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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第一章   ~学校怪奇編~
3/92

#3 陽気な導士さまっ

 朝の野鳥の鳴き声が心地よい。

爽やかな冷たい空気。

まだ少し朝は肌寒い。

時刻はまだ8時15分。

8時半まで登校すれば十分間に合う。

それにもう校門。

余裕である。

 琉嬉は眠い目をこすりながら登校していた。

また深夜遅くまでついついゲーム。

來魅と一緒についつい遅くまでやりがちになる。

でもしっかり朝は起きて登校する。

優しいながらも口うるさい父親のおかげでもある。



 その登校する前の家。

「琉嬉ちゃん~目覚ましなってるよ~。ホラホラ起きろっ」

「うぅ~」

 琉嬉の父親、彼方導。

娘溺愛の親バカである。

琉嬉の父親だけあってかなりの霊能力は持っている。

とはいえ、それは他の一族の者からすると大分弱いらしい。

そういう自分の能力の弱さがあったのか、実家のお寺から独立している。

「おはようー!今日はいい天気だよ!」

「……この親父は朝からテンション高いな…」

 渋々着替えをし始める。

「…てかなんで部屋に入ってくるの?年頃の娘の部屋にさ…」

「ああ、ごめんごめん。つい心配しちゃってさ」

(……もしかしてずっと小学生くらいのつもりで見てるのかな…)

 そう言いつつ父親の前でも気にせず着替えるのだった。


「あ、琉嬉ちゃん、そして來魅ちゃん。突然なんだけどさ」

「何?」

 朝食の目玉焼きをまるごと頬張りながら聞き返す。

「引越しの準備しといてね。ゴールデンウィーク前の休日に大きな家に引っ越すよ!」

 現在4月の後半過ぎ頃。

ゴールデンウィークが近いという訳あってその休み期間を利用して引越しを完了させたいようだ。

「……はぁ?!なんでいきなり…」

「いやはや、ね。割安でいい一軒家が思ったより早く買えたから…どうせなら早めに引っ越そうかなって」

 はぁ、とため息つきながらも箸は止めない琉嬉。

「このマンションに来てからまだ二ヶ月くらいしか経ってないよ…?それに、夏くらいにじゃなかったけ?」

「なぁに。それが早まっただけだから」

「……うんー」

 どうも納得がいかない。

とはいえ、今の狭い住宅よりはいいとは思う琉嬉。

それに、他の家族が現在住んでる家にやってきて共に住む事になる。

それまで父親と二ヶ月くらいは二人暮らしだった。

それに、今はなりゆきで最強の大妖怪・來魅とも一緒に暮らしてる。

「來魅は?」

「起きて来ないねぇ」

「…いいよな、妖怪様は気楽で」



 よくどこの学校にもある校舎正面についてる大きな時計。

「まだ8時15分か…余裕じゃん」

 そう思ってもつかの間。

「のわ~遅刻するぅ~!」

「へ?」

 振り向いた瞬間、ドンッと衝撃が走った。

「んなっ!?」

 体格が小さい琉嬉は軽く吹っ飛んでしまった。

「わおっ!?」

 琉嬉は2mくらい吹き飛ばされていた。

それにひきかえ、ぶつかって来た相手はその場でよろめいてただけだった。

「……痛い」

 ボソっと呟く琉嬉。

急すぎて受身を取る暇もなかった。

「ありゃりゃーごめんね~!」


 ぶつかってきたのは女子生徒だった。

少し焦げ茶な髪色でボブカットっぽい長さだが猫っ毛なのか、ふんわりしてる。

そして両サイドにぴょんと跳ねた短めのツーサイドアップ。

顔は…琉嬉が見ても可愛いと思う美少女だった。

「大丈夫?膝とか擦り剥いてない??」

「…手だけ」

「ありゃぁ。ごめんね~、急いで保健室に行こう!」

「…え?ちょ、ちょっと…!」

 そう言うと女子生徒は琉嬉をお姫様抱っこしてダッシュで学校の保健室に向かった。

「バカ!恥ずかしいからやめろ!」

 聞く耳持たず。

そのまま玄関を通り、靴も履き替えずに保健室へ直行する。


「はい、手を擦り剥いただけね。あとは大丈夫かな」

 保険医の見上みかみ先生。

年齢は30代半ばらしい。

だが若く見える。

独身という噂。

どう見ても20代にしか見えない。

「ごめんね~。みゆの不注意だったよ~。でもすごい吹っ飛んだんだよ?よく手だけですんだねぇ」

「…これ履いてたから足とかは大丈夫だったみたい…。汚れたけど」

 琉嬉は黒のオーバーニーソックス。

なぜか知らないがお気に入り。

そのせいで幼さが上がってるのには本人は気づいてない。

「手当て終わったから二人とも教室に行きなさい。遅刻にはしないであげるから」

「はぁーい」

「それと、二人共。なんで上履きじゃないの?」

「あ、あははははは、急いでたので。ごめんなさぁい」

 琉嬉はともかく、この女子生徒も外靴のまま校舎に入ってきたのだ。

(いろいろツッコミたいが…朝からなんだこの展開…)

