馬車にて
改稿しました。
また、「アカツキの勉強」も改稿したので、そちらをもう1度読んでいただくとよりお楽しみいただけると思います。
昨日は各々有意義に過ごせてよかった。超容量鞄は俺以外の3人が重宝するし(ストレージが便利すぎる)、ミリアの『シルフィード』は大きな戦力強化となった。あの後、付与されている効果を聞いたが、俺の『闇夜』と同じぐらいだった。
竜の成体は中級の魔族にも匹敵するほどの強さなので、それと同じぐらい賢く、魔力も高い九尾の素材で作った装備と並ぶのだ。
こうして考えてみると、俺たちは個人の能力も凄まじいが装備もとんでもない。
俺は闇夜に布都斯魂剣に焔帝の杖に嵐王の短剣、それと神器にあたるくらい強力な円盤と杯、それと八咫鏡。
レイラはインフロウとラピッド。
ミリアはテンペストとヴォルケイノのシルフィード。
クロロはアヴァランス。
全員が固有名詞を持つ装備を持っていて、クロロ以外は複数。しかも俺なんかは何かもう、数の暴力だ。
さて、そんな俺たちだが、今日はニコラスさんのパーティーと合同で密林の調査に向かう。俺たちは準備を終え、集合場所である東門に行くと、すでにニコラスさんのパーティーは集まっていた。
「遅れてすみません。」
「いや、いいさ。誘ったのは俺たちだからな。」
俺とニコラスさんはそんな会話をし、クロロが予め連れてきた(クロロがじゃんけんで負けたのだ)クリムと馬車に乗り込む。ここで長話は時間の無駄なので、馬車の中で話しをすることにした。ちなみに、一度通ったことがる道ならクリムは覚えられるそうなので、御者は誰もやっていない。
「へえ、いい馬車じゃない。馬も鬼駿馬だなんて。」
グリザベラさんがそういって馬車の中を見回し、その後にそれを引くクリムを見る。
「確かに、あっしが見てきた限りじゃあこんなのは見たことねえな。」
グリルさんも馬車を見てそう感想を漏らす。ちなみに、喋り方はこっちが素で、俺が尋問した時は癖や人柄などがばれないように口調を変えていたらしい。こいつもなかなかの演技派だ。
「お馬さんには認めていただいたんですか?」
ぽやぽやとした口調でグリザベルさんが質問を俺たちにする。
「そうです。僕たちももうクリムに認めて貰っているんですよ。あ、クリムはこの馬の名前です。」
親しくない相手には敬語で話すクロロが返答する。
「……それよりもお前ら、4人が腰につけている鞄とミリアがつけている装備に突っ込まないのか?」
ニコラスが額を抑えて深いため息を吐きながらそういった。
「ああ、これはレイラが昨日、イベントで圧勝した商品ですよ。ミリアのは昨日作って貰いました。」
俺はニコラスさんに説明する。
「平然と超容量鞄と竜装備の紹介をされても困るんだがな……。お前ら、一体何者だ?」
ニコラスさんは先ほどと同じように、ため息を吐くようにそういった。ニコラスさんの言葉に、他の3人も驚いたのか、俺たちの事を目を丸くして見ている。
「「「「ただのしがない冒険者です(よ)。」」」」
俺たち4人は声を揃えてそういった。ニコラスさんは大分げんなりしている。どの口が言うか、と自分でも思うが、それはそれだ。
「あ、それよりも気になっていたことがあるんですが。」
俺はスルーすることにして、そう質問を切り出す。
「先日尾行されて、尋問した際にグリルさんはAランクだとおっしゃっていましたが、一昨日のSランクの精鋭の調査団にいた理由は何ですか?」
俺はちょっと気になったことを質問した。
「ああ、あっしは実際はSランクですぜ。そん時は申し訳ございやせんが、嘘をついておりまして。」
「すげえ……。」
グリルさんの返答に、俺は思わず素に戻って声が出た。
「一応、俺たち4人はギルドから発行される『称号持ち』なんだよ。」
ニコラスさんはさっきの表情はどこへやら、不敵に笑ってギルドカードを取り出す。
「へぇ、称号持ちねぇ。」
ミリアが興味を示した。レイラとクロロも興味を示しているが、俺にはチンプンカンプンだ。
「その称号持ちってのは何ですか?」
俺はそうニコラスさんに問いかける。
「大きな偉業を成し遂げたり、ある程度強かったりすると貰えんだよ。そいつの特徴や戦闘スタイルに見合ったもんがな。ちなみに俺はこう見えて『流水』と呼ばれている。ちなみに、俺たちは一応レベルランキングのトップ10には全員入ってるからな。」
「あっしは『嘘八百』ですぜ。」
「あたいは『気象の操り手』だよ。」
「グリザベルは『白光の癒し手』です。」
4人が口々にそういった。おおう、またタイムリーなタイミングで心をくすぐるものが。
称号はいわゆる俺たち魔術師での『二つ名』だな。あっちではカタカナのルビはふるようなのは無かったが、ニコラスさんたちの称号を聞くと、どうやら『言語理解』翻訳では漢字や言葉にルビらしい。
それと、この4人はトップ10に入っていたようだ。2位までしか見てないから知らなかったな。
「へえ、凄いんですね……。」
俺は色々な意味を込めてそう漏らした。
「さて、俺らの情報を話したんだ。これからは作業を共にする仲間なわけだし、お前らのことも教えてくれ。」
ニコラスさんはそういって俺の顔を見て、ニヤリと笑う。なるほど、そうやって情報を引き出したかったわけか。向こうにも断る権利があるのに喋ったのだから、こちらが喋る必要はないんだが……まぁ、いいか。目線で3人に確認すると、3人も別にかまわないそうだ。
「俺たちも全員Sランクですよ。」
俺がそういってギルドカードを取り出すと、3人も取り出して見せる。この段階で俺は嘘をついているが、ギルド認可の嘘だ、問題ないはず。
「……全員『魔族殺し』かよ。」
ニコラスさんが、今度は大げさではないが、それでも驚いていた。
「ま、『魔族殺し』ですかぁ……凄いですねぇ、やっぱり、4人で1体を倒したんですか?」
グリザベルさんが目をキラキラさせて問いかけてくる。
「うーん、雑魚は単騎で2、3匹ずつね。あと、魔族の中でも強い方だったやつはアカツキを抜いた3人で倒したわ。」
ミリアは平然と説明する。
「は、はぁ!あんた、何言ってんのよ!?魔族は平均的な能力の王宮騎士が10人で囲んでやっと弱い方を1体倒せるぐらいよ!」
「あっしたちだって弱め程度なら2人で相手出来やすが、それでも大分苦戦しますぜ?」
グリザベラさんとグリルさんが反論する。
「といっても、事実は事実ですし……アカツキさんなんか1人で80匹ぐらい葬りましたよ?それも実質戦力にならない護衛対象を連れて、無傷で。」
クロロが困ったようにそういった。
「……お前ら、まさかあの噂のドラミの『救世主』か?」
ニコラスさんが厳しい顔をして、質問してきた。
「あ、はい。箝口令は出されているんですが、やはり人の口に戸は立てられませんね。」
レイラが笑顔でニコラスさんに返事をした。
「……とんでもないパーティーが仲間になったね……。」
「グリザベル、頭がついていきません……。」
「あっしにゃあ関係ねぇ、うん。このお方たちが強い、うん、それが重要だ。」
「グリルに賛成だ。強い仲間が増えたことを素直に喜ぼう。」
女性2人は頭を抱え、男性2人はそう言っときながら浮かない顔をしていた。
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