にステータスが下がりそうではある。
何はともあれ、目的のものを手に入れた俺はそのままカレン達がいるであろう宿屋へと戻った。
―――
宿屋へ戻った俺がカレンの部屋を尋ねると、偶然にもジンがいた。
「あれ?ケン、どうしたんだい?」
「カレンに頼みがあってな」
「私に、頼みって何ですか?」
「これを使って欲しいんだ」
俺はポケットから「分析の片眼鏡」を取り出す。ゲオルクからキメラ迎撃の記念品として渡された魔法道具だ。
自分で自分のステータスを見ようと思って鏡越しに見たら律儀に文字まで鏡写しになってしまって読めたものではなかったので、別の人に見てもらおうと言う寸法だ。
「これは?」
「これを着けて見た相手のステータスなんかがわかるんだ」
「『すてーたす』って何ですか?」
「えっと、ギャリットの魔法道具商の店に『分析の壁』ってのがあっただろ?あれで測定した体力とか筋力とかの値だ」
「ああ、あの能力値ですか。便利な品物ですね、どこで買ったんですか?」
「ん?まあ、貰い物だ。まあ、とりあえずカレンとジンから先に見ようか」
俺はそう言って片眼鏡を付け、見えた値やらを紙に書いた。
「多少、値が上がっていますね。あ、ケンさん。この『魂の名前』って何ですか?」
「ああ、それか?」
「俺も詳しくわかっていないんだが、その人の魂に刻まれた名前で特殊な能力を持つ人にはだいたいあるらしいぞ。俺の先天的な異能が増えたりするのはそれが関係しているらしい」
「なるほど。私のこれはなんて読むのでしょう?」
「Witch、魔女だな。カレンの魔術『ウィッチトライアル』のウィッチだ」
魔女の名を持つカレンが魔女裁判の魔術使うのも奇妙な話ではあるな。
「魔術名に意味ってあったんですね」
「おう、それどころか魔法名も普通に意味あるだろ」
「へえ、そうなんですね。知りませんでした」
英語の概念ないのか?いや、でも、ギルドやポイント、パーティにモンスター、結構英語使っているとは思うんだけどな。
「ケン、オレには魂の名前がないんだけど」
「全員にあるわけじゃないらしいんだ」
「オレだけ仲間外れみたいじゃん」
「まあ、ジンは『魂の名前』がなくても強いんだし、良いだろ。カレン、次は俺を片眼鏡で見てくれないか?」
「はい、わかりました」
俺はカレンに「分析の片眼鏡」と紙と鉛筆を渡す。
「どうだ?見えるか?」
「ええ、なんらかの文字が見えてはいるのですが、読めません…」
確かに片眼鏡で見えた文字は日本語と英語だったな。でも、それは使う人に合わせてその人の1番馴染み深い文字に変わるものだと思っていたが、まさか一律で変わらないのか。
だとしたら、こっちの世界出身のはずのゲオルクはなぜこれが読めたんだ?
そういえば、ゲオルクはちらほら英語も使っていたみたいだし、疑問は残るな。
「とりあえず、目に見えている文字をそのまま書いてくれないか?」
「わかりました」
そう言ってカレンは目に見えている通りに書き出し始める。
そうして書かれた文字は失礼だが読み辛かった。鏡写しで逆転している文字を見るのとどっちが読み辛いかって言う話ではあるな。
なんにせよ、俺は現状の自分のステータスを把握できたわけだ。
明日は式典があるし、ちょうど宿屋にいたこともあって俺はそのまま部屋に戻って眠りについた。