 早くも気が滅入ってきた。

「大体…まだ時間まで15分あったんだよ。余裕で間に合っただろうが…」

「そうだっけ?えへへ~。勘違いしちゃったかな?」

「…………もしかして…コイツ…本物のアホの子か…?!」

「なんか言った?」

「いや…」

 かなりペースを乱してくれる。

周囲を巻き込むタイプのようだ。

厄介なタイプ。

「あ、君どっかで会った事ないっけ??」

「…そう?同じ学校だしすれ違った事くらいはあるんじゃないの?」

「んー、そうかな?ま、いっか。自分「こうざきみゆ」ッス~」

「こうざき……?はてどこかで聞いたような…?もしかして五大…」

「ほらほら、遅れちゃうよ!え…と」

「彼方…琉嬉。二年生」

「え?二年生?ありゃりゃ…これは失敬。先輩でしたか。自分は一年ッス~。以後よろしくです!」

 なぜか敬礼。

「ああ、うん…(なんかタイミングよく遮られたな…)」



「で、何?派手に吹っ飛んだの?」

「…うるさい」

 いつものメンバーで談笑タイム。

クリームパン頬張りながら嫌そうに言う琉嬉。

「でも仕方ないよね~。琉嬉ちゃん小さいもん」

「そうそう」

「うっさい!」

 またも琉嬉の小ささにみんながツッコむ。

高校生にしては非常に小さい。

「ねぇ琉嬉ちゃんて身長どれくらいなの?」

 護がすかさず聞く。

「それ言わないといけないの?」

「そのとーり!」

 ビシッと決める護。

「…139cmだったけど何か?」

「うひゃー、140未満ですか~」

「そりゃ小さいねぇ~」

 琉嬉の顔が赤くなる。

「うるせー、これでも中学の頃から2cmくらいは…伸びた!」

「うそ~?」

「それはそうと芹澤さんはどうなの~?」

 みなっちが詰め寄る。

「な、何が?身長?身長なら164cmだったけど」

「違う違う~」

 指を護の胸を指しながら、

「その大きな胸ですよ~?」

「そうそう!どれくらいだったの?」

「え…言わなきゃだめ?」

「だーめ」

「なんだこいつら…」

 呆れる琉嬉。

「まぁFくらい……」

 急に恥ずかしそうに言う護。

どうやらこの手の話は苦手な様子だ。

たしかに誰がみても制服の上からでもわかるくらい大きい。

スタイルもいいし。

「F~!?大きい~」

(ハイハイ。大きい人はいいね)

