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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第一章   ~学校怪奇編~
4/92

#4 占いと美少年と

 転校してから数日が経った。

いきなり停学になったり世界でも有数の妖怪と戦ったり、同業者の人間に襲われたりなんだか分からないうちに同業者と仕事したり。

そんな甲斐あってか、一気に親しい友人が出来た。

クラスメイトとも、仲が良くなり、そして偶然なのか運命なのか、護とみゆという同じ退魔師という仲間が出来た。

というより勝手になったとでもいうか…。

そして今日も学校。

すっかり仲良しになった護。

学年は同じ二年生。

だが聞くとこによると年齢が違うらしい。

本来ならば護は琉嬉の学年が一個上だと言う。

去年ずっと一年間の休学してたとか。

どうやらお金がなくって退治屋の仕事をしばらくやっていたようだ。

だがそこまでしてなんでこの学校に通ってるかは不明。


「ちょっとお金欲しくてさ~。ずっと稼いでたのさ~。だから一年休学してた」

だそうである。

(なるほどなー。相手が生きてるヤツ相手ならばその分仕事が多くなるか…。霊的なのばっかりのウチの仕事より効率いいかもね…)

 たしかにそうしょっちゅう霊的の仕事はあるわけではない。

とはいえ、琉嬉は有名な彼方家の一族の人間。

時折本家の方から悪霊退治の仕事のおこぼれみたいなのがあるらしい。

少ない仕事の足しにするために、琉嬉は一回の依頼に多額のお金を要求したりするとかなんとか。

そうした経緯から悪名高く有名になっているとの護の話。

「お高いロリ退魔師・琉嬉」と裏世界ではどうやら有名になりつつあるらしい。

「あ、それおじいちゃんから聞いた事あるよっ」

 その事はみゆも聞いた事あるという。

「……学校では凶暴な天使に裏世界ではお高いロリ退魔師…なんで変なあだ名つくんだろうね。まったく。誰がロリだ誰が…」

「えー、可愛いじゃん?」

「可愛いワケあるかっ」

 朝からご立腹である。


「ねぇ、護。あんたの他に能力者みたいの他にいるのは知らないのか?」

「だーから、言ったでしょ~。あたしだって今学年度から完全復帰したばっかだし」

 相変わらずクリームパンを食べながらしゃべる琉嬉。

その姿が大変かわいらしい光景。

「でも一年の時は通ってたんだろう…?」

「結構単位とかギリギリだったしね……あんまし覚えてないや」

「…同じ学校の生徒とは思えない発言だな…」

 呆れる琉嬉。

「でも、まあ能力者っぽいのが、めぼしいのいるんだよな」

「え?マジで!?」

「なんか女みたいな顔した男子生徒が」

「女みたいな顔した男子生徒…?そんな男子いたっけ?」

 まだ高校生。

完全に成長しきらない者もたしかにいる。

幼さが残る者は沢山いる。

例えば琉嬉とか。

「うちの学年じゃないっぽいなー。3年か1年かな」

「へぇ…」

「その男子をどうするの?」

「部員に引き入れる」

「そりゃまた強引ですな…」

 あと一人入れば部活として認められる。

そのためにどんな手でも使ってという気持ちのようだ。

「みゆに聞いてみよう」



 午後。 琉嬉は校内を歩き回っていた。

最終的には一年生の校舎内。

職員室付近。

その他科学室やらの教室。

体育館。

やはり浮遊霊が少々いた。

害はなさそうなのでほっとく琉嬉。

