再び上がる復讐の幕
「――じゃあ、復讐って何のためにするの?」
アリスが髪を弄りながら訊く。
『復讐、それには二つある。まず一つ、相手の大切な人を殺す。二つ、その本人を殺す』
壁の外からレイラの声が聴こえる。
木の壁とレイラの〝身体〟とが融合して揺れた。
『俺は希望を叶えたい。ディバル、お前は勇者なんだろ? 俺にお前の血を捧げろ、そして死ね』
木の壁から出てきたレイラは焼けたはずの顔がすっかりもとの戻っていた。レイラの出てきた壁には焦げた後がはっきりと残っている。
「レイラ……? どうして戻ってるのよ」
恐怖に怯えた声でレイラを見る。
「アリス、あの時は護れなくてごめん。でも、遅くなったけど君を迎えに来たよ。君は俺の元に戻るべきだ。さあ一緒に行こう――そして、ディバルという名の勇者を永遠に滅ぼして、俺たちは幸せに暮らそう」
ニッコリと笑って手を差し伸べるレイラは作りたての人形と同じ様に不自然な表情が見えた。
「“悪”に全てを握られたのか、狂いおって……――〝人形〟が生身になれるわけもない。すべての未練が果たせたら消えるだろう魂がそこまでの欲を持つとは――奴はこの私、雪風丸が消す!」
と、傍にいたレンが、
「状況は全て分かりました。『希望歌花』は“悪”に満ちた人が近くにいるか、その人が願うとそれと全く反対のことが起こります。彼の場合は理想は崩され、こちら側が有利になります。しかし――アリスさんの命が終わってしまいます」
雪風丸が頷くと、
「では、彼を消させて頂きます!」
レンが魔術を展開させた。
「テナン・シルク、ダークステージオープン。全ての力で敵・レイラ・ルネサンスをあの世へ送る!!」
「まてっ?!」という間もなく、レンがベルトに挟んであった杖を持つ。目の色がスッと変わった。青かった左目が赤黒くなったのだ。右目はまるで役目がないかのように閉じかけている。
「関係のない奴は首を突っ込まなくてもいいんですよ?」
レイラはレンに歩み寄る。
「嫌だ!! 近づくな。私を“悪”に侵さないでくれ!」
そういうレンは目に涙を溜めていた。そこでイルタラが楯になった。
「君はいいんだ。僕達が君に迷惑をかけてるんだ。君は闘わなくていい。ここは僕がっ」
イルタラがレイラに腹を殴られ、血を吐いた。アリスが今にも飛び出して止めようとしているところをディバルが前に出てきて止める。
「アリス、すまない。これで負けたら素直に奴のところに行ってやれ。そしたらお前が奴の心を清めてやるんだ、いいな?」
アリスが後ろからディバルにすがりついた。
「レイラのとこって私に死ねっていうこと? 嫌よ、あなたと一緒の場所に行く。私は過去なんかと過ごしたくないわ! 絶対…に…」
ディバルがアリスの手を離した。
「俺の言っていることがわかってないらしいな。俺の、いや俺たちの目指すものって何だったか覚えてんのか?」
ディバルが耳元で囁いた。そしてアリスが崩れて呟いた。
「私たちが目指すもの、平等な安泰的な時代――平和を作ること」