 琉嬉はあからさまに不機嫌な表情になっていた。

ちなみに琉嬉はAカップ以下。


「ん~アイツ何組なんだろ…」

 琉嬉は一年生の校舎をうろついていた。

朝に会ったみゆという少女に会うため。

いや、本当は会いたくないが、確かめたい事があるからだ。

 「こうざき」と名乗った。

こうざき…琉嬉の頭の中によぎるのは五大家のひとつ、「港咲こうざき家」。

もしかしたら…という予感があるからだ。

近くに歩いてた一年生らしき女子生徒に聞いてみる。


「みゆさんですか~。有名ですよ?可愛いけど明るくって陽気で、面白い子です」

「だろうね…」

 あの突拍子もない性格と言動。

有名にならない方がおかしい。

まだ5月前だと考えると新一年生の話題がこれから出てくるだろう。

そのうち遅かれ早かれ「こうざきみゆ」という人物の名が他の学年に出てくるに違いない。

それだけ目立つ言動だろうし。

「みゆって…何組?」

「でしたら、3組ですよ」

「ふむ。では行ってみよう。行きたくないけど」

 とりあえず隣の教室を覗いてみる。

「ちょっとすいませ~ん」

 中に入り当たりを見まわす。

「くかー」

 寝てる女子生徒。

発見。

朝にぶつかってきた生徒だ。

なぜか寝ている。

「こいつ…本当マイペースというか…なんか、幸せ者って感じだね…」

「ですねぇ…」

 琉嬉はみゆの前に立ち、片手を挙げた。

そして…


ズガッ


 脳天にチョップを食らわす。

「たっはーーー!!!いたぁーい!?」

 さすがに飛び起きる。

混乱するみゆ。

何が起きたのかわからない状態。

起きたという事は相当な威力があったのだろう。

「よう」

「…んあー?あれ?朝の…子?」

「…こう見えても一応先輩なんだけどね」

「あ、そうでした。すみません」

 そのまま会話が続きそうになる。

「こうざきさん。ちょーっとお話、いい?」

「ほへ?」



「単刀直入に聞く。お前さん、「五大家」のひとつの港咲家の人間?」

「…わおー、いきなり過ぎますね~」

「ってことは図星かな」

 さすがのみゆも一瞬無言になる。

「うーん、どう答えたらいいのかな…?」

 頭をポリポリ掻く。

いきなりの質問に少し驚いた表情をみせるみゆ。

でも一変、笑顔に切り替わる。

束ねてる髪をくりくり回しながらこう答える。

「うん。先輩が言う通り、私は五大家って言われる港咲家の人間ですよ~」

 あっさり認める。

「やっぱり…」

「そう言う先輩も五大家のひとつの彼方家…ですよね~?」

「直系といえば直系の血筋だけど今は独立してるけどね」

「へぇ~?」

 みゆの方も琉嬉の素性に気づいてたようだ。

「なるほどね…」

「?」

 みゆをまじまじとみつめる。

「なぁに~?そんなにみつめられたら恥ずかしいよ~」

 体をくねくねさせながら恥ずかしがる。

「アホかっ。それよりやっぱりお前は術者なんだな?」

「ま、そうとも言えますね~」

「…驚いた……。(護の他にもいるのか…。しかも五大家のひとりが…)」


「あー、でもね、五大家って言っても、まだうちのおじいちゃんの代がメインだから、私は全然そういうたいそうなもんじゃないッス~」

 手振り身振りで伝える。

いちいち動きが大きい。

その分必死さが感じられるが。

「それはこっちも同じだけどね…。早速だけどもうちょっとだけ聞きたいコトがあるんだけど」

 琉嬉は学校や周辺にまつわる事変、出没する幽霊などをみゆに聞いた。

だが、みゆも詳細はわからないという。

「やーっぱり~?どーりで幽霊さんやらいっぱいいるなーと」

「いや、沢山いるとしても気づくレベルのものじゃないと思うけど」

 現役の施設としては沢山いるという。

つまりこの学校は異常過ぎる。

ただしょっちゅういるという話ではないそうだ。

そうそう霊など出てきたら気になりすぎて学校にいれなくなる。

とはいえ、転校してから何処からか入り込んだのか、悪霊を退治している。

みゆもこの学校に来たのは偶然だという。

たまたまとはいえこういう能力持った者同士が集まるのは珍しい。

「そうそう、今日悪霊退治する予定あるんだけど、一緒に先輩も来ます~?」

 突然の発言に琉嬉は驚く。

「なんで一緒に行かなきゃだめなんだよっ」

「いや、楽しそうかなーっと。だって先輩も戦えるんでしょ?五大家の一族なら」

「…だからってなんでそんな面倒な事に」

「おごってあげるから~」

「……むむ」

 おごる。

金銭的な事言われると心が揺れ動いてしまう琉嬉であった。

「いや、だめだ。今日はRPGの続きをやらんといけんのだ…」

「そっか~。ゲームくらいならおごれるのにな~」



「で、何?結局OK出しちゃったの?」

 顔を両手で隠しながらコクコク頷く琉嬉。

やれやれといった表情の護。

「うぅ…我ながら情けない…。一度返事したからには約束守らなければいけない…」

「なんか男らしい考えというかなんというか…」

「てか、なんでお前さんまでいるの?」

「えー、いやぁ、なんか楽しそうだから?」

 笑顔で返す護。

放課後、校門前に二人は待っていた。

みゆと待ち合わせ。

クラスも学年も違うので終わる時間はまちまちだからだ。

ゲームのひと声で琉嬉は負けてしまった。

それほどゲームに命を込めているのだろう…。

「みんなお待たせッス~!」

 やたらとデカイ声でみゆがやってくる。

いつもこんなにテンション高いのだろうか。

正反対の琉嬉には理解し難いものであった。

「おやおや、これは芹澤さんじゃないッスか~」

 みゆが先に声かけたのは護の方だった。

「知ってるの?」

「知ってるも何も、有名人ッスよ~、芹澤さんは」

「…そう?」

 またもや照れ出す。

「そら、こんな外人みたいな金髪でスタイル良かったら知れ渡るだろ…」

「ふふん。でもそういうみゆちゃんも有名だよ?入学から早々美少女がいるって!それがみゆちゃん」

「それほどでも~」

 逆にこちらが照れ出す。

「で、どういうルートなの?」

 そんな二人のやりとりを無視して話を進めようとする。

「とりあえずみんな、私の家行にきましょう~」

「…いきなり知り合ったばかりの人の家にお邪魔するのか…」

 なんでか楽しそうなみゆ。

「こっから近いの?」

「大体10キロくらいは離れてますね~」

「けっこう遠いのね…」

 ちょっと長い下校となりそうだ。

とはいっても電車だと30分かからないくらい。



 そうして、電車乗ること30分。

みゆはとにかくしゃべってる。

護は受け答えをするのに精一杯。

琉嬉はとりあえずぼーっと窓を見つめている。

何が楽しいのか?

