先輩は美人でした。
おい…おい、起きろ…
おい、起きろ…
うーん、誰だ俺の眠りを妨げているのは…。気持ち良く寝ていたのに…。
「おい、起きろ新人。さもないと蹴りとばすぞ。」
こわ!え、いきなりそんなこと言う!?
しかも綺麗な女性の声で。
ちょっと変なモノに目覚めちゃうかも…。
流石に目を開けて見るとそこには黒髪の綺麗な女性がいた。思わず見惚れてしまうほど、その人は綺麗な切れ長の瞳をし、整った輪郭、すっと高い鼻、ふっくらとした薄紅の唇…。
「ようやく起きたか。新人のくせに私に起こさせるなんて生意気なやつだな。私は 宮島 沙羅という。…おい、返事をしろ。私の顔になにかついているのか。」
…は!
どうやらぼーっと見つめていたらしい。
「すいません、あなたが綺麗でつい…。あ、初対面でなに言ってるんですかね!すいません!」
「ふ、良く言われるからな。気にするな。」
そういってるけどなんか顔が赤いような…。
ようやく落ち着いて周りを見渡すと、そこはコテージの様な内装で、アンティークな感じの部屋だった。
「すいません、ここってどこなんですかね。あとさっき言ってた新人って…?あ、俺は田辺 陣といいます。」
すると赤い顔から一転して、こちらを嫌そうに見て
「なんだ、佐久間からは何も聞いていないのか。私に説明させるつもりだな…。」
佐久間…。あ…ああ!段々思い出してきたぞ!!
「派遣の仕事とかいっていきなり異世界とか訳のわからないことを言われて、急に足元から光が…。気付いたらここに!!」
「落ち着け、その様子では悩みを解決しろ。くらいしか言われてないようだな。ままずはここが異世界というのを認識させるか。ちょっとこい。」
そう言って宮島さんは俺のことを部屋の外に引っ張っていった。
あ、手繋いじゃった…。手も綺麗なんだな…。
なんてニヤニヤしていると
「さあ、周りを見ればここが異世界だというのが良くわかるだろう。…なんだいきなりニヤニヤして。」
やば、見られてた!!すげー恥ずかしい!!
わたわたしつつ周りを見渡すと、そこはゲームの様な世界だった…。
「…宮島さん、あの、遠くにあるお城みたいなのってなんですか。それとなんで鎧や剣持ってる人いるんですか…。」
すると宮島さんは得意気な顔をして
「だから言っただろう。ここが異世界だと。」
「いやいやいや、普通信じれませんよ!映画のセットか何かじゃないんですか?」
宮島さんはまたもや嫌そうな顔をしてため息をついた。そしていきなり顔を寄せてきた。
え、キス!?初対面ですよ!?いいんですか!!
そう思い目を閉じていると
「外では宮島と呼ぶな! サラ・ミャートゥだ。それと映画のセットなんかではない。そこの屋台の人を見てみろ。」
あー、はい。キスなわけないですよね。
ただ小声で話したかっただけですよね。
悲しみつつも屋台のほうに目を向けると…。
「え、耳が獣耳!え、尻尾もある!!ホンモノ!?なんですかあれ!?」
そこには猫や犬などと思われる耳と尻尾を生やした人々が美味しそうに屋台の飯を食べていた。
「ああ、本物だ。ここは地球で言うところのRPGの様なゲームと似ている世界だ。」
「な、なるほど。流石にこの目で見てしまうと納得するしかないですね…。じゃあ、魔法とかギルドもあるんですか!?」
興奮したように言う俺に対し苦笑いをして宮島さん、いやサラさんは顔を離し家へ入るよう即してきた。
「続きは家の中で話そうか。ここで話す内容ではないしな。」
いよいよ俺がこの世界で何をやるか教えてもらえるようだ…。
いきなり拉致のように異世界に派遣されたが腹をくくるか。