前みたいな悪霊化したようなのは危ないので殲滅するが弱くて力のない人間にも害がなさそうなのは

こちらの余力が無駄になるので放っておく。

てくてく歩き回る琉嬉。

かといって歩き回っていても何もない。

そう思っていた時。

「琉嬉先輩~」

「おぅ」

 みゆと合流する。

「この子が?」

「そだよ」

 みゆが引っ張るように引き連れてきた人物。

「ちょちょ、なに突然?港咲さん…って、あれ?」


 例の女顔の男子生徒。

見れば見るほどかわいらいしい顔をしている。

「…え~と…なんだっけ」

「神楽です。神楽御琴かぐらみこと…ですけど…こちらは彼方さん?」

「ああ、そうそう。神楽。お前の事探してたんだ」

 適当に言う。

この女の子のような顔つきの美少年の名前は神楽御琴。

名前も少し女性的だ。

髪が少し長めのせいか、少し茶色にも見える髪。

背もみゆより少し高いくらいで、平均的な男子よりは小柄だ。

「え…と、なんですか一体?」

 神楽には訳がわからない状態。

突然、同じクラスのみゆに連れ出された。


 琉嬉は以前、この御琴という少年と会った事があるという。

会ったと言ってもほんの数分間だけだが。

「お前さん…見えてるよね?」

「見えてる……って何がですか?」

「この学校に出没する幽霊を」

「幽…霊ですか…」

 琉嬉は御琴が幽霊が見える者だと確信していた。

なぜなら、ある日琉嬉が追いかけてた浮遊霊を御琴らしき人物が偶然にも居合わせたからだ。



とある日の放課後――。

パラパラと帰宅していく生徒達。

「帰るか…」

 廊下出て、玄関に向かう。

ふと目の前を通る「影」。

またもや「影」が視界に入った。

「……今日二回目かよ…」

 祓おうと瞬間。

「あ…ゆ、幽霊…?!」

「!?」

 男子生徒が目撃していた。

(…見えるのか!?)

「あ…消えた…」

 完全に見えている様子だった。

迂闊だった。

何せ対処しようとしてるところを見られたからだ。

この事はなるべくバレない様にしたい。

でないとこういった活動し支障がなんらかの形で出るからだ。

この日は何もせずに一旦帰る事にした。

出来事を簡潔に述べた琉嬉。

「ってなコトがあってね。僕は知ってるんだよ~。あの時…お前さんも僕と同じ「モノ」を見てたはずだ」

「あ、いや…それは…」

「ほんとのコト言っちゃいなよ~」

 なぜかみゆも迫る。

謎のプレッシャーに耐え切れなかったのか御琴は小さくため息を吐く。

「はぁ~。たしかに…僕は見える側の人間ですね…。でも、別に特殊な力とか持ってませんよ?」

「見えるだけでも結構。これで4人揃ったね」

「あの~、話がみえてこないんですけど…」

「あれ、言ってなかったけ?」

「何も聞いてません!」

 みゆはただ強引に連れてきただけだ。

話は何もしてない。

「おい…みゆ。説明もなしに連れてきたの?」

「え、いやだって~、説明したら来ないかと思いまして~えへへ」

「えへへじゃない」

 べしっとお決まりのチョップをみゆの脳天にかます。

「あ痛だ~」

 悶絶するみゆを無視して会話を続ける。

「僕はね、この学校にふかしぎな事件を解決する部活を作りたいんだ。だから部員が必要なの。御琴クン。やってくれるよね?」

 ガシッと小さいながらも力強い琉嬉の両手が御琴の肩を掴む。

「そんないきなり…」

「イヤなの?」

 強烈なジト目が御琴の目線を襲う。

「はい……何とか」

(みこっちゃんゴメン)