ただひたすらビルなど住宅などよくある風景ばっかり。

でも琉嬉はずっと流れる風景を見ている。

「ここの駅で降りますッス~」

 到着した瞬間勢いよく飛び出るみゆ。

後を続く他の2人。

降りた駅は住宅が少ない、閑散とした景色だ。

近くには小さい山が沢山ある。

すぐ目の前には新しい住宅が広がっている開拓されている地域のようだ。

別の方向を見ると、畑が広がっている。

非常にのどかである。

いわゆる、田舎の風景。

「すぐ近いの?」

「歩いて5、6分くらいかな~」

「今度は近いのね」



 軽く歩く事5分。

なんか坂道を歩いて行く。

まわりは木々だらけ。

少し山中なのかな…?と思いながら歩く。

「おい、そろそろこの辺じゃないのか?」

「そだよ~」

「…ん?どこ?」

「目の前だよ~」

「目の前……?」

「大きい邸宅があるだけだね」

「だから~目の前の~」

「…目の前って…この家…。あれ?」

 目の前にはかなり大きめの家があった。

「ここが我が家でーす」

 そう。

目の前の豪邸こそがみゆの家だった。

かなり大きい面積に大きい家。

どうみても大金持ち!といった内容の家だ。

作りは割りと古い印象。

30年以上は経っていそうな作りだ。

洋風の作り。

まさに大金持ちの家といった印象である。

「お、お前…大金持ちだったのか!?」

 琉嬉がかなり驚いた表情で詰め寄る。

「大金持ちなのはうちのおじいちゃんで~みゆは大金持ちじゃないよ」

「同じようなもんだろ!」

「ふへぇ…驚いた。本当に驚いた…」

 祖父がかなりの成功者なのであろう。

「…ねえ、そのおじいちゃんの名前ってどんな名前?」

 琉嬉は少し気になり、祖父の名前を聞き出す。

「んーとね、港咲……かい。うみって書いてカイだったかな」

「港咲海……聞いた事あるな…うちの祖父ちゃんがなんかたまに言ってたな」

「ほんとー?だったら縁があったんですね~」

「…まぁ、そうだろな…(なんせ、來魅を封じた五大家の子孫だとすればいずれ会う運命だったかもしれないけど)」

「まま、ここで立ち話もなんだから、どうぞどうぞ。お入りになってくださいな」

 言われるがまま、琉嬉と護はお邪魔する事にした。



「たっだいま~!」

「お帰りなさいませ。お嬢様」

 女性の使用人が挨拶をする。

つまりメイドさん。

「ただいま~、正木さん」

「おお…メイドだ…本物のメイドさんがいるぞ…!」

 メイドといっても想像するようなメイド服ではない、落ち着いた服装だ。

正木さんと呼ばれた人物はこれまた綺麗な人である。

年齢も20代前半くらいだと思われる。

「…妄想の世界だけだと思ってた…」

「いや…琉嬉ちゃん…それはないだろう」

などという会話をしながらも進んでいく。


 一息つくために琉嬉と護はとある大きな部屋に案内された。

入ってみるとお屋敷のイメージとピッタリ合うような、広い応接間。

高そうな大きなテーブルに立派な椅子。

琉嬉はともかく護は慣れない場所なのかさっきからずっとキョロキョロ挙動不審だ。

「金持ちなのにさ、ホラ、よくあるなんか立派な車とかで登下校とかするんじゃないの?」

 金持ちの生徒のイメージ。

たしかにそんなイメージはある。

だがみゆは地味に電車で登下校をしている。

「んえ?やだな~。みゆはそういうのはいらないって言ってるんだよ~」

「ああ、そうなの…」

 みゆらしいというか、なんというか。

でもそのおかげで琉嬉はみゆと激突し、怪我をしたわけでもあるが。

使用人の正木さんが紅茶を持ってきてくれる。

ズズッと琉嬉が一口飲んで切り出した。

「港咲…。そろそろ本題なんだけど」

「ん?」

「ゲームをおごってくれるとかはまず置いといて、悪霊退治ってなんだ?」

 どうやらみゆもそういった仕事みたいのをやってるらしい。

世の中、こういった仕事してるのは意外にも数々いる。

みゆもその中の一人。

さすがは五大家のひとつ、港咲家。

「いんや~うちの家系ってさ。昔からそういうのやってるみたいなんですよね~。表向きは貿易業者やってて何個もビル持ってるんだけど。

裏ではなんか中国から伝わってきた「道士」ていうルーツの霊術師みたいなんですよ~。そのおかげで現在のこういったのが成り立ってるってわけ~」

 一同納得。

琉嬉も護も同じような事してるからだ。

特に琉嬉はいずれはこのように金持ちになるのかと珍しく妄想していた。

「なるほど…僕もいつかはこういう具合に……」

「琉嬉ちゃん?」

「はっ、いや、なんでもないぞ」

 一瞬妄想の世界で入りかけた。

「今回の所はちょーっと厄介な所でね~。みんなに手伝ってもらおうかなぁと」

