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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
7 ギャリットの日常
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7.4 ギャリット散策Ⅳ


 店を出た俺達は宿屋に戻るべく街道を歩いていた。


「いやー、ケン。意外とたくさん買ったね。歩きにくくない?」


「正直歩きにくいよ」


 そりゃそうだ。6本もの剣を一度に所持したら、誰だって歩きにくい。


6本は買い過ぎだったな。敵を翻弄する前に戦闘にならない。


「だよね。どうにかしないとだね」


「ああ、ところでジンは何を買ったんだ?」


「ああ、オレ?オレは何も買ってないよ。結局、オレが欲しい武器はなかったから、形状とか性能とかを指定して新たに作って貰うことにしたよ」


「なるほどな。どんな武器を頼んだんだ?」


「軽くて、切れ味が良くて、毒を塗りやすい細長い形状をした小さめの剣だよ。それを2本」


「なかなか特殊な要求だな」


「そうらしいね。サムさんにも言われたよ。新しく作って貰う剣は軽さを追求するから、耐久度は下がるらしいんだよね」


「まあ、ジンなら大丈夫だろ。ジンの素早さなら武器で攻撃を受けることもないだろうし耐久性が低くても何とかなると思うが」


「そうだね。多少耐久度が下がっても丁寧に扱えば問題ないね」


 そんな感じで俺達が会話をしながら歩いていると細目でドジョウのような髭を生やした客引きのおっさんに絡まれて困っているカレンがいた。


 そういえば男が苦手なんだっけ。最近そんな感じなかったから忘れていたわ。


 俺がそんな事を考えている間に、カレンとおっさんの間にジンが割って入っていた。


「大丈夫かい?カレンちゃん」


「ありがとうございます、ジンさん」


「それで、アンタは誰だい?オレの仲間に絡んでいたようだけど」


「わ、私はただの魔法道具商ネ。そこのお嬢さんに魔法道具を売り込んでいただけヨ」


魔法道具商?魔法道具か、少し興味があるな。


「おっさん、ちょっと良いか?」


「はい、何アルか?」


「魔法道具売っているんだよな?おっさんの所の商品、俺に説明してくれないか?」


「喜んで!すぐそこが私の店ネ。立ち話も何だから、店で話すヨ」


 そう言っているおっさんについて行き、俺達は店に入った。


 店には見た事もないような道具が色々と置いてあった。


「そうネ、お兄さんにオススメな魔法道具はこれネ」


そう言うと、おっさんは腕輪のような物を取り出した。


「これは?」


「これは『収納の腕輪』と言う魔法道具ネ。最大10個まで物を収納できるヨ。お兄さん、剣をたくさん持って歩きにくそうだから、これを使うといいヨ」


「便利な道具だな。それ買うから、詳しい使い方を教えて貰えるか?」


「お買い上げ感謝するネ。じゃあ、詳しい使い方を説明するヨ。まず、この腕輪を腕に着けるネ。そして、腕輪に収納したい物を腕輪をつけた手に持って呪文を唱えるネ。〈エスゼロ〉」


おっさんが手に持っていたコインが消えた。


「なるほどな。それで取り出す時は?」


「もう1回同じ呪文を唱えれば良いネ。〈エスゼロ〉」


 おっさんの手にコインが戻っていた。


「なるほど」


「取り出す時に注意して欲しいのは収納した時の持ち方を再現するように取り出されるということネ。そして、取り出された時に、他の物体と重なってしまうと最小限ズレた所に取り出されるネ。あと、空気や生き物、水なんかは収納できないヨ。まあ、空気や水に関しては瓶なんかに入れれば収納できるヨ」


「なるほど、わかった」


「お兄さん、すごいネ。1回で理解できる人なんてそういないヨ。それと呪文は10種類あるネ。『エスゼロ』、『エスワン』、『エスツー』…」


「あー、そこまで聞けば大丈夫、大体の構造がわかったから。じゃあ、それを貰うよ」


「本当アルか!?わからなかったらまた聞きに来ると良いネ。それとお代は10万ブロンネ」


 100万円か、値が張るな。まあ、この剣に比べれば安いし、余裕で買えるけどな。


 俺は金を払い、「収納の腕輪」を受け取ってそのまま右手に装備した。


 今買った「収納の腕輪」の大体の構造はわかった。言ってしまえば、10個ある部屋に物体を収納するだけの魔法道具なのだろう。そして、呪文を唱えると対応する部屋の中を調べて、物体があれば取り出し、なければ手にある物を収納する。大体そんな所だろう。呪文もシンプルだったしな。多分〈S0〉から〈S9〉までの10個で頭のSは収納を意味するStorageのSだろう。