 影で謝るしかなかったみゆだった。



「なるほど…この学校に原因があると?」

「確かな事は言えないけどね…神楽は何かわからない?」

「いえ…ほとんど…」

「そっか」

 この学校や周辺に起こる怪奇事件。

琉嬉がこちらに引っ越してきから來魅などの妖怪。

頻繁に現れる幽霊。

護やみゆという存在。

何故もこうも沢山あるのか。

それを知りたいのだ。

だが御琴に聞いても分からない。

そう諦めかけたその時、

「占いでわかるかもですよ?」

「はぁー?」

 唐突に占いなどと言い出す御琴。

どこからか取り出す水晶玉。

まさに占い道具。

ささっと水晶に手をかざす御琴。

「…てか占いでそんなのわかるのか…?というかなんで占い??」

 困惑する琉嬉。

「………ブツブツ」

 呪文のような言葉をブツブツ言う御琴。

それっぽい。

「何かわかるのか…?」

「みこっちゃん占いなんで出来るの~?すごい!」

「人は見かけによらずだねぇ」

 不安になる琉嬉。

楽しむみゆ。

関心する護。

不何になる琉嬉も無理もない。

大体占いで調べるような事でもない。

「…出ました」

 占いの結果が出たようだ。

「……何がわかるの?」

「この学校…の行く末なんですけど…、光在る所闇に舞い戻らん、ですね」

「意味ワカラン。却下」

「えええぇぇーーっっ!!そんな!?」

 琉嬉は速攻で却下した。

というより誰が聞いてもワケが解からない。

「…なんだ光在るところなんたらって。意味深のように思えてまったくわからないじゃんか」

「そこをなんとか…聞いてください」

 懸命に引き止める御琴。

自信があるのか。

説明をし始める。

「いいですか。光在るとはきっと目立つ存在なんですよ。多分。」

「……そう…いや、多分って」

 続ける御琴。

「つまりこの学校の「光」になるものを探せばいいんです。その場所に「闇」が舞い戻る…。つまり、

闇がかつてあったという意味なんです」

「…推理っぽくなってきたな…」

「だから!「光」なるもの…そこを目指せば!」

 興奮気味に語り出す御琴。

こういう話が好きなのかもしれない。

何もヒントがないよりはマシだと思いたい。

そう思う琉嬉。

「…でもなぁ…占いなんてあてにできるのか…?」

「ほら~当たるのもなんたら当たらないのもなんたらですよ」

「なんだそのなんたらってのは」

 あてにできるようなできないような占い。

ヒントにすらできないような…。

ますます不安になる琉嬉であった。



 あれから少し琉嬉は調べていた。

決定的な情報は出てこないがおそらく、この学校には何かが隠されている。

とある刑事…からの話である。


 隣街。

琉嬉は知り合いの会うために来ていた。

「よう。琉嬉ちゃん」

 そこにはサングラスかけた背のデカイ男性。

190近くはあるだろう。

崩れたスーツの着こなしで煙草を口にくわえている。

若い男―。

 沢村洋吉(さわむら ようきち)

年齢は32歳。

刑事である。

かなり腕の立つ刑事であり、ノンキャリアながら若くして警部補まで上り詰めた優秀な人物…である。

が、しばし特殊な人物のため現在は地方の署である、鞍光警察署で勤務しているという。

何より特殊なのは生粋の霊能力を持っているため。

その力を生かし、人間では到底手に負えないような怪奇事件を解決したりする、特別な刑事なのだ。

実力は琉嬉が認める程。

信頼できる知り合いである。

「早速だけどさ。うちの学校について何か知ってます?」

 警察網の情報力なら何かわかる。

そう思っていた琉嬉。

「うーん。鞍光高校だろう…?難しいよな。あそこは」

「え?」

「特殊なんだよ。あそこは。「異質」とでもいうか」

「異質」。

 やはり沢村刑事にも知っていた話。

「なんというか…ただの高等学校じゃないんだよな。いわゆる表は普通だけど裏は…てやつかもしれないぜ」

 裏の顔を持つ…。

そう言う沢村。

「よく聞く話なんだけどな。よくネットでも見かける」

「うむむ…」

「鞍光高校はダントツに幽霊目撃談が多い。警察にもよく連絡があるんだよ。学校からもたまにある。

飛び降りる人影が見えたが行ってみたら何もなかった…とかね。俺も実際何度か事件を聞いてやって来た事あるんだ。実はね」

「あら~、それは偶然」

 怪奇めいた話がよくある。

よくある話だが数が尋常じゃないそうだ。

現役の建物でもあるのに関わらず。

「それっていつごろの話?」

 時期が気になるのか。

「それは去年あたりからだな」

「やっぱり……」

 どうして突然目撃談が増えたのか。

偶然なのか。

それとも何かの陰謀なのか。

答えはすぐには出そうもない。

「一度春休みの時期に行った事あるんだよ。そんときは1体だけの霊見たけどな……」

 一度足を運んでいた。

沢村はそう言った。

表情を変えて言う。

「多分……学校で何かしようとしてるヤツがいるんじゃないかな…?あくまでも推測だけど。人間ではないナニカ…的な?」

「……ふむ」

 わざわざ学校で?