「…一人でどうにかなる所じゃないの?」

「裏の世界では有名なお二人の力を借りれればな~と」

「二人…ってことは…お前気づいてたのか。護の事も」

「まぁっね~♪琉嬉先輩が連れてきたというとなると相当な術者かも~って思って」

「マジか……」

 バカっぽそうに見えて実はかなり鋭い人物のようだ。

それに、単に護が鈍いのか。




 一同はみゆの家から遠い、とある廃墟に来ていた。

見渡す限り草木の連続。

民家なんぞ見当たらない。

いや、来る道中で民家らしき建物があったのだが、住んでるような気配がなかった。

みゆの一仕事のために結局夜になってしまったが。

使用人の正木さん運転でやって来た。

おそらく仕事内容などからこの正木さんも只者ではないと思われる。

どういう経緯があったのかは謎だが。

「…眠い」

 フラフラの琉嬉。

時刻は深夜12時。

一時間くらいの乗車とはいえつらいものがある。

「さあ~着いたね~」

 闇夜に広がる中、はっきりとわかる建物のシルエット。

かなり大きめの建物。

外観の色は白っぽいようだ。

懐中電灯を照らすと一応白だったはずなのだろうが、落書きやら崩壊のひび割れやら汚らしい。

姿形でなんとなく分かる、病院跡…。

「凄いね…」

 ボロボロの建物。

外観は強烈。

というか、ここは何処なんだという雰囲気の場所だ。

まったくもって検討がつかない。

まるで時間が止まってるような感覚だ。

「廃墟じゃん…こんな所に来てどうするんだ?」

「さすがに私も一人だったらあまり行きたくないね」

 護が珍しく弱気。

それもそうだ。

こんなオンボロの建物は心霊系というより、崩壊したりなどの物理的怖さがある。

「…今のところ、弱いのしか確認してないけど…結構いるね」

「そだね~。また増えたのかも?じゃ、中に入ろう~」

「いきなり行くのか…」

「いや、ただの怖いもの知らずなだけかも」




 所変わって、彼方導宅。

導と來魅は夕飯を食べていた。

「…しかし琉嬉のやつ遅いのう。いつもこんなに遅いのか?」

「よくある事かなあ。遅くなる時は一応連絡はくれるし。これも退魔師としての血筋だからかね」

 笑いながら言う。

「しかしのう、年頃の娘が夜遅いと気にはならんか?」

「そりゃあ、心配はするけど…あの強さでしょ?僕以上にはもう単純に「強い」からね」

「それもそうだな。この私を倒すほどの腕前…、とは言ってもまだまだだがの」

「はは、そうだね。それに來魅ちゃんもなんか娘みたいな感覚になっちゃったけどね」

「見た目はそうだろうな」

 そう。

傍から見れば親子に見える。

ただ、今までいなかった子が突然いるもんだから近所の人に声掛けられた事があるという。

その時は適当に外人の子を預かってると、誤魔化してたもんだが。

「外国の妖怪ではないんだがな…一応純粋な日本妖怪だぞ」

「ごめんごめん」

 でも明るいオレンジ色の髪色。

子供ながらな体型の中にもスレンダーで綺麗なスタイル。

外人の子供にも間違えられてもおかしくはない。

「信用してるんだな、娘を」

「信用というか…ま、半分諦めてるけどね。僕に似た要素は世話焼きな性格なところ…かな」

「ふむ」

 夕飯を食べ終えると、テレビの方へ向かう。

「何か面白い番組でもやってるかい?」

「面白い面白くないは関係ないのだ。現代の日本の社会を知るのに大変役に立っておる。てれびというのもな」

「なるほど~。勉強熱心さんだね。來魅ちゃん」

「うむ」

 來魅は100年間のブランクを取り戻すため、テレビやらインターネットやら情報誌なので現代社会を勉強している。

そして、いつの間にかネット三昧になりつつあるのだが。

まだ力が完全に戻らない。

真霊気の直撃を受けたため、霊力が完全に戻らないのだ。

そもそも、琉嬉によって本来の力を封じられている。

やる事が制限されてるため、暇を持て余してるという理由もあったのだ。



 不気味な雰囲気の中3人は正面入り口前に辿り着く。

扉がない。

回りはガラス窓やら割れて破片だらけ。

天井は今にも崩れそうな程朽果てて、骨組みが見えている。

壁もボロボロ。

物がそのまま残っている。

空気が悪いのか。

埃も凄い。

病院だった面影がないほど崩壊している。

「すご~。これもう30年以上前の新聞だよ」

「…これ患者の名前かなあ?書類がそのまま」

 少なくとも30年以上前から存在する建物だとわかった。

どういった事で使われなくなったのかは謎である。

だがこうしていまだに残っている。

「さて、どんどん行くよ~」

 ズカズカ突き進むみゆ。

慣れているのか?