 今日図書館行っていなかったら絶対わからなかっただろうな。魔法道具についての本を読んでおいて良かったぜ。


 そんなわけで「収納の腕輪」を手に入れた俺は6本の剣をそれぞれ別々の呪文で腕輪に収納した。


 ふと、俺が辺りを見回すと大きな壁のような置物の前でカレンとジンが話していた。


「カレン、ジン。待たせたようで悪いな」


「お、ケン。買い物は終わったようだね」


「ああ。それで2人は何を見ていたんだ?」


「ん?ああ、この壁を見ていたんだけどね。よくわからなくて、何をする道具なのか予想しあっていたんだよ」


「お兄さん達、それは売り物じゃないヨ。これは『分析の壁』って言う魔法道具ネ。個人の能力について調べられるヨ」


「ギルドにある石版と同じって事か?」


「お兄さん、それは違うヨ。あれはこの『分析の壁』の簡易版ネ。性能はこっちの方が断然上ヨ。売ってあげることはできないけど、能力を調べるだけならできるネ」


「じゃあ、俺は調べて貰おうかな。ジン達はどうする」


「そうだね。オレも興味あるしお願いするよ」


「はい、私もせっかくなので調べて貰いたいです」


「それなら3人で300ブロン頂戴するネ」


「いや、金取るんかい」


 スムーズ過ぎる流れに思わず突っ込んでしまった。


「当然ヨ。私も商売人ネ。取れるところで取っとかないと食いっぱぐれるネ」


「いや、まあ別にそれくらいなら払うけどさ」


「じゃあ、早速お兄さんから調べるから、壁に手を当ててヨ」


 俺は言われるがままに壁に手を当てた。ギルドにあった石版のように壁はうっすらと光った。その光が消えると、おっさんが壁の後ろから紙を持ってきた。


「はい。これ診断書ネ」


手渡された診断書を見てみると、各種ステータスや異能がびっしりと書かれていた。


ステータスは体力、魔力、気力、筋力、耐久力、忍耐力、敏捷性、運の8種類があった。1番低い値が気力で65だが、他は大体100超えているし、実は俺結構強いのか?1番高いのは魔力で500だしな。才能が溢れ出ている感じがするな。


 一方、先天的な異能の方は案の定増えていた。新しく増えていたのはいくつかあったが、その中で俺が気になった異能は「魔力蓄積」だ。


 説明を読んでみたところ、魔力量の上限の1/2の量が追加で蓄積されると言ったような超能力らしい。


 そして、その蓄積された魔力は自分の魔力量が1/20を下回った時に解放されるようだ。


 言わば、ピンチの時に補給できる魔力のタンクを得たと言ったところだろう。事実上の魔力量上限の向上と理解していても問題はないと思う。


「ケンさん、どうですか?」


 カレンも診断が終わったようで、俺の所へやってきた。


「平均がわからないから何とも言えないな。カレンの診断書はどんな感じだ?」


「じゃあ、交換して見てみましょうか。どうぞ、私の診断書です」


 ま、魔力1315…。こう、簡単に自分の最高値を越えられると心に来るな。


 でも、そこを除けば100を下回るのが多いし、魔力特化って感じだな。


「すごいな、カレンは」


「そうですか?私からして見たら先天的な異能が増えるケンさんの方がすごいですけど」


「ん?何の話だい?カレンちゃん」


「お、ジンも終わったか。今カレンと診断書を見せ合っていたんだ。これの平均値がわからなくて、いまいち自分の強さがわからないんだよな」


「さっき聞いたけど、平均は100らしいよ」


「お、そうなのか。なら、カレンの魔力は平均の13倍以上ってことか。数値でわかると半端ないな。ところで、ジンはどんな感じなんだ?」


「ふっふっふっ。見るかい、オレの診断書?」


 ジンはやたらと誇らしげな顔をしていた。不思議に思ってジンの診断書を見せて貰うとそこには信じられないような数字が書いてあった。


【俊敏性:4320】


 俺は目を疑った。平均的な人より43倍は速いと言うことだ。そりゃ目では追えないな。距離でもって単純に比べるなら、平均的な人が100m走っている間に4km以上走れるわけだ。とんでもないな。


 ジンの俊敏性の理由を解明するために俺は診断書の異能の欄に目を向けた。


「『超体質:超能力効果向上・極』?」


「ああ、それね。オレの敏捷が高い秘密だね。まあ、元から『超能力:敏捷性向上・極』で10倍以上になっているから、それとの相乗効果で上がっているんだけど」


「なるほどな」


 シナジーか、ぴったりハマればそうなるのはすごいな。


「この超体質は超能力の効果を4倍以上にするんだよね、代わりに魔術・魔法は覚えられなくなるんだけど」


「なるほど、確かに魔法はからっきしみたいだな。魔力も0だしな」


「そうなんだよ。魔力少しは欲しかったよ。魔力が0だと、魔法道具使えないらしいんだよね。さっきも自分で壁を起動できなくて代わりに魔力を流して貰ったよ」


「ん?あれ魔力必要なのか?」


「魔法道具っていうくらいだからね、必要だよ。本来なら無意識に身体の表面に出てきている魔力程度でも起動するそうなんだけどね。オレは魔力がないから身体の表面に魔力なんてないのさ」


「なるほどな。じゃあ、そろそろ行くか」


「そうですね。長居していても仕方がありませんから」


「ありがとうございましたネ。また、魔法道具が必要になったら立ち寄って欲しいネ」


 魔法道具店を出て、俺達は宿屋へと帰った。

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