〜転生〜
ここはどこだろう?
リヴェイ・アドバーグが死を受け入れ、意識を失ってからどれほど経ったか、彼は真白な空間で目を覚ます。
安らかな感覚が全身を包み込み、心地が良い。
「そのまま寝転がったまま聞いてくださいね」
どこから女性の声が聞こえる。
普段なら聞き慣れぬ声など放っておかないが、この居心地良さのせいか、また死した後で抵抗する気が湧かないのかは、彼自身理解していない。
「貴方は残念ながら死にました。ご愁傷様です。しかし不幸中の幸いと言いますか、貴方が生前行っていた善行が評価され、貴方の願いは叶います」
「それは、人間と共存できる。ということか?」
「ええ、その通りです。おめでとうございます」
その真偽が判らずとも、リヴェイはそれこそ飛び跳ねたいほどに嬉しかった。
しかし身体は重く、動く元気がまるでない。
「貴方が人間界で生きていく上で、守って欲しい規則が幾つかあります。
一つ目は魔力を極力使わない。明確な基準を説明することはできないので、注意、警告、制限、懲罰の順で対処させていただきます。
二つ目は人間との戦闘は最低限に留める。これはわかると思いますが、貴方と人間が戦ったら結果は言うまでもありません。戦闘行為は最低限、最小限でお願いします。
三つ目、生前のことを人間に知られないこと。これは厳守でお願いします。
以上の三点が基本的なルールです。加えて今から暮らして頂く世界のルール、規則などは個人で調べてください」
「ああ、最善を尽くそう」
リヴェイは弱々しい声で、それでも確固たる意志を告げる。
「では今から地球という星、日本という国で暮らして頂きます。くれぐれも先程の規則を破らないようにしてください」
「……問題ない。……こう見えて私は……平和主義だ」
だんだんと瞼が重くなり、意識もはっきりとしなくなっていく。
「それでは、これから人間社会を謳歌してくださいませ」
もはや返事すらできなかった。
抵抗できぬ睡魔のような感覚を受け入れながら、リヴェイはこれから訪れるだろう素晴らしき日々を夢想する。
そしていつしが意識は落ちていった。