余裕たっぷりで場所をわかっているのように先頭を切って進んでいく。

「…ね~琉嬉ちゃん」

「……何?」

「たしかに異常に霊気はあるけど、感じない?」

「…うん。異質なのがいるね」

二人は気づいていた。

数ある霊気の中でも異質。

特別のヤツがいるのだと。

「正木さんは待機させておいていいの?」

「だいじょぶ、だいじょぶ。あの人も凄いから」

「凄い?つまり霊術者なの?」

「そうそう~。うちの使用人さん達はみなさん、霊術師の心得ある人ばっかりですよ」

「港咲家に仕えるくらいだからそんなもんか…」

 信用が高い。

五大家である、港咲家の仕えてるとなると、それ程の能力が必要なのであろう。

とくに正木という女性使用人はみゆ専門で仕えてるという。

年齢も近く、同じ女性という事で信頼度が高いそうだ。


 それにしても広い。

外観だけでも分かるがかなりの大きさだ。

どういった病院だったのか。

「ここ、地下室あるんだ。さあみなさん心して地下室行きましょう~」

「コイツ…ほんっと緊張感ないな」


 地下に下りる階段。

もちろん階段もボロボロ…。

というより壁やら天井やらから崩れた破片が沢山落ちている。

よくみるとエアガンなどに使う小さい弾が落ちている。

「…何コレ?」

「こういう場所はサバゲーをやってたりするんですよ~。今はやってるのかどうかはわからないけどね~」

「サバゲー?」

 琉嬉が知らないような口で聞く。

「サバイバルゲームだね。琉嬉ちゃん知らないの?」

「ああ、サバイバルゲームか…なるほど。FPSなら出来るんだけどね」

「ゲーム違いじゃないそれ…」

「護はサバゲーってやらないの?」

「え?あたし?やってみたいけどね~。なんでそんな事聞くの?」

「だって襲ってきた時、ミリタリーチックなズボン履いてたじゃん」

「あー、それはね、動きやすいんだよね。頑丈だし。いろいろ物入れれそうだし」

「ミリタリー好き?」

「うん、ちょっとね」

「へぇ…意外だな」

「でもやるんなら白兵戦がいいなかぁ」

「いや、お前に白兵戦で勝てる素人どころか、玄人もそうそういやしないよ」

 よくある話である。

こういった廃墟にはより濃密な戦闘(遊び)ができるのか。

普通の建物や街中のような臨場感が感じられるでのあろう。

琉嬉と護が賑やかに会話していると、大きめの扉がの前に出た。

崩壊はしてない。

よくみるとお札みたいのが貼ってある。

それも両サイドの扉に一枚ずつ。

「これは…?」

「封印の札?」

「琉嬉先輩正解~!さすがおなじ符術使い」

「…お前も符術使うのか」

「いえーす!」

 誰も入れないように一応封印のまじないをしているようだ。

こういう廃墟だと肝試しに来るグループなどがいる。

危険なためになるべく近寄らないようにしてるらしいが。

「効果あるのかなこれ…」

 疑問に思う琉嬉。

「多分あると思いますよー。ウチが貼ったやつですから」

「……ほぅ」

「ねぇ、これ開かないよ~」

 護が開けようとするがビクともしない。

「そりゃ封印されてるからな」

「鍵が掛かってるのかな?」

 他の部屋の扉などは鍵なんぞ掛かってなかった。

むしろ壊れて扉さえない部屋が多いくらいだ。

だがこの目の前の部屋の扉は頑丈にされている。

「鍵は掛かってないですよ」

 みゆが知った風に言う。

琉嬉らはなんで知ってるんだという疑問を浮かべた。

だがなんとなくわかる。

異様な霊気が流れ込んでるのを。

「ここに何かあるの?」

「とびっきりのが…ね」

 さっきまで楽しそうなみゆの表情が一変する。

「…感じる」

「へ?」

 開けた瞬間。

生温い空気が流れ込んでくる。

あきらかにわかる違う空間。

今までは冷たいだけの空気だったのに関わらずだ。

「この部屋って…何?」

「さぁ…なんだろうね」

 通常はよく気になるという手術室や安置所はまわった。

だがここは一体…?

「みんな油断しないでねぇ」

 ふかしぎな空気…というか風。

生温いのが冷たい空気に変わった。

「おい…港咲。これって、レベル高くない?」


 部屋の奥にはうごめく「影」。

いや、「影」というより何かの集合体。

懐中電灯を照らすと、いくつもの人型したものが集まっている。

「霊……というかなんだ?あれ?」

「悪霊化したヤバイ奴かな?」

 よくみると「悪霊」の回りには符が刺さった剣が何本かある。

「あれは…結界か?」

「琉嬉先輩御名答~!でも結界があるといっても攻撃はしてくるからね~」

「なぬっ?!」

 そう言うと案の定触手?みたいのが飛んでくる。

「うわっと!」

 うまく切り払う護。

だが一本や二本ではない。

かなりの数。

それをなんとかかわす3人。

「ちょちょ、待って!なんで攻撃できるの!?」

「いや~みゆの力じゃ完全には抑えられかったのさ~」

 砕けた感じで言うみゆ。

以前にみゆが退治しようとしたようだ。

「だから僕達を呼んだのか…!」

「なんでだよ!あのメイドさんもみたところ結構な術者っぽかったぞ?!」

「万が一の事あったら運転する人いなくなって私帰れなくなるじゃん?」

「なんだそれ?」

 呆れかえる琉嬉。

「でも、一人でやるより多人数で袋叩き!」

「わけわかんねえよ!その理屈!」

 防護壁を張りながら逃げ回る琉嬉。

気づくと触手だけではなく小さい霊気の塊が飛んでいる。

小さい霊体みたいなものでと考えていい。

それに取り憑かれると厄介。

いかに熟練した霊媒師や術士でも実体のあるものではない霊体は対処をしにくい。

その霊気の塊は防護壁をすり抜ける能力があるのもいる。

琉嬉がいくら真霊気に守護されていても、他の人間を守りようがない。

「く…防御術の強化考えないとな…」

 防戦一方。

斬っても斬ってもキリがない触手。

「これじゃあ近づけないよ…!」

 触手だけでもなく霊気の塊の弾幕。

そんな中で肝心のみゆの姿がない。

「あれ?みゆはどこに…」

 気がつくと「悪霊」の目の前に突撃していた。

いつのまに。

だが、実際にみゆは目の前にいる。

「さぁて、みんなが頑張ってるうちにケリつけようね!」

 どこからか取り出した小さい剣のような物。

それを突き刺す!

「たぁりゃああぁぁ!」

 一瞬まばゆい光が解き放たれる。

「やったか…!?」

だが、光の中からは意外な光景があった。


異形な形した生物…のような物。

うごめいていた「影」のようなものはなくなったが、奇妙な物体がその場にいた。

「…なるほど…!正体は霊体をむさぼった妖怪か!」

 琉嬉がすぐさま気づいた。

「ガアアアァァァァ」

 妖怪と呼ばれた物体が咆哮する。

喋ることは出来ないのだろうか?