その事を疑問に思う琉嬉。

護やみゆのような霊術師の力を持つ者がいる。

他にもいるのかもしれない。

そう思うとなんとなく辻褄が合うような気がしてくる。


「まぁ俺はこのナリだし、そう簡単に学校に行けるもんじゃないしな。琉嬉ちゃんなら学校の生徒だしいろいろ調べれるだろ?」

「そっか…。あんがと洋吉さん」

「いやいや」

「あ、頼み一つ聞いていいですか?」

「かわいいコのお望みならばなんなりと」

「………」

 一瞬変な沈黙が流れる。

「できるだけでいいんだけど…学校の土地柄とかその辺一帯の歴史を調べて欲しいんだ。事件性っぽいのを特に。

特係の刑事さんなら詳しいだろうし~」

「…特係と呼んでるのは一部の警察と琉嬉ちゃんくらいだな。おやすい御用さ。できるだけ調べてみるぜ」

 こうしてできるだけの情報を掴む作戦に出る。

信用できない占いと信用できそうな警察の情報。

琉嬉は後者を選んだ。



 すぐ翌日。

普段と変わらない。

そして水曜日だった。

 週の真ん中。

グダグダになってくる時ではある。

昼休み。

例の御琴がやってきた。

「彼方さん、何かわかりましたか?」

「………」

 無言の琉嬉。

今に始まった事ではないが、無言。

「…あの、聞いてます?彼方さん?」

 普段からジト目気味だが、さらにジトッと御琴の方を見る。

「…聞いてるよ」

「すぐ反応してくださいよう…」

 琉嬉は現段階の事を話した。

「というかさ…昨日今日で話しが発展するわけないだろ…」

「ごもっともだね」

 いつのまにかいた護。

すっかり仲良くなった護。

ちょっと前まで敵ではあったのに。

これも同じ学校の生徒であったためにこういった関係になったのだろう。

「でもまあ知り合いの刑事に何か情報あるか調べてもらうコト頼んだよ」

「へぇ~。そういうつてあるんだ」

  意外な情報網に二人は驚く。

「僕の占いは…?」

「そんなのあてになるかよ」

「ええぇぇぇ……」

 ショックをうける御琴。

「…ま、まぁ、当然だね…」

 フォローもできず終い。

「さて…どうしたものか…待ちかな…しばらく」


 あれから二日。

クラスの友人+護と昼休み。

妖しげな着信音が流れた。

琉嬉の携帯にとあるメール着信。

メールの送り主は沢村刑事。

「なになに?メール?誰々?というか今の着信音なに?」

 ゲームの着信音ぽかった。

「もしかして男とか?」

「そんなばかな?」

 回りが茶化すような中琉嬉は冷静にメールを覗く。

「……なるほどね…」

 納得したような素振りの琉嬉。

何かが解ったようであった。

「何がなるほどなの?」

 みんな気になる。

「機密事項。」

 あっさりかわす琉嬉。

その中護が気づく。

小声で聞く。

「…もしかして何か判明でもしたの?」

「まあね…」

 そして御琴を探しに行く二人。



「あ~ちょっとちょっと~そこの少年。ここに神楽御琴っていない?

