就職活動
不幸の始まりは唐突であった。今まで世間一般の目から見れば「そこそこの人生」であったはずが、ある時期をきっかけに男の人生は狂い始めた。そう、「就活」である。
申し遅れたが男の名前は健吾、「健康で我が道を行く」という願いが込められているらしい。容姿は比較的良好。鼻はシュッとして端正な顔だちであった。肌は色白。少しまつ毛の長い目元が特徴的である。彼は元々真面目で正義感の強い性格であった。地元は鹿児島の小さな田舎町であるにも関わらず、他よりも一歩早く就職活動を始めた。2014年当時の就活では、大企業⇨中小企業の順に就職活動が始まることになっていた。彼は大企業が本拠地をおく東京や大阪、福岡などで就職活動を始める。
教育業界に的を絞って就職活動を行ったが、結果は全滅。筆記試験は全て通るのだが、致命的なのは面接であった。彼は生れながらの緊張家であり、口下手であった。あらかじめ用意してあった志望動機でさえ言葉がつまる。
面接官:「弊社を志望した動機を教えてください」
健吾:「私が御社を志望したどっ、動機は、、、、御社の理念の下でっ、、教育を通して、、、今後の日本を背負っていく子供達を、、、育てたいと思ったからです」
と、志望動機を言葉にするのでさえ詰まる。志望動機でさえこの調子なので、他の質問事項に関しては言うまでもない。
この後も地元の県警、中小企業など公務員も含め40社ほど受けたものの面接で通る事は一度もなかった。「一度も」である。彼はそれほど口下手で緊張家であった。