話かけてくる様子もない。

「むむ…必殺の銭剣アタックでも止めさせないなんてびっくりだね」

 みゆの攻撃が通用しなかった。

相手の、攻撃の雨はやまない。

まだみんな防戦一方。

うかつに飛び込もうがやられてしまう。

「さて…どうしようか…」

「攻撃が激し過ぎて霊力が溜めれないよ…!」

 護が焦りの一言を漏らす。

一撃必殺。

そうしたいのはやまやまだが、そのためにはより強い霊力が必要とする。

そのためにはある程度の霊力を集めなければならないのだろう。

だが現状はそんな暇がない。

「ちまちま攻撃して攻め入るしかないか…?」

 地道に攻めるしかない。

そんな状況に追い込まれている。

触手ならまだしも、霊気の塊も飛び交っている。

「ねえ琉嬉ちゃん。あの時の力を使えば…」

「バカ言うな。あれはそうそう使えるものじゃないって…」

「でもピンチってやつじゃん?今」

 真霊気頼り。

その力の圧倒的なのは護自信は嫌と言うほど、身をもって分かっている。

そこでみゆが一言。

「みーんな力を貸してくれるかな?」

「え?」

「こうなったら超大技見せちゃうかも」

 ズガッ!と音を立てながら触手が地面に突き刺さる。

触手は容赦なく攻撃しかけてくる。

「おわわ、話し込んでる時間なんかないよ!」

 避けたのもつかの間!

