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9.4 標


 (かすみ)がかったようなボヤけた視界に、宙を浮いているかのような感覚。


 俺は死んだのだろうか。


 はっきりしない頭で俺は考える。


「いいえ、あなたは生きていますよ。私が話をするために呼んだのです」


 どこからか声が聞こえる。


 誰だろうか?


「覚えていないのですか?私はこの世界を管理している弓の神です。こう名乗るのも2回目なのですけれど」


 世界を管理している神?


「ええ、あなたにこの世界を救っていただくために、第2の人生を与えた者です」


 前にここに来たのは、そう、転生したあの日だ。


 俺がその事に気付いた瞬間、急に霞がとれて視界が開ける。


「どうやら思い出したようですね。ここがどこで私が誰なのか」


 改めて周囲を見回す。日が昇ってすぐの白と水色を混ぜたような色の空に、無限に広がる石畳みの地面。所々に建物が建っている。


 そして、俺に話しかけていたのは女神様だ。


 白く長い髪、身長は165cm程でスレンダーな体型だ。一目惚れ待った無しの目鼻立ちの整ったクール系の美人だ。


 きっとジンが見たら「おっぱいの小さな美人さんもやっぱり素敵だ」なんて言うのだろう。


 流石は女神様だな。


「あの、褒めてくださるのは嬉しいのですが、胸の大きさは気にしているので触れないでいただけると嬉しいです」


 心の声が筒抜けだ…。


「そうですね。あなたは今 精神だけの存在ですからね。ちなみに身体の方は心配なさらなくて大丈夫ですよ。ただ、しばらくは目を覚ますことはなさそうですが…」


 あ、いつもの高熱か。


「その通りです。今回は7日と言ったところです」


 7日!?脱水症で死にそうじゃないか?


「大丈夫ですよ。きっとあなたのお仲間が看病してくださってますから。そもそもあなたの『魂の名前』の効果で発生した高熱によって命を落とすことはありませんし」


 そういうものなのか。


「さて、そろそろ本題について話しましょう。今回あなたを呼んだのは、あの男に出会ったからです」


 あの男、というとゲオルク・フィッツロイか?


「そうです。あなたが転生する原因を作った男です」


 と、なると俺はゲオルクを殺して世界を救うわけか。


「いえ、別に命を奪う必要はありません。改心させるでもなんでも、彼が今行なっている事を辞めされられればそれで良いのです。まあ、命を奪うのも1つの手段ではありますが」


 なるほどな。


「あなたに転生した目的を改めて伝えるのが今回あなたを呼んだ理由ですので、実は本題はこれで終わりなのですが…」


 え!?これだけの事のために、人の身体から精神引っこ抜いて来たの?


「こうでもしないとお話できないので…。申し訳ないです」


 女神様に呼ばれたから何があるのかと思ったが、壮大に何も始まらないってところだな、これは。


 まあ、もう用はないって言うなら、女神様に時間を割いてもらうのも悪いし、俺を戻してくれて構わないのだが。


「はい。これだけのためにわざわざお呼びたてしまい申し訳ないです」


 お気になさらず、美人の女神様に会えただけ役得なんで。


「ありがとうございます。では、これからも頑張ってくださいね」


 女神様がそう言うと、視界がフェードアウトする。


 天界とでも呼ぶべきその場所から離れる感覚を俺は感じた。

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