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世界のお話

植物の世界

作者: 菊池

途中急展開です。

この世界の大半は森で埋め尽くされている。

その中で私は生きている。

私は植物だ。いや正確には植物だったと言ったほうが正しいだろう。

今は喋ることもでき、歩くこともできる。

どうしてそうなったか。

というと人間たちは私たち、植物を研究していた。

毎日のように、薬の材料にされていた。


私の周りの仲間たちも一人、また一人と消えていった。

私もいつ殺されるか、そう怯えていた時だった。


私たちの中に歩き、喋ることのできるものが現れた。

多くの物が人間のような形をとるようになった。

人間が私たちに手を加えていたせいだろうか。

それとも数が減っていき突然変異でもおきたのだろうか?


私たち、植物は多くのものが動けるようになった。

そして人間達と私たちの立場は逆転した。

私たちが人間を食べるようになった。


しかし、人間がおとなしく従っているわけもない。

人間は私たちと戦い始めた。

しかし戦いになるわけもない。

当たり前だ。なぜならこの世界はほとんど森なのだ。

いうならばそこらじゅうに私たちの手足があるようなものだ。


負けるわけがない。燃やす、そういう手段を用いられたこともあった。

しかし私たちの中にも水を吐き出せるものもいる。

そうやってわたし達は人間を駆逐していった。




そんな時私はあの人に会ってしまった。

私が森を散歩していた時だ。


そこで一人の人間と出会った。


「あら、人間じゃない」


普段人間は集団で隠れている。

この様な見つかりやすい場所にはいない。


「ああ、植物か」


その男は驚くわけでもなくそのように呟いただけだった。


「ん? あなたは逃げないの?

 大抵の人間が私たちを見たら逃げ出すのに」


「ああ、もうどうでもいいさ。俺の住んでいた隠れ家は残った食糧争いで殺し合いさ。俺はそこから逃げてきたのさ。もうどうにでもしてくれ」


私は目の前の不思議な人間に興味を持った。

いままであった人間は会った瞬間逃げ出すか、襲いかかってくるかのどちらかだった。このような人間に出会ったのは初めてだ。


「ふうん、面白いわね」

「お前は、俺を食べないのか?」

「そうね、今のところわね」

「じゃあ、どうするきだ? お前の仲間にでも渡す気か」

「ただ、話し相手にでもなってくれればいいわよ。

 最近暇していたところだしね」


最近、新しいことが特にないのである。

それならこの人間に話を聞くのもいいだろう。


「お前は俺達を恨んでないのか?」

「恨んではいるわよ。ただ人間全員がわたし達を

殺していたわけじゃないでしょう」


「いや、まあそうかもしれないが……」


「じゃあ早く私の住処行きましょう。

このままここにいるのは少しまずいわ」


「どうしてだ?」

「私の仲間が来たら貴方を食べてしまうでしょうから」


この人間と私の住処に行く。


「じゃあ、この世界のことについていろいろ教えてよ。

今まで動けなかったから、この辺りの事しか分からないのよ」


「そうだなぁ、この世界についてか……」


私はその時様々な話を聞いた。

全く木の生えていない砂だけの土地、見渡す限り真っ白な土地、

そのような話を聞いた。


「面白いわね、この世界にはそんな場所もあるのね。

もっと話を聞かせて欲しいしここにしばらくいてくれない?」


「それ、俺に拒否権はあるのか?」


「よし、じゃあ決定ね。なにか必要な物があったら遠慮なく

言ってちょうだい、用意するから」


「あー、じゃあ服を着てくれないかな……」


「服?」

服とはなんだろう。人間がいつも身につけている物だろうか。


「あー、俺たちが着ている物だよ」


「何か無いと困ることでもあるの?」


「いや、その……目のやり場に困るというか……」


ひょっとしてこの人がずっと顔を赤くしているのは

そのせいなのだろうか。


「まあ、気が向いたら用意しておくわ」


「気が向いたらじゃなくて用意しておいてくれ」


いろいろなことを話している内に夜になってしまった。


「まあ今日は寝ましょうか。明日また話を聞かせてね」


「それはいいが……本当に食わないんだな」


「あら? 信じてなかったの?

