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魔術師の異世界ラプソディー  作者: 木林森
6章 疾風迅雷の復讐者(シャープウィンド・アヴェンジャー)
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予兆

 結局、あの後、魔物の群れと出くわすことはなかった(単体とは出くわしたが)。素材については、あまりにも量が少ないので、向こうがとても少なくなる。よって、結局5分5分にした。

 今は帰りの馬車で、今日の事について話している。

「魔物が多すぎるから調査に来たのに、逆にとてつもなく少なくなっている、か……。」

「少ない分にはいいんでしょうけど……あれは俺でもおかしいって感じますね。」

 俺とニコラスさんは頭を抱えて相談中だ。ちなみに他の6人だが、「頭脳労働は2人に任せる(ます)!」といって、固まって遊んでいる。ニコラスさんがぼそりと「密林に置いてくか……。」とわりと本気な目で呟いていたのが印象的だ。

 ちなみに、何で遊んでいるかというと、『あやとり』だ。俺が昼食の時に、ちょっと暇だったからそこらの細めの蔦(柔らかくて丈夫だった)をとって遊んでいたら目をつけられたのだ。教えてみたところ、大ハマりしてしまい、今に至る。他はいいとして、グリスさんは立派な大人なんだからあそこまで無邪気にはしゃがなくてもいいと思う。しかも何気に一番上手い。見たことないような複雑なものを次々作っては崩していく。

「考えてみれば俺にも若干責任があるのか……。」

 俺は6人の様子を見てため息をついた。

「どうせ俺たちで考えても答えはでない。そういうのはギルドに任せて気楽にすりゃあいいや。」

 ニコラスさんも、終いには思考に詰まって、匙を放り投げて寝転がった。

「それよりも、アカツキ。お前の魔法に俺は興味がある。」

 ニコラスさんはすぐに起き上ると、俺の方を見てそういった。

「あ、グリザベルも気になります。カードを使うなんて聞いたことないです。」

「あたいもだね。同じ魔法使いとして興味があるね。あの、木を操る魔法はまだ開発されてないはずだよ?」

 魔法をよく使う職業だからか、エレオス姉妹も食いついてきた。それと、グリスさんもこっちに聞き耳を立てているのが分かる。こっちの3人はもう知っているからか、気にせずあやとりをしている。

「自分で開発したんですよ。やり方は教える気はありません。それと、カードは皆さんで言うところの杖や魔法効果のある道具と同じようなもんです。」

 俺はそう、あらかじめ決めていた嘘を話した。そうすると、全員納得したようで、残念そうではあるがそのまま話は終わった。『嘘八百ライアー』すらも騙せるとは、俺もなかなか捨てたもんじゃないな。

             __________________

「密林の魔物が異常に少ない……はい、その件は他の方からも寄せられていますね。」

 ギルドの中は、まだ3時ごろなのに人でいっぱいだった。どうやら、密林に行ったはいいが、魔物がいなくて途中で帰ってきたらしい。採集に行った人は逆にラッキーだろう。

 俺たちは今日の調査の結果をギルドの受付嬢に確認する。結果がさっきの返事だ。

「こちらでも調査はしたいところですが……申し訳ございません、今は渓谷の巨大シルフ騒ぎで手一杯の様です。」

 受付嬢は申し訳なさそうに頭を下げる。……その騒ぎの原因が俺たちなだけに、なんというか、罪悪感が沸く。といっても、これからも『龍』を訪ねるのは変わらないが。それとこれとは話が別だ。

「ふう、結局大した収穫なしか。どうする?このまま別れるか?」

 ニコラスさんが受付嬢と話し終え、こちらを振り向く。

「そうですね、このまま素材を売っておしまいにしましょう。」

 俺はそう返事をした。

             __________________

 結果的に白金貨2枚だった。はした金だ。

 俺は、時間が余ったので図書館に行くことにした。他の3人はそれぞれ適当に観光しに行った。

 俺が今日探すのは『魔物の群れの大規模な襲撃』についてだ。理由としては、昨日見た記事が妙に頭に残っているのと、何か嫌な予感がするからだ。根拠はないが、調べておいた方がいい気がするのだ。俺たち魔術師は、基本的に嫌な予感が当たるのだ。第六感という奴だろう。逆にいい予感は当たらないが。