「うあっ!」

 壁の中から触手が出てきて護の体をつかんだ。

さすがに壁から来るとは思っていなく、対処しきれなかった。

体を締めつける。

「護!」

「くっ…」

「うわ、なんかエロいね。こう、触手が体にうねついてる感じがなんかこう…おっぱいを強調されて」

「コラー!みゆ!お前変なコト言うんじゃねーっ!」

 みゆの一言に怒る護。

こんな時に変な事言うのもみゆらしい。

「…しかしなんで捕まるかな~…とても僕を倒そうとしたようには思えない」

「うるせ~」

「世話のやける…」

 琉嬉が取り出した符で護を締めつける触手に投げつけた。

貼り付くや否や軽い爆発みたいのを起こす。

触手はその勢いで破砕する。

それと同時に護が脱出。

「けほっ…けほっ…下手したらあたしごとドッカンじゃない?それって…」

「そんなんで死ぬ体じゃないだろ」

「…え~…」


「んじゃ、みなさん頼みます~」

 みゆが何かの呪文みたいのを言葉にする。

「急激に霊気が高まっていく…。アイツやっぱり普通じゃないな」

「性格は普通じゃないけどね」

 迫り来る攻撃をなんなく迎撃する。

「こんな激しいヤツと一人でどうにかしようとしたのか」

「みたいだね…力を抑えるだけしかできなかったみたいね」

 みんなにもわかる程みゆの霊力が高まっている。

かなり強力なのは目にも見えるほど解る。

「…港咲のヤツ…とんでもない霊力扱うんだね…」

 さすがに琉嬉も認めるしかない。

「さぁ~て。一発かますよ~」

「え?」

「ちょっと!その霊圧…!私のオーラソード以上…!」

「え?何?護の剣の名前?」

 琉嬉が護の発言に反応する。

「え?なんか変?」

「変というか…ゲームみたい」

 そんなネーミングセンスに反応する。

無論、そんな場合ではないのだが。

護すら凌ぐ霊力の高まり。 そんな威力が高そうな霊力を狭い部屋で放つというのか。

「お前…ちょっと待て…!!」

 問答無用。

有無言わさずその強力に圧縮された霊気を解き放つ。

「魔封塵ッッ!!」


 赤や黄色が混ざったような、激しい閃光が暗闇の中照らす。

同時に回りに張っておいた結界のための符紙や剣も反応して光だしている。

静けさが一変。

凄まじい爆発音が廃墟周辺に響き渡る。

廃病院の一部が爆発を起こした。


「ひゃっほう~。やったぜーい!」

 倒したことに喜びを爆発させるみゆ。

しかし、みゆ以外の二人はクタクタだった。

「…大丈夫ですか?皆さん…」

 正木さんが心配そうにみんなの怪我を診ている。

「大丈夫です…」

 琉嬉は自分の傷や護を回復の術で治療している。

「琉嬉ちゃんこういうのができるんだ…すごいね」

「元々補助系が得意なんだ」

「へ~」

「へ~じゃねえよ!」

 得意のチョップがみゆに命中した。

見ると建物の一部が完全に消えていた。

妖怪ごと吹き飛ばしたようだ。

一部破損してもまだ原型は保っている病院跡。

意外と崩壊しなかったりする、頑丈だったりするのが廃墟の醍醐味でもある。

「にしても…、やりすぎ。私でもこんな派手にできないよ」

 あまりにも回りをかえりみない一撃で大迷惑。

だがそれ程の大技でないと倒せない敵ではあったかもしれない。

ただ放つタイミングが早すぎたのではある。

あまりにも常識はずれな行動には違いないが。

とはいえ、結果的にはみゆのやる事にみんなが手助けした結果でもある。

「まぁ、倒せたしよしとしますか~」

「なんか納得いかないな…」

「私も活躍できなかった…。まだまだだね」

 それぞれの反省と供に精進をしようと考える面々。

「金持ちのお嬢様が取る行動じゃねえよな…」

 琉嬉は大きくため息をついた。

「いや、このトンデモっ娘は普通のお嬢様じゃないから」

 やけに明るく陽気なみゆ。

とても大金持ちのお嬢様とは思えない性格の明るさをしている。

「さて、みなさん帰りましょう~」

「おー…」

 全員力ない返事をするしかなかった。


 帰り際、ふと琉嬉は考えていた。

(あれが道士の力…。世の中まだまだ凄い力持った人間がいるんだな…)

裏世界にも足を運んでいる者としてもまだまだ何があるかわからない。

まだ出会った事のない能力を持った者がいる。

(…しかしまあ…事前にあんな封じ力あるんなら一人でも倒せたんじゃないか…?)

 そう、既にあの妖怪をあの場所に閉じ込めていた。

ある程度の封印も施していた。

そして予め設置していた霊力増幅装置と術で倒した。少々威力が過ぎたが。

慎重にやればみゆが一人でも仕留めれたのではないか、と。

(……なーんか無理やり参戦された気がするが……はめられた感があるな。

もしかして、僕の力を見るために……?)

 どうも力量を計られたようでモヤモヤする。

そんな事を考えみゆの屋敷へと戻った。



 翌日。

あいにくのどんよりとした曇りの天気だ。

気分がなんとなく晴れないのと同時に天気も晴れない。

早速「おっはよーう!」と、でっかい声が聞こえてくる。

「……みゆか、おはよ」

「うん、おはよう!」

「護といい、港咲といい、朝から元気だね」

「昨日はおかげで楽に仕事出来たからね!」

「……そうね」

 まだなんとなく納得がいかないようだ。

だがタダでは転ばない琉嬉。

みゆに向かってこう切り出した。

「なあ、港咲。いや、下の名前で呼ぼうか。だからお前も先輩呼ばわりしなくていいから下の名前で呼んでくれる?」

「え?いきなりなんですか?」

 急な発言に少し驚く。

「それと、さ。部活を作りたいんだ」

「部活ですか?」

「そう。みゆも部員になってくれれば助かるんだけどな~」

「え~、面白そう!で、なんの部活ですか~?」

 間を置いてこう一言。

「ふかしぎ部」

「……ふかしぎ部?」

 さすがにみゆもきょとんとする。

なんのこっちゃ分からない。

「ええ、と…なんです?それ?」

「僕やみゆみたいな術者が好ましいんだよね。ようするに、ふかしぎな事件を解決するための部活。

この学校や地域がふかしぎな事件がよく起きる。そのために解決するための心霊オカルト事件を解決するのさ」

「な、なるほど~。でもそんな大々的にやっていいのかな…?」

「なーに、表向きは単なるオカルト研究部だから」

「はぁ…」

「そこで、だ」

「?」

 琉嬉は普段見せないようなニヤニヤした笑顔を作りながら話を続ける。

「みゆの財力を活かして、部活のスポンサーになってくれない?」

「ほええーー?」

 さらに驚く。

「じゃ、決まりね。あと一人!」

「ちょちょ、もう私が部員って決定なんですか~?」

「そだね」

「うーん、しゃあないねえ。じゃ、先輩の顔を立てるため、入るコトにします~」

「陽気だねぇ…本当に」

 あっさりとみゆのふかしぎ部入部(まだ仮)が決定した。

あと一人部員が決まれば、部活として申請出来る。

なんだか琉嬉は楽しくて仕方なくなってきた。




 後日、琉嬉は自室にてインターネットを見てた。

來魅は後ろでゲームをやっている。

前回の出来事から二日経っていた。

あれからみゆともかなり親しくなり騒々しい日々になっていた。

そして気になることがあり、

先日行った廃病院について調べていた。

「ふむむ…わりと有名なとこなんだな…。お?」

 何かをみつけた。

とある廃墟など紹介しているサイトを見ていた。

「…これ…。まじか~」

「んー?どうした?琉嬉。何か面白い記事でもみつけたのか?」

「あ、おい」

 來魅がひょこっと琉嬉の背からパソコンディスプレイを覗き込む。

見ていたページは先日行った廃病院の紹介ページ。

早くも廃病院の一部が吹き飛んだ事がサイトに記事がUPされていた。

「早いな更新…」

内容はというと…


『つい昨日なんですが有名な廃病院○○病院行ってきました。

近くを通りかかったので見てみたんですが、なんと!

地下室が行けなくなってました。

外から見て回ったんですがなんと一部が完全に爆発したの如く何もなくなってました。

これは一体どうしたんでしょうか…?

消失したとは思えないですが焼け跡が残ってるようにも思えます。

爆発でもしたんでしょうか…?』


 琉嬉はかなり複雑な思いだった。

「のう、琉嬉。知ってるのかこの場所?」

「うん……ちょっとね。はは……どうすんだこれ…。いや、どうしようもないけどな…」


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