こんなかわいい先輩の美少女がお呼びですよ~って呼んでくれないかな?」

 隣で呆れる琉嬉。

そこらにいた男子生徒を使って呼ぶ。

「はい…ちょっと待ってくださいね…(なんで神楽のヤツこんな可愛い人と…?)」


「やあお二人様~、何かあったんですか?」

 御琴がやってきた。

「ちょいとわかった事があってね…」

「ほぅ~」

「去年から急激に怪奇事件が増えたそうなんだよ」

「…なるほど~!」

 すると突然御琴が、

「占ってみましょうか?!」

 ガスッ

 琉嬉のチョップが御琴の頭に命中していた。

「な、な、何するんですか~?」

「お前の占いなんぞあてにできん!」

 またもや速攻で却下。

「大体占いで何を調べるんだ!科学的根拠もない…」

「……あんたが言うか…霊感不思議少女のくせに……」

 護が琉嬉に冷静にツッコむ。

「お?なんだなんだぁ?神楽?生意気に女の子連れかー?」

 男子生徒の声が後ろからした。

よくいるタイプの不良達。

それも半端者。

「あ…田村君」

「…誰?コイツら?」

「……」

 御琴が黙り込む。

琉嬉はピンとすぐきた。

過去に何かあったのだな、と。

「俺らにも紹介してくれよ~神楽ぁ」

 はたからみても分かる関係だった。

御琴の表情が曇る。

「あー、紹介してって私らの事?」

「そうだよ。あんた有名だぜ?結構」

 護は目立つ程かわいい。

なおかつ明るくて人なつっこい。

そういった傾向からか密かに人気があるのだ。

「言っとくけどー私はそんな気ないのであしからず~」

「そうそう、てかあたし先輩なんだけどね一応」

 あっさりかわす護とみゆ。

「そっかー。残念。仕方ない。神楽ちょっと付き合えよ」

「え…でも…」

「いいじゃんかよ!ほらほら」

 半ば強引に連れていかれる御琴。

余計な客の登場で話が終わらなかった。

「あらら…行っちゃった」

 なんだかわからないまま途切れてしまった。

「ねえ、あれってもしかしてイジメってやつかな?」

「…回りにある程度バレないようにやってるタイプだね…あれは。でも…」

「でも?」

「…なーんで護には声かけて僕には声かけられなかったんだろうかねぇ…」

「あ、え?」

 琉嬉の存在に気づかなったらしい。

小さすぎて分からなかったのか、不明だが。

転校初日で大事を起こしてるので知らない訳ではないはずなのだが。

琉嬉が静かに怒りが満ちていたのを護は感じていた。

「怖っ…(ちっちゃ過ぎて目に入らなかったとか…?それともただロリコンではなかったとか…)」

 妙な怒りのオーラを撒き散らしてながら琉嬉は、

「…神楽のやつ気づいていないのかな…」

「ほへ?何が?」

 かすかに感じた霊気。

それも邪悪なモノ。

「あの田村ってやつ……ちょいヤバめかもね」

「…どういうコト?」

「…悪霊に憑かれている…というより、利用されてる」



 終業のベルがなる。

(…気になるな…神楽のとこ行ってみるか)

なんだかんだいって気になる。

世話好きなのかなんなのか。

結局手助けしてしまう。

(神楽より…あの男子生徒。何かわかるかもしれない)

 終わりと同時に御琴のクラスの教室に向かう。

だが一足遅かったのか御琴らの姿はなかった。

教室に残ってた生徒に聞いてみるが、残念ながらとっくに帰ったという。

みゆの姿も見当たらない。

「んー…遅かったか…。やっぱ学年違うと教室が遠いな…。みゆもいないし」

 とりあえず護に連絡する。

御琴の連絡先を聞いてなかったため、一応護にも協力してもらう事にした琉嬉。


「…なんで護が連絡先を知ってて僕は知らないんだよ」

「まあいいじゃん~。あっちから教えてって言われたから教えただけだし」

「…お前、連絡先教えたって事はああいう女みたいなやつが好みなの?」

「あははーまさか~」

(…コイツ…腹の底まで見せないヤツだな…)

