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アリスの独白(ユメ)

「ディバルったら素直じゃないんだから」

 肩を借りながらも苦い顔をしてアリスが文句をぶつぶつ言う。

「ディバルはとても無愛想ですよね。僕も思います。さっきだってそうですよね」

 イルタラが「うんうん!」と言って頷くが、

「いや、私が言ってるのは『何でこんなときだけ笑ったりするのよ』っていうこと。まるで今すぐ死んじゃうみたいだわ」

「一つ、聞いていいですか?」

「なに?」とうなづいた。

「アリスはディバルの何処が好きなんですか?」

 すると一瞬で面を赤らめて顔を背けた。

「そっ、それはぁ~……ただ単にそう想うからなのよ! どこかっていったら……優しい……からだと、思う」

 落ち着いてきて「なんてこと聞くのよ!」と憤慨した様子だった。

「僕には優しいようには見えないけどな~?」

 イルタラは深く考えるようだったが、

「イルタラの優しいとディバルの優しいは違うの――でもね、実を言うと私が勝手にディバルの恋人って言ってるだけで、きっとディバルに迷惑かけてるかもしれない。――だとすると、それを否定しないところがいいの。普段はあんな感じで怖いけど、本当はとっても正義感を持ってるの。さっきだって村人を蘇生したのはそれから。でも、自分が“殺した”相手は生前の姿で生き返らせることが出来るけど、他人が殺した相手は戻せない。だから、ディバルは自分の正義を崩さないようにするために、敵と闘うの。きっと今、ディバルの心の底は消えない炎が全てを埋め尽くしているはず。――私は……そんなディバルが暴走しないために旅についてきてるの。元々はね、私は教会のシスターだったの。でもそこには聖ラコジェの杯があって、それをディバルが奪いに来たの。三年前の話だけど……」

 一息ついてまた語り始めた。目をつむり思い返すように。

「そのとき、村中の人々が総出で、食い止めようとしたの。でも、ディバルの力は強大だった。みんなが死んでいったわ。ディバルを止める力があったのは、私だけだった。―――でもね、そのときに声が聴こえたの。『オレヲトメロ! コロシテクレ!!!』だって。私ね、『コイツ莫迦だ! ひと殺しといって、自分も死ぬなんて卑怯だ!』って思ったの。それと同時にディバルが座り込んでしまったわ。そのうしろ姿がレイラに似ていた――レイラってのはその時の彼の名前。イルタラみたいに優しい人だったわ。でも、ディバルが私から奪っちゃったの――だけどね、私、そのうしろ姿を見て『レイラ!』って走り寄ったの。そしたら、それがレイラじゃないことに気付いて目の前で足を止めようとしたらディバルが手をまわして抱きとめてくれたの。そしたら私ね、きっと緊張の糸がほつれたんだと思う。崩れ折れちゃって、ディバルの腕の中でずっと泣いてた。そしたらディバルが『すまない。俺のせいで、出るはずのない犠牲者を出してしまって』だとさ。最初は全く信じられなかったわ。でもそのあとに私の首筋に生暖かい液体が流れたの。すぐにそれが涙だって知って私が寒いって訴えてると思ったのかしらね。ギュッて抱きしめてくれた……そういうのが私たちの出会いだったわ。そういうところが気に入って、ディバルの彼女って名乗ってるわけよ。きっと、ディバルは私のこと、なんか勘違いしてるかもしれないけど、思いが伝わらなくたって、私はディバルのことが好きだから……――あ、そうだ! 私、出来るだけ早く戻るけど……ディバルが暴走したら、お願い! 殺す気で……止めてあげて……」

 最後に微笑んだアリスを見て、イルタラはその場から走り去った。

「お願い。早く、早く霊よ、消えてちょうだい……」

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