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着のみ着のまま転生記  作者: 名波 和輝
3 魔法少女はより強く
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3.3 腕試しの生け贄


 カレンがミラさんから魔法を教えて貰うようになってから3週間が経とうとしている。


 ここ3週間は基本的に同じ生活しかしていない。


 と言うのも、カレンは1人でミラさんに魔法を教わっているので、俺も1人冒険者活動をしているのだ。


 しかし、1人でキメラに襲われたら勝ち目がないので街から離れるような依頼は避けている。そのため、俺が受ける依頼は街でできる白階級の依頼ばかりだ。


 白階級の依頼は簡単なものばかりで、買い物の代行や飼い犬の散歩、飼い猫の捜索など仕事の内容はほとんど雑用だ。報酬も少なく、だいたい100ブロン程度、これでは宿屋にも泊まれない。ただし時折ある工事現場の手伝いだと500ブロンでようやく1泊できるぐらいの報酬になる。


―――


 そして昨日、ついにカレンはミラさんが覚えている全ての魔法を教わり終わったのだった。カレンに渡した魔法記録用の手帳には50個以上の魔法が記録されていた。出費は大きかったが、得るものも大きかったので良かっただろう。


 そこで今日は早速カレンの魔法の実践使用の練習と金稼ぎ がてら討伐系の依頼を受けることになり、今はギルドの掲示板の前で依頼を探している。


「さて、どんな依頼がいいかな」


「ケンさん、この依頼が良くないですか?」


「シロップベアーの納品か、良いと思うよ。対象の事もわかっているし失敗することはないだろうからな」


「はい、じゃあこの依頼を受注しましょう」


あ、そういえば。


「ギルドカード預けるから依頼受注しておいてくれないか?俺、異能の診断書を紛失したから再発行してくる」


「わかりました」


 俺はカレンにギルドカードを預けて、奥の受付に向かった。


「すいません、異能の診断書が欲しいのですが」


「では、こちらの石板に手を置いてください」


 俺が手を置くと前と同じように石板がうっすらと光って、受付の人が石板の下に敷かれた紙を取り出した。


「こちらの紙に書かれたものが あなたの先天的な異能になります。全部で18個で うち13個が超能力ですか。平均よりも非常に数が多いですね。こちらの診断書はお持ち帰りいただいて構いません」


 ん?ちょっと待て、異能の数が増えてるよな。


 先天的な異能って言うぐらいだから増えることはないと思うが。


 もしかして「先天的」って言葉の意味がわかっていないのか?それとも、「先天的」って言葉の意味が元の世界とは違うのか?


 まあ、目的の物は手に入ったしカレンと合流しよう。


―――


 カレンの方も問題なく手続きができたので、俺達はいつも通りの草原を歩いて目的地に向かっている。ちょうどいいし、カレンに聞いてみるとするか。


「質問なんだけどさ、先天的な異能って増えたりするのか?」


「ケンさん、『先天的』って言葉の意味わかっていますか?」


「いや、それは知っているよ。『生まれつき備わっている』って意味だろ?」


「そうです。だから、変わる事はないですよ」


「そうだよな。じゃあ、さっき貰った俺の診断書を見て欲しい」


 俺はさっき貰った診断書をカレンに渡した。


「あれ?これ本当にケンさんの診断書ですか?」


「ああ、異能が増えているだろ?」


「はい。それといくつかの超能力が上位のものに変わっていますね」


「あ、本当だ。『理解力向上』が『理解力向上・上』みたいな感じに変わっているな。まあ、ともかくその反応だとカレンも俺の先天的な異能が増えた理由はわからないようだな」


「はい。私としては、ケンさんと似たような異能を持つ他の人の診断書と取り違えた可能性の方が高いと思っていますけどね」


「でもよ、カレンの意見が正しいとすれば、俺よりも多い数の異能を持っていて、俺の異能と類似した異能を持つ人がいるということになるが、そんな都合の良い人がいると思うか?」


「確かに、そう言われてしまうと強く反論はできませんね…。あ!この診断書、魔術が載っていますよ。魔術は赤の他人が覚える事はできませんし、この魔術を使ってみればわかりますよ」


「おう、やってみよう」


 診断書に書かれた説明では時間を巻き戻す魔術らしいので、診断書を破いて その診断書に魔術を使ってみることにした。


「魔術は魔力消費量に伴って威力が向上する事が多いので、最初は威力を抑えて使うと良いですよ」


 1分ぐらい巻き戻す気持ちでやってみるか。


「わかった。《大河が如き時の流れよ 暫しの遡行を与えよ 大いなる神の猶予 タイムバックワード》」


 俺が唱えると、破いた診断書は繋がっていき元に戻った。


「これは確定ですね」


「ああ、俺の先天的な異能が更新されたな」


「でも、聞いた事ないですよ。更新されないから先天的な異能なわけですし」


「確かにな」


 原因はさっぱりわからないな。まあ、今考えても仕方ないし、また今度考えるとしよう。


―――


 そんな事を話していると目的地に着いた。今回はこの前の森とは違う森である。場所的にはこの前の森から見てレッドウルフを討伐した岩山を挟んだ反対側だ。


 今回の森は街から少し遠いのでシロップベアー討伐依頼を受けた冒険者が訪れず、シロップベアーが繁殖していまい森の生態系を崩しかねないらしい。


 そのため、今回の依頼の下限納品数は15頭、上限は80頭と前よりも多くなっている。ちなみに今回の依頼では討伐場所が指定されているためギルド職員の同伴が必要だと言われたが、報酬を減らしたくなかったので誓約書を書く事で代えて貰った。


 森に着くなりシロップベアーの姿が見えた。5頭の群れ2つと4頭の群れが1つだ。今の俺達ならきっと一気に倒すことも難しくないだろう。


「じゃあカレン、好きな魔法を練習して良いよ」


「はい。では、ケンさんは少しの間、息を止めてて貰っても良いですか?そして、私が眠ったら起こしてくれませんか?」


「わかった」


 俺は大きく吸って息を止めた。


「《意識を奪う惰眠の風 スリーピング》」


 風が吹き抜けるとシロップベアー達は次々と眠っていった。横に目を向けるとカレンが眠っていたので言われた通り起こした。


「目は覚めたか?」


「はい、ありがとうございます。先程の魔法は、人間などを除いた多くの生物を眠らせることが出来るのですが、使用者も無条件で眠らされてしまうんですよね」


「人には効かないなら俺は息を止めなくても良かったんじゃないか?」


「念のためですよ」


「なるほどな。じゃあ、俺は首を斬り落としてくるから、カレンは周りの警戒をしておいてくれ」


「わかりました」


 俺はシロップベアーの首を斬り落としてギルドカードにしまった。


―――


 その後、1時間半ほどシロップベアーの討伐をしていたが、よく考えてみたらシロップベアーを激しく損傷させるような魔法は使えないので練習にはあまり向かない依頼だったな。まあ、補助系の魔法は使えたようだったし良いか。

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