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面接地へ

履歴書を郵送してから3日後に吉井から連絡がきた。「明日面接を行いますので、弊社までお越し下さい」吉井は変わらず優しい口調である。健吾も吉井に合わせるように丁寧な口調で返答した。「承知しました。明日、御社にお伺いいたします。」


面接当日、慣れた面接のはずだが、緊張家の健吾はそれでも緊張していた。朝7時に起き、早々と着替え、面接の準備をした。今でも面接がある日の朝は緊張し、朝早く目が覚める。そして面接の志望動機と自分の長所、短所など聞かれそうな質問の回答を見直した。志望動機は別として、他の質問についてはどこの会社も似たり寄ったりなので、必然と似たような回答になる。何度も繰り返し回答してきた文言ばかりだったので、面接の練習はすぐに終わった。

吉井は面接の時間を10時に指定してきたが、健吾は8時には家を出て株式会社ITVの住所地へ向かった。昨日調べた経路を再度確認する。「家を出て、徒歩5分のバス停でバスにのり、バスで20分。降りる所は荒田八幡電停。そこから歩いて10分」と。健吾にとっては良くある事なのだが、たまに一つの物事に集中すると他の情報が入らなくなる。面接の様な重大な日は特にそうだ。その日の天気や気候など、普通の人ならば面接の日に気にしなければならない事柄にも意識がいかなくなる。福岡で何度か降水情報を確認し忘れて、面接地にずぶ濡れで到着した事もあった。幸いその日は天気に恵まれており、株式会社ITVの住所地に10分前には到着した。


住所地に到着して健吾は困惑した。指定された住所地には18階建の高級マンションが建っていたのである。1回には美容室が入っており、2階から18階は個人が賃貸で住む形のマンションであった。戸惑った健吾は吉井に電話をする。

健吾「お世話になります。本日面接予定の斉藤です。御社の住所地に着いたのですが個人契約用のマンションでして...」

吉井「そのマンションの1801号室ですよ。インターフォンを押せばロックを解除しますので、下の方でインターフォンを鳴らしてください」


健吾はそこで初めてマンションの一室が会社の住所地である事に気付いた。今までマンションの一室が会社であるところを受けた事がなかったため少し戸惑いもあったが、吉井の指示通り1801を押し、インターフォンを鳴らした。


インターフォンを鳴らすと、吉井とは真逆のかすれたハスキーボイスの声で「どうぞ」と言われ、扉のロックが解除された。健吾は中に入り、18のボタンを押す。エレベーターが降りてきた時、子供2人を連れた家族がいた。今まで健吾が受けた会社の面接地ではこんなことはなかったので、少し新鮮な気持ちを感じながら18階へ上がった。


1801号室の扉には確かに株式会社ITVという名札のようなものがぶら下がっていた。今までの面接とは違い、面接会場前での緊張はなかった。おそらくエレベーターで子供2人を連れた家族をみたからだろう。自然と入り口のインターフォンを鳴らす事ができた。

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