3.2 偉大なる金の力
緊急性の高さからかレッドウルフ討伐の報酬は4万ブロンと意外と貰える金額は大きかった。1人あたり2万ブロン、日本円で20万円だ。
俺達が2人のパーティだから分け前が多いと言うのもあるが、冒険者は割の良い仕事だな。まあ普通 冒険者は装備品や消耗品の購入に多額の費用を使ってしまうから、第2階級程度の報酬では全然割の良い仕事でもなく、冒険者自身が報酬を趣味などで自由に使うためには第6階級に達する必要があるらしい。しかし、俺達は装備品の新調もしなければ消耗品も買い足す必要もないので、第2階級である今でも自由に使える金がある。
さて、そんなわけで現状 俺達は金に不自由していない。宿代は前払いしているので、極端な話 所持金を全て失ったとしても2ヶ月くらいは今のままの生活ができる。つまり、今回の報酬を全て使っても問題はないだろう。ただ俺の性格的に手元にはできるだけ多くの金を残しておきたいという気持ちはある。しかし、蓄えは2万ブロン程度あったはずなので今回稼いだ金はカレンのために使ってしまうことにした。
使い方はとてもシンプル。カレンに魔法を教えてくれた人に対する謝礼金だ。
―――
カレンと話をして、謝礼金として使うことが決まったので、俺とカレンはギルドで張り込むことにした。時刻は昼過ぎだから高い階級の冒険者達は出払っているとは思うが、低い階級の冒険者にも魔法を使える人はいるので問題はないだろう。
「魔法を使う人ってカレンみたいな服装をしているのか?」
「いえ、服装は人それぞれだと思いますよ。私はこの服の雰囲気が気に入っているので来ているだけですし」
「なるほどな、そうなると服装で判断するのは難しいか」
全ての魔法使いがカレンのようにローブを身に着けてくれれば簡単に発見できたのにな。
「そうですね。ただ、筋肉量とか武器とかでなら見た目で魔法使いかどうかを判断することが可能だと思いますよ」
「確かにな。じゃあ…」
俺が辺りを見回してみると、ほっそりとした女性が掲示板の前にいた。剣や槍などの武器の類も持っていないようだし、魔法使いなんじゃないだろうか。
「掲示板の前にいる女の人なんてどうだろう」
「ええ、確かに武器を持って戦うような人には見えませんね。魔法使いの可能性が高いかもしれません」
「じゃあ、俺ちょっと声をかけてくるわ。カレンはここにいて良いよ」
「わかりました。お願いします」
俺は掲示板の前の女性に近付いて声をかけた。
「すいません、少しお時間よろしいでしょうか?」
「は、はい。なんですか?」
「俺はギルドで冒険者活動をしている柊健という者なのですが、今魔法を使える方を探しておりまして、あなたは魔法を使えますか?」
「はい、魔法学校を卒業しているので数十個の魔法を使えます」
魔法学校?聞いたことがないが、そんな施設があるのか。
「謝礼金をお支払いするのでいくつか見せていただくことはできますか?」
「はい、そういう事であれば喜んで協力させていただきます」
「ありがとうございます。それで急なお願いだとは思うんですけど今から見せていただくことは可能ですか?」
「はい、今日は時間があるので大丈夫ですよ」
「ではお願いします」
俺はカレンを呼び、3人で街の近くの草原に向かった。
―――
「協力していただきありがとうございます。彼女は同じパーティの仲間のカレンです。今回は彼女に魔法を教えていただきたいです」
「ミヤモト・カレンです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。私はミラ・アンダーソンです」
「早速、謝礼金の話で申し訳ないのですが、1つの魔法を見せていただくごとに500ブロンをお支払いしたいと考えておりまして、その条件でよろしいでしょうか?」
「そんなにいただけるんですか!?私としては満足しているので、その条件でお願いします」
「では、始めましょうか。詠唱と魔法名を述べて魔法を使ってください」
「はい、では基本的な魔法から行きますね。《燃やす炎 ファイア》」
ミラさんが唱えると地面の草が燃え始めた。
「これは火を生み出す魔法ですか?」
人見知りのカレンが質問するとはなかなか熱心だな。これなら俺は後ろで見ているだけでも良いかな。
「はい、そうです。使用者が両手で包める程度の大きさの炎を生み出す魔法です。魔力消費も少なく日常生活で着火する時によく使われるので、料理人などには必須の魔法と言えるでしょう。では次にこの火を消します。《濡らす水 ウォーター》」
燃えている草に魔法によって生み出された水がかかり火は消えた。
「水を生み出す魔法ですね。この水は飲んでも大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫ですよ。量は使用者の両手ですくえる程度ですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「このような単純に生み出すだけの簡単な魔法は後2つですね」
「土と風ですね」
「その通りです。5属性の中から無属性を除いた4属性にはこのような魔法があります。続けて使ってみますね。では土を《肥やす土 ソイル》」
土が焼け跡の上に降り積もった。
「そして風が《吹き抜ける風 ウィンド》」
目には見えなかったがカレンの髪が揺れた。
「これらの魔法は最も簡単な魔法と呼ばれており、魔法学校でも1番最初に教わります。応用もできるので非常に使いやすいですね。適性がなくても3日ぐらい練習すれば使えるようになりますよ」
3日で使えるようになるなら俺でも使えそうだな。練習してみるか。
「すいません、質問しても良いですか?」
「はい、ケンさん。どうかなされましたか?」
「この魔法は適性がある場合にはどれくらい練習すれば良いのでしょうか?」
「そうですね、適性がある人なら見るだけでも使えるようになりますよ。それぞれの属性に対応した適性か、『余事適性』が対応する超能力になりますね」
お、ラッキー。俺全部使えるじゃないか。
つか、あれだな。このペースで教わったら覚えきれないな。手帳とかでも買って記録しないといけないな。
「なるほど、ありがとうございます。あの申し訳ないのですが、今日記録する物持ってきていないので続きは後日という事でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。では、次回もよろしくお願いします」
「はい、こちらからもよろしくお願いします」
俺達は街に戻ってミラさんに謝礼金の2000ブロンを渡して、宿屋へと帰った。