「『魔物襲撃対策』、『魔物の群れによる襲撃の過去』……これらを読むか。」

 俺はそれらを持って机に座り、読んだ。

 魔物の群れによる街、村への襲撃は、滅多にないものの、過去にいくらかあった。それゆえ、それぞれの街や村は大なり小なり、壁や柵などの対策を立てている。

 また、その情報が入った場合はその街や村、それとその周辺のギルドが義勇兵を募り、対抗する。大体の場合は自由参加だが、ある程度の規模まで行くとギルドから一部の冒険者に命令が出て、参加させられる。ただし、この命令は逆らっても罰則はない。命令、という形をとった個人指名のようなものだ。

 義勇兵は、防衛に成功すると、それぞれの活躍に見合った報酬が与えられる。また、これらは大体普通に比べ高い。

 魔物の素材については一旦ギルドがすべて回収し、それぞれのギルド独自の決め方で再分配する。

 魔物の襲撃には、大きく分けて2パターンある。種族の単体構成か複合構成だ。

 大体の場合は単体構成で、その種族、またはその種族と相性がいい種族のみで構成される。

 少ないのは複合構成で、こちらは様々な魔物が織り交じった集団だ。

 魔物は基本的に同じ種族同士以外はまとまらない。よって、複合構成の場合は大体の場合、強力な魔物や魔族が指揮官として纏めている。複合構成の方が被害は総じて大きい。

 というのが『魔物襲撃対策』の内容だ。

 続いて『魔物の群れによる襲撃の過去』だ。この本は魔物の襲撃について、それぞれ細かく記載されている。

 最近で有名なのは、やはりウドウィン王国の騎士団長の活躍で撃退した魔族の大群による侵攻や、ブラース帝国の軍団長によって同じく撃退された魔族の大群の侵攻だろう。

 どちらも、2人がそれぞれ1人で退けたのだ。どちらも下級の魔族がほとんどではあったが、一部中級魔族が混ざっており、とても一人では、いや、一国では撃退できる相手ではなかった。だが、この2人は1人でやってのけたのである。

 それと、謎が残る、という意味で有名なのはパーカシス王国の『ヴァイヴラ』という村に対する襲撃だろう。これは、たった2人の生き残りの少女のうち、1人の証言により、推測されたものだ。

 集団は、ゴブリンやオーク、大牙猪やネイルウルフといったE~Dくらいの魔物の複合構成だった。小さな村の兵士や冒険者でも、対抗できないことはない。しかし、結果としては一方的に村中が火の海になったそうだ。

 これらの魔物の中には火属性どころか魔法を使う種族はいない。変異種の可能性も考えられるが、ある1つの証言によって、それの理由が分かった。

 体長2mほどの人型で肌の色は黒、強靭な尻尾を持ち、何よりも近づいただけで、見ただけで心が折れてしまうようなオーラを放っていたそうだ。小さな村と言えど、複合構成の集団を従え、一方的に、一瞬にして火の海にするなど、並のランクが高い魔物では考えられない。

 そうなると、浮かんでくる可能性は魔族だ。それも、強力な個体だろう。そして、それは新たな疑問にぶつかる。

 周辺の村は襲わず、この村だけ、わざわざ強力な魔族が複合構成の集団を引き連れて襲撃したのか、だ。これについては未だにこれといった結論は出ていない。

「結局結論は出てないのか。」

 俺は期待しながら読み進めていたのに、と思いながら嘆息し、ページをめくる。

 それと、この襲撃の前には、『周りではめっきり魔物を見なくなった』という。これも、関係あるのだろうか。

「なっ!?」

 俺は思わずその表記を見て固まってしまった。嘘だろ……それって、『周りでめっきり魔物を見なくなった』って……

「今の状況そのものじゃねえか……。」

何が何だか分からないぐらい、いいことがありまくりました。

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となっておりました。

これがランキングに載った力かっ……嬉しいっ……!

てな具合です、はい。

ありがとうございました。

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