 そんなこんなで御琴捜索が始まってしまった。

電話には出ない。

なのでメールを送る護。

しばし待つこと5分弱。

「おおっ返事キタっ」

『近くのゲームセンター「パプイ」にいます』

 御琴があの性格上ゲームセンターに一人で行くとは考えにくい。

「ゲーセンか…久々に何かゲームでもやろうかな」

 ゲーマーとしての血が騒ぐ琉嬉。

「ゲームはともかく御琴クンのトコ行ってみようよ…」

 逆に半ば呆れ気味の護であった。


 学校からさほど遠くない所に「パプイ」はあった。

ゲーセン。

つまりゲームセンター。

なぜ御琴はそこにいるのか。

謎はすぐとけた。

「…いた」

 すぐさま発見。

よくみるとあまりよろしくないような交友関係な人間がちらほら。

「んーこれって…」

「イジメ…みたいなものかもね」

 昼にあった連中が御琴と一緒にいる。

しばらくみてるとお金を御琴から巻き上げてる。

そのようにしか見えない光景。

「ふーん…そういう関係ね…」

 琉嬉の表情が変わる。

そう言うとズカズカ連中に入り込んでいく。

「ア…あれ、琉嬉ちゃんちょっと…」

「神楽!何やってんだよ!そんなのいいからちょっと来い!」

「あれ…彼方さん!?」

 驚く御琴。

「ん?誰?妹?」

「妹じゃねぇっ!神楽なんでこんなのといるんだよっ!」

「おーっと。ちょっと待ったお嬢ちゃん」

 田村がいた。

「神楽君は俺らと遊んでるのよ?それとこんなのとは失礼じゃない?」

「そうそう。口の聞き方には気をつけたほうがいいよ。小学生でも」

「あ」

「あ」

 御琴、護は同時に凍りついた。

小学生――それは禁句。

琉嬉は見た目は小さくてかわいい。

年相応には見えないためよく小学生に間違えられる。

例え高校の制服着てても。

「…小学生でもなんでも結構。神楽こんなのと付き合う必要ないよ。行こう」

 なんとかこらえた琉嬉。

内心煮えたりぎってるには違いないが。

「まったく。神楽クンはこんな小さい娘とも知り合いなんだ」

「それは…」

 御琴を連れていこうとした瞬間。

ガシっと琉嬉の腕をつかむ田村。

さっきとは打って変わった険しい表情になっている。

「勝手なコトするんじゃねえよ…!」

「田村くん…あまりここで大きなモメゴトはヤバイよ…」

 他の仲間の生徒が止めようとする。

「相手は小さい女の子だぜ…」

 だがその瞬間。

「うるせぇっ!」

「ぐっ?!」

田村の裏拳が後ろで止めようとした生徒の顔面に命中していた。

「うぐっ…!」

 その場に倒れ込む生徒。

「俺のやることを邪魔するんじゃねえよ!」


「ありゃりゃ…キレちゃったぞ…アイツ」

 遠くの影から見守っている護。

出るタイミングを完全に失っていた。

「てめぇ…子供だからってナメてんじゃねえぞ…!」

「子供じゃないけどね。だとしても、まぁ大人げないね。こんなか弱き女子相手に怒るなんて」

 ごもっとも。

だが普通の雰囲気ではない田村。

「ちょ、ちょっと彼方先輩…大丈夫ですか?回りも騒ぎに気づきますよ……?」

 たしかに。

人がそれなりにいるゲームセンター。

騒ぎに気づきザワつきはじめる。

「こういうときはさっさと逃げる。さあ行くよ!」

