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サバイバー私のICBM

205号室のドアノブは、嫌にひんやりとしていた。

まるで、手を氷水にでも突っ込んだみたいだ。



もし、

もし、ここ《205号室》に先住民がいたとしよう

その場合どう対処すべきか

もちろん殺してでも奪う覚悟は出来ている

しかしそれでは、まるで西部開拓時代の悪いアメリカ人みたいじゃないか

いいや、あくまでも返してもらうんだ

ここは私の家だ





部屋に誰かいるかもしれない、という不安を完全に払拭することはできなかったが、朝までずっとここに立って待ってるのも寒そうだし、なにより私が不憫だ。


今私は確実に、殺るか殺られるかの瀬戸際に立たされている。

悲劇のヒロインなんかじゃいられない。

血糊ビチャー脳みそバーンが売りのストーリーを無視した下手なB級スプラッター映画の主人公にでもなりきったつもりでいなければ私が殺されてしまうかもしれないわけだ。緊張のあまりに心臓がお口からドロッと顔を覗かせてしまいそうになったが、なんとか耐えた。


誰が何を言おうとここは私の家だ。百人中百人の人が「ここあんたんちゃうで」と言おうが、ここは私の家なのである。


もし私以外の誰かが住居に侵入していて、万が一そいつに怪我を負わせてしまったり殺してしまったりした場合「他所よそもんが勝手に家に入り込んでたから殺しましたー」とかなんとか言えば罪には問われないかもしれない。いや、そもそも私は西武開拓時代に悪いアメリカ人ではない。自身の居に戻ってきた、それだけのことなのだ何を気負う必要があろうか。私の家に私が居て何が悪いのか。ちゃんと家賃だって払っていたんだ。もちろん部屋の解約しないまま旅に出ようとした事は褒められたものではないってことはよく分かっている。でも現にこうして戻ってきたわけだから咎められる筋合いもないわけだ、、、、



えーい、まどろっこしい。



考えをまとめきらないまま私はガサツにドアノブを回す。



部屋の中はすっかり暗闇に還っており何も見えない。

それに私は煙草はやめたはずだが、煙草の香りが漂っている。


ポールモールのような芳しい香りだ。アメリカンスピリッツとも似ているが、アメリカンスピリッツ特有の雑味のある香りではない、などとよく知りもしない煙草薀蓄を

頭の中で交錯させながら、ゆっくりと歩を進める。いついかなる時襲われても良いように自決道具でもあり武器でもあるロープを固く握り締めたその時。


「あんたウチで何してんのさ」


ふいに前方から声をかけられたため、口から脈打つ心臓が少し飛び出てしまった。


「あんたもこっちに来たクチかい。本当多いね最近。で、何ウチに何か用?」

そう言いながら、奴は部屋の明かりを点ける。あろうことか私の目に最初に飛び込んできたのは、群青色のタンクトップシャツの巨乳だった。


「うわ、あんた口から心臓飛び出してるけど大丈夫?」

巨乳に指摘され、私はトクントクンと脈を打つ心の臓を元あった場所に戻す。


「ここ、私のアパート」

これが私の記念すべき第一声だった。これでも必死に考えて絞り出した言葉なのだ。

「違うよ、あたしの家だ」タンクトップ巨乳は譲らない。私は言葉を詰まらせてしまった。


タンクトップの巨乳は、机の上に置いてあった煙草の箱から一本を取りだし

「あんたもどう?」と私に差し出す。

「いい、もうやめたから」と断ると

「あ、そっ」と言いながら巨乳は差し出したその煙草を、咥え火をつけた。

私が睨んだ通り、煙草の銘柄はポールモールで間違いはなかったようだ。



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