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5ショートストーリーズ7

通勤電車

会社に行く為の通勤手段。それは電車に乗ること。そんな電車の中にも、独特な味はあるのだ。

 いつもの時間。朝8時7分発の電車。


 今日も階段からすぐの場所で待つ。間もなく定刻通りに電車がや

ってくる。


 ちゃんと順番を待ってドアが開いたら乗り込む。


 そこに居るのはいつもの顔ぶれ。どこの誰とは分からないけれど、

面白い事に、大体いつも同じ場所に、いつもの顔。


 特に挨拶などはしない。だって、知らない人達だから。


 でも、月曜から金曜日まで、毎日見る顔だ。親しみとまではいか

ないが、親近感は少しはある。


 きっと彼らも同じ様な気持ちでいると思う。


 そう言えば、会社の昼休みに、町の食堂ではっと思った事があっ

た。


 すぐ傍で見たことのある人が食事をしている。あれ? 誰だった

かな? 取引先の会社の? いやいや、違うな。え? う~ん…


 暫く考えていると、その人は立ち上がり、お会計をして出て行っ

た。


 あ! 立ち上がったその姿で気がついた。朝のあの車両にいる、

中の一人だ。


 考えてみれば、電車の中でしか、しかも立ってる姿しか見ていな

いのですぐには分らなかったのだ。


 こんな風な、特に知り合いって訳じゃないけれど、何となく親近

感もある人達だ。



 ある朝、いつものようにいつもの電車に乗っていつもの駅で降り

る二分前、一人の男性が恥ずかしそうに周りを見回しながらしゃべ

り始めた。


 電車の中でそんなコトをする人はまあ、いないので、彼の言葉は

割と通り、車両中に響く。


 その男性はいつも地味なスーツに身を包んでいる、ハット帽をか

ぶった老紳士だった。


「みなさま、いきなりですみません。あの、わたし、今日がこの電

車、最後なんです。定年になりますので。これまで同じ時間にこの

電車を利用してきたみなさま方、どこの誰とは存じませんが、今日

までありがとうございました!」


 そう言って深々と頭を下げた。周りの乗客たちは一瞬間を置いて、

みんな一斉に拍手をした。

「おつかれさま!」

「これからも頑張ってください!」

 俺も拍手をし、ついこんな声までかけた。


 拍手は電車が駅についてドアが開くまで続いた。


 どこの誰とは知らぬ一人の乗客。親しみとまではいかないが、や

っぱり親近感はある人。


 多分街中で出会ってもすぐには分らないかもしれないね。


 俺も他の人から見たらそういう人間なんだろうな、と思ったら何

となく複雑な気もしたが、人波に押されるようにしてホームに下り

たら、そんな考えも人波に流されるように、次第に小さくなってい

くようにも思えるのだった。



多分、バス通勤、バス通学の方も 毎朝同じメンバーの顔を見ることもあるんでしょうね…

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんかわかるー、というのと、こういうのあったらいいなーというのと。面白い話でした。
2014/12/26 20:21 退会済み
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