 と、言うとダッシュで御琴の腕をひっぱりながら店を出ていく。

「わあっ!」

「待てぇ!コラァッ!!」

 田村ら回りの生徒たちも走り出す。

「あらら。出ていっちゃった。私も行った方がいいよね…?こりゃ」

 急いで跡を追いかける護。

店内で暴れるよりは遥かにマシではある。

そんな事を余裕に思っていた護。


 どこかの路地裏。

琉嬉達は田村らに囲まれていた。

「ガキだからって容赦しねえぞ…」

 どうも様子がおかしい。

かなりの興奮状態。

「田村君…どうしたんだ?何もそんなに女の子相手に…」

 他の取り巻きも異変に気づいてる。

「あの…あれって…」

「気づいたか?どんどん邪なる霊気が高まってるだろ…?」

「…そうですね…もしかして」

「何かに取り憑かれている…か操られている。だな」

 状況が飲み込めた御琴。

見える者には見える。

田村の背後にうっすらと見える「影」なようなモノ。

「心を奪われかけてるな…まぁこんなやつ救いたくないけどこのままじゃ回りが迷惑だ」

「十分迷惑だけどね」

 いつのまにか護がいた。

「…芹澤先輩か…あんたもまとめてやっちまうぜ?」

「やってみなー」

「この…!」

 どんどん田村に憑いた「影」が濃くなる。

「このままじゃヤバイかもね。仕方ない。ぶっとばそう」

「やってみろやぁぁー!!」

 田村が激哮する。

取り巻きも仕方ないといった感じで手を出す。

田村のパンチをなんなく避ける琉嬉。

素人当然の攻撃なんぞ当たるわけがない。

護も同様。

数々の死線を越えているのだから。

「くっそー!!」

 焦りが見える田村。

「二人とも凄いですね…」

「まあね~」

 力を使うまでもない。

こちらからは手をあまり出さないで避けてるばかり。

相手は次第に疲れて息を切らす。

「悪いけど、他のみんなには寝てもらおうかしらね」

 そうすると護は人間離れした動きで田村以外の人間を手刀で一瞬で気絶させる。

ひとり残された田村はそこらに落ちてた箱に入ってた瓶を手に持つ。

武器にでもしようかとしている。

「なんなんだてめーらはぁ…!」

「ただの女子高生」

 そういうと琉嬉が何かの呪文めいた言葉を呟く。

「…彼方先輩それは…?」

「とりあえず取り憑いてるやつを引っぺがす」

 呪文めいた言葉をそのまま続ける琉嬉。

「がっ…!ぐぅ…!!」

 田村がその場にうずくまる。

琉嬉が口に出しているのは特殊な読経。

効いているのか?

「影」がどんどん濃くなる。

そして――。

「今だ芹澤!ぶった斬れ!」

「あいよー!」

 護の手に霊力が集まるのを御琴は確認した。

気づくと剣のようなのが護の手にある。

「凄い…!」

そして飛び込むと同時に一閃!

「影」は一つだったのが二つになる。

「キシャアアァァァァ……!!」

「やったか?」

 だが「影」はまだその場にいる。

とはいえ動く様子はない。

「…仕留めそこなったのかな?」

「そんな事ないよ」

 琉嬉が護の後ろから割って入るように現れ、近づく。

その瞬間!

「キシャアアアーーー!!」

「うわっやっぱり!」

 油断したところを狙うお決まりパターン!

