ホルアートのナイフ
「まぁ、私の名前は関係ないけど、ディバルの名前は覚えたよね?」
どうやら、ディバルの名前がかかわってくるらしい。
「イルタラは賢いだろうから気付いたと思うけど、ディバルの下の名前のライキはラコジェの幼少時代の名前ってわかったわよね? で、キャンズはラコジェの苗字でそのまんま。オーバーは家の称号よ。あとは普通に。判ったわね? さてと、余談はお終いだよ。これからが本題。何故、私たちがホルアート村襲ったかって知りたいのよね?……それは、ただ単にディバル自身の所有物を取りにきただけ。そしてなぜ、説明してから取らないかというと誰にも信じてもらえないから。ただそれだけよ」
とても遠回しな言い方だった。
「ひとついいですか? 何故、聖ラコジェのナイフがディバルのものとなるのか僕には納得がいきません」
当然沸いてくる質問である。
「そこからが最も重要なところね。ディバルには前世があるの。その前世とは血の繋がりがあるのかどうかはわからないけどそれに近いことは確実なの。まぁ、前世ってよりは先祖のほうが近いのかなぁ? ただ、その人の記憶がうっすらあるらしいのよね。私も見たことあるんだけど、その人は聖ラコジェの幼名を知っていてラコジェがそこにいて……その人を『師匠』って呼んでいたわ。ラコジェはその人の血を受け継いでいて、その人には奥さんがいて子供が居なかった。ラコジェを養子として迎え入れ、自分の弟子とした。世界の中にこんな記述や言い伝えはないけど、そのあと家を出たラコジェをその人はつけていて、その途中で病にあい死んだわ。でも、その記憶の中にラコジェが女性と会っていることがあったの。まぁ、隠し彼女とか言うやつかしら? ラコジェもお茶目だったのよね。きっとその女性との間に隠し子を作ったのかもしれない。そしてそれが直接のディバルの先祖さま、なのかもしれないの。ま、それって二百年以上前の話になるんだけどね」
「……観るってどういうことなんですか?」
少々迷った末に聞いた。
「えっとね、それ――」
「感じたか?」
ディバルが口を開いた。その言葉は、はっきりと――だが、向きはせず――イルタラに云っていた。
「――……今感じた」
「あら〜? なにかきたのね。――怖い……なんかあたりの温度が変わってきてる……」
アリスも表情を変え、何かがいることを察した。
「じゃあ、そいつのいる方向へ行くぞ」
「わかったわ」
「わかたました、ってバカですか、ディバルさん?! 逃げるほうが言いに決まってるじゃないですか!!」
イルタラの通常神経が与えてくれるつっこみがでた。
「ディバルは当たるほうがいいの。止められないわよ? この戦闘好きってのは」
アリスがアリスなりにディバルの弁護をする。
「もし、俺達を追いかけている者であったらずっと後ろを気にかけていないといけない。そうなるとあとから面倒だ」
ディバルはディバルなりに自身を弁護した。
「……わかりましたよ。行きましょう」




