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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
1 新しい世界
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1.2 宿屋・トワイライト


 馬車に揺られて30分もしないうちにヤポンにあるケビンさん達の宿屋へ到着した。


 宿屋の名前はトワイライト。家族5人で経営しているとは思えないほど宿屋は大きく、60ほどある部屋のうちの一部屋を俺に貸してくれる事になった。


 裏口からトワイライトに入ると、厨房には俺より少し年上の女性が2人いた。おっとりとしたゆるふわ系のお姉さんが長女のユイさん、少しキツい目付きで仕事を淡々とこなしている方が次女のツバサさんと言うそうだ。ちなみに末っ子のマイさんは今 客室の掃除をしているらしい。


「こちらはヒイラギ・ケンさん。記憶をなくしていて無一文との事なので、しばらくの間うちに住み込みで働いて貰う事になったの。貴方達で仕事を教えてあげてね」


「柊健です。しばらくの間お世話になります。積極的にお手伝いさせていただくつもりなので、ご指導のほどよろしくお願いします」


「ユイ・マクスウェルです~、大半の仕事の事は私に聞いて貰えれば答えられるので、遠慮なく質問してくださいね~」


「ツバサ・マクスウェルです。私は基本的に厨房担当なので、厨房関係の事は姉さんよりも詳しく教えられると思います。ところでケンさんはヤポン出身なのでしょうか?」


「いえ、違うと思いますが。なぜそう思われたのですか?」


「名乗る時に家名から述べていたので、古くからヤポンに住む家系出身の方々と同じだなと思いまして」


「なるほど、そういった特徴があるのですね。実は、記憶が全くないので自分がどこ出身なのかすら覚えてないのですよ。この名前が本名なのかも怪しいですし」


 なるほど、ヤポンの人の中には日本的な形式の名前の人がいるんだな。確かにマクスウェル一家の女性達も名前は日本風だよな。それに「柊」が苗字だって事にも気付いたわけだし、案外この街では日本風の名前が多いのだろう。


「全く記憶がないのですか…。それは気の毒に。早く記憶が戻ると良いですね」


「はい、お気遣いありがとうございます」


 お互いに自己紹介をしていると厨房のドアが勢いよく開き、身長が小さめな2つ結びの女の子が入ってきた。


「お母さん達、帰ってきたの!って、この人誰?」


「彼はヒイラギ・ケンさん。今日からしばらくうちで働いて貰う事になったのよ」


「柊健です。よろしくお願いします」


「へえ、よろしく、お願いします。ところでケンさんは何歳、ですか?」


「たぶん16かな」


「だよね!絶対私と歳が近いと思った!なら、お互いに敬語じゃなくてもいいよね!?」


「ああ、いいよ。それじゃあ、改めてよろしくね、マイ…ちゃん」


「うん、よろしく!あ、私は客室とか宿屋の全体の掃除をしている事が多いから、忙しい時に手伝ってくれると嬉しいな!」


「りょうかーい、声をかけてくれれば手伝いに行くよ」


「わーい、ありがとー!」


―――


 自己紹介をすませた後、宿屋の仕事を学ぶべく俺はユイさんに1日の仕事の流れを教わる事になった。


 トワイライトは結構賑わっていて、夜も更けはじめると1階にある食堂兼酒場では屈強な男たちが馬鹿騒ぎしていた。


 なんでも彼らはギルドに所属する冒険者らしく、客の半分くらいは何日も部屋を借りてヤポンに暮らす冒険者らしい。残りの半分の客の多くも冒険者であり、旅をしながらギルドの依頼をこなしているらしい。


 このギルドは、登録した冒険者達が一個人や組織が要請した依頼を達成して報酬を受け取るという施設だ。


 ちなみにトワイライトの1泊の料金は朝と夜の食事がついて400ブロンらしい。見た限りだと1ブロンが日本円で10円の価値に相当するようなので、1泊あたり4000円という事になる。まあ、格安のビジネスホテルと同じくらいか?ビジネスホテルに泊まった事がないからわからないが。


―――


 そんな感じでトワイライトを見てまわりながら仕事を教わっている間に、あっという間に深夜になった。覚える事が多過ぎて俺じゃなければとてもじゃないけど覚えきれなかっただろう。


 そういえば この世界の文字についての話だが、この世界の文字は意外にも日本語に近い事に気付いた。ひらがなや漢字のような文字はないものの、まるでカタカナのような文字が使われていた。結構カタカナに似ている文字なので、読む分には大きな問題はなさそうだ。まあ、書くのに苦労を強いられそうではあるが。


 それとこの世界の通貨は硬貨16種類で構成されていて、価値を覚えるのが厄介だった。詳しく説明する意味がないので説明は省くが。


 それにしても良かった。転生直後は数日間の野宿を覚悟していたが、しばらく宿屋に泊まれる事になろうとは。これも俺の才能が成せる技かね?


 とりあえず、今度休暇を貰う事ができたら一度ギルドに行ってみようかと思う。ギルドへの登録は特別な場合を除いて誰でもできる事らしいし、ギルドは一部の国と地域を除いた世界各国に点在しているそうだ。


 つまり、世界を救うために旅をする事になったとしても、冒険者になっていれば旅先のギルドですぐに金を稼げる環境になるわけだ。


 今後の予定について考えていると、睡魔の影響でだんだんと意識が朦朧としてきた。


 こうして転生1日目は宿屋のベッドで終了した。

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