が、しかし。

「危ないっ!彼方先輩!」

 間一髪。

御琴が持っていた水晶を掲げて「影」を取り込む。

まばゆい光と供に「影」は水晶の中へ消え去った。

「おおっ!?」

 護が驚愕する。

さっきまで人間相手に何も抵抗してなかったのに突然の行動。

「おー。すごー」

 冷静に棒読み気味な琉嬉。

「あんたそんな事できたの!?」

「え、ええ…まぁ…。こういった霊とかは撃退できるんですが…」

「生きてるヤツ相手だと何もできないってか?はぁーそんなんだからイジメられるんだよ」

「…ごもっともです」

 驚きっぱなしの護に対して琉嬉は冷静。

「…そもそも僕は微力だけど「真霊気」の保護受けてるからあの程度に減った霊力なんか受けつけないけどね。んで、この魔除けの鈴もあるし」

 リン、と綺麗な音をなびかせて髪飾りにしている鈴を右手で触る。

「えぇ…そんなぁ」

 クールに援護は必要ない発言。

「でも、まぁ。ありがと。神楽」

 そしてクールに例を言う琉嬉。

「…あ、いえ…」

「素直じゃないというのかねぇ。それともあれが素なのか」

 護は笑顔見せながら言う。


 三人はあれから近くの公園にいた。

「田村もこれでこりたんじゃない?」

「琉嬉ちゃんもひどいよね…あれから起きた田村をぶん殴るなんて」

「……なんかムカつくやつだから。」

「…ああ、そう……」

 引き気味の二人。

だんだん彼方琉嬉という人物を知ってきたようだ。

「お二人ありがとうございました。まさか田村君が取り憑かれているとは…」

「…さすが琉嬉ちゃんだね。霊感ある私も神楽君もきづかなかったのにね」

 かすかな霊気でも感じ取る事ができる。

それほど鋭い感知力が高いのである。

「…占いはともかく霊的なものには対処できるんだな。もっと鍛えて十分な戦力に…じゃなかった、部員になってもらわないと」

「はぁ…そうなんですか…戦力ですか…」

 占いの事を褒めてもらえずかなりがっかりした表情の御琴。

「ところで今回の一連で何かわかった?」

「いや…学校と関わりあるのか分からないけど、糸口はわかった」

「マジで?」

 「影」から発した霊気…、というより妖気に近いもの。

犯人は霊より妖怪系だと。

琉嬉はそう話した。

「またなんで妖怪とか…」

「さあね。まったく面倒なコト多い学校だね…本当に」

「まあそう言わないでさ…」

 妖怪に繋がりがあるとしたら…?

かなり厄介。

そう考えもある。

「…でもなあ」

 御琴の顔見ながら琉嬉が言う。

「…そんな女みたいな顔で性格だからイジメみたいなのに遭うんだよ」

「……うぅ…。そうですね…。ただ、根性だけが取り柄ですから」

 どうやら精神的には強いタイプ。

「でも…かわいいから許す!」

「はぁ?」

 唐突な護の発言に琉嬉と御琴が目を丸くする。

「あ、いや…失礼」

「ふーん」

 琉嬉がジト目をさらにジト目で護の方を見る。

「ま、いっか。事は終わったから帰る」

「えぇ!?」

「今回は誰かさんのために余計な力を使わなかったからよかったけどね」

「…はは」

 苦笑いの護。

「神楽、占いだけじゃなく戦闘力を磨いといてね」

「ええぇ!?」

「それとな、神楽。いや御琴。お前…見えるどころか対処出来るんじゃないか。最初から言えよっ」

 御琴のほっぺをつねる琉嬉。

「あいだだだ、すいません~…」

 半分無茶なお願い。

それに弱い霊なら自分で対処出来るようだった。

それを隠してたのがちょっと気に食わないようだった。

「んじゃ、また明日」

「明日…ですか」

 そう言うとさっさと帰ってしまった。

やる事終わったらすぐ帰りたい。

そう、ゲームをやりたいから。

元々余計な事をせずまっすぐ帰ってまったりしたい。

そういう性格なのである。

「でも、また明日って言ってたから今回限りってコトでもなさそうだね」

 護が気のきいたフォロー。

まだそんなに長い間一緒にいたわけでもないのに、連携もとれていた。

どうやら相性がいいのかもしれない。

そんな事を考えてた護。

「あ、ところでさっきの吸い込んだ悪霊ってどうなったの?」

 気になっていた。

いくら霊的なものを撃退できるからといって水晶に吸い込んだのだからだ。

今までもそうやって対処してたのか?

疑問が残る。

「大丈夫ですよ。吸い込んだやつはこの特殊水晶で徐々に消滅します」

「へぇ~」

「まあ、これって対象が一体にしかできない大技なんですけどね」

「へぇ~…」

 琉嬉には通用しない程度の「影」を大技で撃退した御琴。

護は不憫な気持ちで一杯だった。

「琉嬉ちゃん帰っちゃったし、我々も解散しますか」

「そうですね」

 二人はその場を離れ、それぞれの帰路につこうとした。

「あー、生徒会に行くの忘れてたー」

という、声が聞こえてきたのだった。


 まだ姿を現さない学校を中心に暗躍する「影」。

それは妖怪と結びつくのか。

まだまだ時間がかかりそうだった。

 占いはともかくしっかりした力を身につければ役に立つ。

神楽御琴という人物は能力は十分あると把握している。

面倒くさい事は嫌いだがちょっとは期待してる琉嬉。

何はともあれ、これでまた新たに部員?ができた琉嬉であった。


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