食べるならその場で食べてるわよ」


「まあ食べられなくて良かったよ」


苦笑しながら彼は言う。

そんなことを話しながら眠りにつく。


一人じゃない夜は久しぶりだった。


わたし達は基本的に一人一人に縄張りがある。

そのため、他の仲間といることはあまりない。

番でもいれば別なんだろうけど……



朝、起きる。


「おはよう」

彼はもう起きていたようだ。


「ん〜、おはよう。よく眠れた?」

私は伸びをしながら答える。


「ああ、うん、よく眠れたよ。

今日俺はどうすればいいんだ?」


どうみても彼は眠そうだった。

眠れなかったのだろうか。


「うーん、そうねぇ。私は人間を襲いに行くから

私の縄張りの中なら何しててもいいわよ。誰か来ることも無いだろうし

食べ物はその辺にいる豚や兎なら勝手にたべていいわよ」


「人間を襲いに行くのか」


「やっぱり同族が殺されに行くのを黙っていていることは出来ない?」


「いや、もうあいつらなんてどうでもいいさ」


彼は吐き捨てるようにそう言った。

食糧争いで逃げてきた、と言ったし何かあったのだろう。

私はその事について深く聞かないで出掛けた。



仲間達と人間を襲いに行く。

彼がいた場所の辺りを探すと、洞穴があった。


洞穴の中には沢山人間がいた。

私達に見つかったと分かった瞬間、悲鳴を上げる者、逃げ出そうとする者がいる。


そんな人間達を仲間達は取り込んでいく。

私は彼みたいに話せる人がいないか探していたが話しかけても

悲鳴を上げ、逃げるだけだった。

まあ、仕方ないことだろう。あの彼が普通ではないだけだ。

話すのは無理みたいなので私も仲間達と同じように

人間を取り込む。


やっぱり人間はいい養分になる。

これでまた新しい花を咲かせることができるだろう。

私達の仲間の中には人間に対する恨みで殺す者もいるが

栄養を得たくて殺す者もいる。


私は後者だ。人間など割とどうでもいい。

私の子供たち、否私の住処の花や木々を繁栄させることが一番大事だ。


不思議と子供たちで

いままで私のように動けるようになった者はいない。

周りの仲間たちもそのようだ。子供たちには引き継がれないもの

なのだろうか。





住処に変えると彼は寝ていた。

やっぱ夜眠れてなかったせいだろうか。

周りの植物に聞くと彼は近くの川で水を飲み、

あとは花を見ていただけのようだ。


「おーい、起きてー」

他にも話を聞きたいし起こさなければ。


「ん、んぁ。帰ってきたのか」


「帰ってきたわよ。早く話を聞かせてよ。

 あ、でもその前にご飯かしら。なにも食べてないでしょ?」

まあ私はたくさん養分を吸収してきたから必要ないが。


「ああ、さすがにお腹すいたな」


私は近くの木から木の実と果実をもらう。


「はい、これ。人間が食べてたものだし食べれるでしょう?」


「ああ、ありがとう」


彼はおいしそうにそれを食べる。

どうやら喜んでもらえたようだ。


「じゃあ話を聞かせてもらえるかしら」


そうやって

朝は人間を襲いに行き、昼からは彼と話をする。

彼の話はとても面白い。

私の知らない知識をいろいろと教えてもらった。

そうしてそんな日々が続いた。


ある日、子供たちのことについて尋ねた。

「そういえば私の子供たちは動けるようにならないのはなぜかしらね?」


「子供たちって……ここにいる花達のことか?」


「そうよ。なぜ動けないのか分からないかしら」


「そもそもどうやってこいつらを生んだんだ?」


「あら、言ったこと無かったかしら。私の体の一部に

 蔦や花があるじゃない。そこで受粉して種ができるわよ」


「そうなのか。 じゃあ……その……」


彼はなぜか口ごもる。なぜだろう。

「どうしたの。はっきり言いなさいよ」


「その……体のほうのはどうなっているんだ?」


「体のほう?」

彼だのほうとはなんだろうか。

そう思っていると彼は恥ずかしがりながら

生殖器とやらについて説明してくれた。


「人間にはそんなものがあったのね」


「今はお前たちにもあるけどな……」



こうやって彼と過ごしているうちに私は彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていった。

そういえば彼はなんでここから逃げないのだろうか。

不思議に思って聞いてみた。


「なぜ貴方はここから逃げないの?」


「そりゃ、逃げてもお前の仲間達に食われるだけだしな。

お前は俺を食わないだろう?」


まあ、もう彼を食べる気は私にはない。


「食べてしまうかもしれないわよ?」


「その時はその時さ」


そういって彼は笑う。

「このまま、一緒に暮らすのは無理なのかしら」


「一緒に暮らす?」


「そう、二人でこのまま暮らすの」


「それは……」


やっぱり無理だろうか。

無理もない。元々彼は無理やり連れてきたようなものだ。


「いいぞ。というか俺もそうしたい」


「っ、いいのっ?」


「ああ、俺も好きだ」


「ありがとう!」

そういって彼に抱きつく。

彼はまた真っ赤になっている。

そんな彼がとても愛おしかった。


「ん? そういえば好きってことはさっき

 言ってたことをしたいということ?」

そういえば彼は言っていた。好きあっている

男女はそういうことをするものだと。


「おまっ、いや、まあ……」


私はそのまま彼を押し倒す。

「じゃあ……しましょうよ」


「え、ちょっと……まてっ」


「やだ、待たない」


----


朝、

「ふぁぁぁ」

彼はまだ隣で寝ている。

昨日ははしゃぎすぎた。

彼とずっと愛し合っていた。


子供はできるんだろうか?

今までにそういうことをしたことのある仲間が

いないから分からない。


「ん、おはよう」


「おはよう」

彼が起きたようだ。私は抱きつきキスをする。


「んぐっ!?」


十分に彼の唇を十分に堪能したところで

彼の唇から私の唇を離す。


「ちょっ、朝から何してんだ」


「ん? 何ってキス?」


「そういうことじゃなくてな……」


「なによ、昨日はもっと凄いことしたじゃない」


「いや…そうだけど……」

彼はまた真っ赤になる。



それから私達はこの森を離れた。

この森には私の仲間がいる。彼女達に見つかるとまずいからだ。

ずっと住んでいた森を離れるのが寂しくないというのは嘘になる。


だけど彼と一緒に行けるのならどこでもよかった。


私達は住んでいた森から遠く離れた土地で二人で過ごした。


しばらくすると私達の間に子供が生まれた。

どうやら人間としての繁殖機能はあるらしい。

子供たちも私と同じように動くことができる。


「お父さーん、お母ーさん」

そういいながら川で遊んでいる娘達が手を振る。

私も手を振りかえす。


「まさかこうやって生き延びてこんなふうに暮らすこととなるとはな」


「あら何か不満?」


「そんなわけないさ」


このまま私達、「家族」でずっと幸せに暮らしていける。

もう私が一人になることもないだろう。



















































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